地下鉄の複雑な路線図の最適解を見つけるかのように、プロセス全体を可視化
Celonis、プロセスナレッジや生成AI活用につなげる「Process Intelligence Graph」を発表
2023年12月12日 07時00分更新
プロセスマイニングツールを展開するCelonisは、2023年12月7日、同社が次世代プロセスインテリジェンスと位置づける「Process Intelligence(PI) Graph」を、日本市場で発表した。
PI Graphは、11月14日から15日にドイツで開催された同社の年次ユーザーコンファレンス「Celosphere 2023」にて披露された。
来日したCelonisの共同創業者兼共同CEOであるバスティアン・ノミナヘル氏は、複雑な東京の地下鉄路線図を例に挙げ、「ひとつの路線の経路しか見られなかったのが、これまでのプロセスマイニング。PI Graphは、すべての路線がどのように関わり合っているのかを把握できるようなもの」とし、PI Graphで次世代のプロセスマイニングを創出すると述べた。
また、Celonis日本法人の代表取締役社長である村瀬将思氏は、「PI Graphは、プロセスデータ、プロセスナレッジ、エコシステムの3つを組み合わせた、プロセスマイニングのロゼッタストーン」と位置づける。
プロセスをエンドトゥエンドで可視化、プロセスナレッジや生成AI活用につなげる「Process Intelligence Graph」
PI Graphを構成する要素のひとつは、「プロセスデータ」である。
PI Graphは、各部門にあるデータを共通化。案件の受注から入金まで、あるいは購買からサプライチェーン全体まで、幅広いレンジのプロセスを、ひとつのモデルとして描写し、プロセス全体を分析することができる。これは、2022年に同社が発表した「Object Centric Process Mining」および「Object Centric Data Model」により実現する。
「従来のプロセスマイニングは、購買や受注などの業務において、プロセスを特定する発注番号や請求番号といったケースIDを用いて、データを抽出、解析し、部門ごとでプロセスを可視化した。Object Centric Process Miningにより、ケースIDキーを使わずに、プロセスをオブジェクトとして捉え、複数プロセスをまたいだ多面的で、横断的な分析を可能にする」と村瀬氏。これがPI Graphのベースとなる。
また、Object Centric Data Modelとして、他ベンダーとのシステム連携基盤を通じて収集した、SAPの生産データやSalesforceの商談データ、外部企業のESG評価スコアといったデータを、適切な形で統合し、信頼できる情報ソースとして構築できる。これはPI Graphにおけるデジタルツインとして定義される。
もうひとつの構成要素である「プロセスナレッジ」では、Celonisの蓄積したユースケースやナレッジを活用。データを取り込んだ後に、価値を創出するアプリケーションやテンプレートを活用できる仕組みを提供する。
集約されたプロセスナレッジの展開するのが「Process Knowledge Layer」だ。必要となるデータをObject Centric Data Modelから割り出して、ユーザーに提供する役割を担う。
Process Knowledge Layerは、プロセスナレッジを集約化したデータソースであり、構造化された共通言語により、人やAIが解釈できる形にまとめたナレッジ領域になる。3000社以上のユーザー企業とのプロジェクトで得られたナレッジを基に、プロセスの分析においてどんなデータが重要になるかを抽出する。日本のエコシステムの業界知見を集めることで、日本の商習慣にあわせたナレッジを活用でき、日本に最適化された分析サービスや自動化を実現できる。
これらの要素によって、PI Graphでは、様々なデータソースからデータを集約し、複数のプロセスをあらゆる角度から分析できる標準化したデータ構造によって、データを蓄積。プロセスナレッジやAIにより、効率的なプロセスの分析や、プロセスの改善活動につなげることができる。
村瀬氏は、「組織は縦だが、プロセスは横に動く。これをエンドトゥエンドで可視化することが求められているが、それを実現するのがPI Graph。他のプラットフォームをリプレースするものではなく、新たなレイヤーとして追加するのも特徴だ。信頼性やパフォーマンス、利便性、セキュリティを兼ね備えたクラウドプラットフォームとして提供する」と語った。
また、生成AIを活用した自然言語によって、インテリジェンス機能を進化させることもできる。ここでは、OpenAIなどの主要な大規模言語モデル(LLM)の利用に留まらず、日本独自のLLMとの連携も進める考えを示した。
調査によると、世界の企業リーダーの4分の3が、AIを適切に運用できないという懸念を抱いているという。村瀬氏は、「その理由のひとつが、営業部門、物流部門、財務部門といった各部門がそれぞれに個別システムを持っている点にある」と指摘。「それぞれで専門用語を使ってビジネスを行い、異なる目的で業務を行い、データを活用しているため、部門をまたいで生成AIを使おうとしても、正しい答えが返ってこない。PI Graphにより、部門やシステムを超えた共通言語によるデータ利用が可能になり、生成AIの可能性も開放される」と述べた。
PI Graphにおいて、目的別に利用可能なツールの提供も発表した。
「Process Explorer」は、特定の状況下で、プロセスがどのように機能するのかを探索するものであり、ビュー内での、マルチオブジェクトプロセス探索と分析を可能にする。分析したい対象に関連したオブジェクトを絞り込み、必要な情報をに基づくインタラクティブな分析が実行できる。
「Process Adherence Manager」は、以前はProcess Sphereの名称で発表していたもので、モデリングに特化した機能として一般提供を開始した。プロセスマイニングやモデリング、コンフォーマンス(適合性)を統合したエクスペリエンスを提供。あるべきプロセスを定義し、逸脱した機能や機能していない箇所を把握し、分析を深掘りできる。
さらに、「Process Copilot」は、直感的なチャットインターフェースを通じて、ユーザーをPI Graphに結びつけ、企業全体における価値実現機会を特定し、プロセスの簡素化を加速するという。