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業界人の《ことば》から 第519回

Celonisが取り組む、「オブジェクトセントリック プロセスマイニング」とは?

2023年01月02日 09時00分更新

文● 大河原克行 編集●ASCII

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今回のことば

「Celonis Process Sphereは、オブジェクトセントリックプロセスマイニングという学術論を、テクノロジーとして実現することに成功したものであり、プロセスマイニングが一歩進み、新たな世界に入った」

(Celonisの村瀬将思社長)

プロセスマイニング、事実から業務プロセスを可視化し、問題解決

 プロセスマイニングが徐々に注目を集めてきた。

 この分野でリーダー的存在であるCelonisは、プロセスマイニングの定義を、あらゆるところに点在するイベントログを業務システムから抽出し、業務プロセスを可視化することで、仮説ではなく、事実に基づいて、問題を診断できるようにするものだと説明する。

 そして、Celonisでは、導き出した課題を解決し、業務オペレーションの最適化を実現するためのエグゼキューションマネジメント(業務実行管理)システムを、2020年に追加。自動的に非効率性を排除し、業務を自動実行できるようにしている。

 これによって、複雑化するシステムのどこに課題が発生し、その解決にどんな解決が必要なのかを導き出し、改善につなげることができるとする。

 そのCelonisが、新たに発表したのが「Celonis Process Sphere」である。同社ではこれを、プロセスマイニングを全面的に刷新した業界初の「プロセス MRI」 と位置づけている。

 ここでいうMRIとは、特別なIT用語ではなく、医療分野で使用されているMagnetic Resonance Imaging(磁気共鳴画像)そのもののことである。強い磁石と電波を使い、身体の断面を撮像する検査装置だ。

 Celonisが、この言葉を用いるのには意味がある。

 同社では、これまでのプロセスマイニングをレントゲンに例えてきた経緯がある。

 それは、プロセスそのものをレントゲン撮影のように描写し、非効率性や課題といった悪い箇所を発見。それに基づいて最適な処方箋を提供するという比喩を用いていたからだ。

 新たに発表した「Celonis Process Sphere」は、レントゲンよりもより細かい撮影が可能で、レントゲンでは見えない部分まで見えるMRIへと進化したという意味がある。

 Celonisの村瀬将思社長は、「これまでは2次元で見ていたものを、多次元で見るように、新たな観点を追加したのが、Celonis Process Sphereの特徴である。複数のアプリケーションが利用され、データとプロセスが複雑化し、それぞれがサイロ化している環境では、これまでのプロセスマイニングでは限界があった。とくに、ビジネスプロセスが交わる領域で、改善箇所を発見することが困難だった」と指摘する。

 その上で、「新たなプロセスマイニングは、プロセスを個別で見るのではなく、オブジェクトの概念で表現されるようになる。オブジェクトセントリックな描写により、プロセスと部門間の交差領域に関して、生きた洞察を提供することになる」と説明する。

 オブジェクトとは、販売注文や購入注文など、処理される個々の項目のことを指す。オブジェクトにつながる承認や変更、更新などのプロセスを構成するイベントを分析することで、複雑なプロセスがどう実行され、どのような依存関係にあるのかを、全体像として捉えることができるというわけだ。

 これまでにもプロセスを可視化するために、線路のようなマップを活用していたが、これをビジネス全体へと拡大し、複雑なプロセスを「地下鉄マップ」のように作成する新たな可視化エンジンを搭載。根本的な原因を直接可視化することができる。各オブジェクトのフローを色分けして区別し、ある部門の業務上の問題が、別の部門に根本原因があり、そこで発生している非効率な部分を簡単に発見できるレイアウトになっている。

 そして、これは、視点を変えるのではなく、視点を加えたというのが、Celonis Process Sphereのポイントであると強調する。

 「単一プロセスのマイニングから、ビジネス全体のマイニングへと広げることができる。現代のビジネスに存在する複雑な関係や相互依存性を、すべて確実に把握し、プロセスがどのように関連しているのかといった全体像を提供できるようになる」という。

 たとえば、Celonis Process Sphereによって、エンド・トゥ・エンドのサプライチェーンを結びつけ、受注、購買依頼、請求書、出荷などのオブジェクト間の複雑な関係性を把握。これを可視化することにより、サプライヤーへの支払いが遅延している課題を特定するといったこれまでの活用に留まらず、そのような非効率なアクションがビジネスの他の部分にどう波及しているのか、顧客にどのような影響を与えているのかといったことも確認できる。

 村瀬社長は、「これは、プロセスマイニングの再発明(Process Mining Reinvented)である。これによって、Celonisはビジネスパフォーマンスプラットフォームを提供する会社に進化した」と宣言する。

Celonis Process Sphere

 Celonisは、プロセスマイニングの「ゴッドファーザー」と呼ばれるウィル・ファン・デル・アールスト博士のアイデアをもとに、ドイツのミュンヘン工科大学の学生たちが立ち上げた企業だ。アールスト博士は、現在も、Celonisのチーフサイエンティストを務めている。

 アールスト博士は、「Celonis Process Sphereは、この分野において、過去10年で最大の変革であり、プロセスマイニングと企業活動に欠かせないものとなる」と発言。「現実の世界のプロセスでは、複数のオブジェクトが関わっている。プロセスマイニングは、プロセスを個別で見るのではなく、オブジェクトの概念で表現されるようになる」と語っている。

 これを受けて、Celonisの村瀬社長は、「Celonis Process Sphereは、オブジェクトセントリックプロセスマイニングという学術論を、テクノロジーとして実現することに成功したものであり、プロセスマイニングが一歩進み、新たな世界に入った」と発言。「複数部門に渡るプロセスは、プロセス改善の金脈である。高い視座からの全体最適を行うことで、日本の企業は、村社会からの脱却が可能になる」と語る。

 Celonisは、この1年間で日本法人の社員数を3倍に拡大。新規売上は前年比5倍、ARR(Annual Recurring Revenue)は3倍、顧客数は2倍、Celonis認定技術者は1000人を突破するという高い成長を遂げた。

 また、ユーザー向けの活動を強化。エグゼクティブを対象としたCxO Clubをスタートしたほか、ユーザー会であるCelonis User Group(CeloUG=セログ)を発足。現在、5社だけに参加を限定しているCelonis Champion Clubも開設した。「これらのコミュニティ活動は、今後、さらに強化する」(村瀬社長)という。

 さらに、日本では戦略的パートナーシップを相次いで発表。アクセンチュアではCelonis のコンサルタントを1万人育成する計画を打ち出し、NTTデータはCelonis によって500億円のビジネスを創出すると発表した。

 村瀬社長は、「Celonisを活用した持続可能な日本社会の形成に取り組む体制が整ってきた」と自信をみせる。

 日本のおける事業拡大の戦略的製品が、新たに投入したCelonis Process Sphereとなる。これまでに結びつけられていなかったものを結びつけて、ビジネスオブジェクト同士のリアルな関係性の理解を可能にするソリューションとして、日本の企業からも、すでに注目が集まっている。プロセスマイニングの進化が、日本の企業にどう貢献するのか。これからが楽しみだ。

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