北海道大学の研究チームは、高転移性がん組織において酸化LDL(Low Density Lipoprotein:低密度リポタンパク質)が他臓器への転移を促進させる仕組みを解明した。酸化LDLは動脈硬化などの循環器疾患のリスク因子として知られているが、がん細胞の転移との関連は不明だった。
北海道大学の研究チームは、高転移性がん組織において酸化LDL(Low Density Lipoprotein:低密度リポタンパク質)が他臓器への転移を促進させる仕組みを解明した。酸化LDLは動脈硬化などの循環器疾患のリスク因子として知られているが、がん細胞の転移との関連は不明だった。 研究チームは、転移しやすいがん細胞と転移しにくいがん細胞をそれぞれ移植した2種類のモデルマウスを作製。酸化LDLの沈着や酸化LDLの受容体分子、好中球などの酸化LDL形成に関わる免疫細胞の局在や分布量を調べた。その結果、転移しやすいがん細胞を移植したマウスでは、酸化LDLと、その受容体であるLOX-1(Lectin-like Oxidized LDL Receptor-1:レクチン様酸化LDL受容体)の発現量が高かった。 それに伴い、腫瘍組織中では好中球が多く確認でき、血管内皮細胞でLOX-1が過剰に発現すると、好中球の遊走を促進してしまうことも分かった。LOX-1の発現を抑制したモデルマウスでは、がんの転移は確認できなかったという。 研究成果は5月24日、「インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー(International Journal of Cancer)」誌にオンライン掲載された。今後、LOX-1阻害が新たながん治療法になる可能性がある。(笹田)