失われがちがゆえに努めて残したアナログ的情緒性
設計思想と照らし合わせ、妥当と判断すれば付属品といえど、とことん完成度を追求する。このこだわりがあったからこそ、権威あるデザイン賞も獲得できたのだろう。NESTOUTシリーズにはもうひとつ、決して譲らないと決めていたこだわりがあるという。それは道具としての楽しみを失わないことだ。
「アナログからデジタルに転換した途端、デザインが無味乾燥になったり、操作性が0/1に単純化されたりでは、いかにもおもしろくありません。そんな変化は、つまらない変化でしかない。とくにキャンプやアウトドアは、趣味性の強い分野。道具を「持つ喜び」や「使う楽しさ」を失ってはならない分野です。だから本シリーズには、アナログの良さをきっちり残しておこうと当初より決めていました」
アナログならではの情緒性を最も顕著に残してるのが、拡張ギアのLEDランタンに装備されているロータリースイッチだ。形状もつまみをひねる操作性も、まるでガスランタンのそれである。
「つまみが折り畳める仕様も、ガスランタンをイメージしました。たぶんパチパチでオンオフを切り替えるボタンスイッチの方が、操作するのも楽だし、防水性を高めるのも容易でしょう。そうしてしまうことは至極簡単。でも、それでは楽しくありません」
初見で心惹かれる道具は所有欲をくすぐるし、所有したらしたで誰かに自慢したくなる。「この道具は映える!」とSNSにアップする人も少なくないだろう。使い勝手にしても、こうした道具は操作するのにひと手間あった方がやはり愛着が湧くものだ。
わざわざ残したアナログ的情緒をデザイン上の装飾と捉えるのは間違いだろう。むしろ、アウトドアギアに必要な機能のひとつといえるのではないか。いずれにしろ、こうしたこだわりがアウトドアやキャンプを楽しくしてくれることは疑いない。