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いつでもどこでも映像制作を可能に、樋口社長「メディアエンタメ事業における収益の柱に育てる」

パナソニックコネクト、クラウド版「KAIROS」映像制作プラットフォーム発表

2022年06月14日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 「KAIROS(ケイロス)クラウドサービスは『この一瞬が、つながる。』をコンセプトに、映像制作の現場をイノベートする。伝えたい人、つくる人、参加する人をコネクトし、メディアエンターテインメント業界が抱える課題を解決していく」(パナソニック コネクト 執行役員 常務 メディアエンターテインメント事業部長の奥村康彦氏)

 パナソニック コネクトが、ライブ映像制作プラットフォーム「KAIROS」をクラウドサービス化し、2022年6月27日から提供を開始すると発表した。さらに2022年秋からは2つの共創パートナー(テクノロジーパートナー、プロモーションパートナー)を募集し、KAIROSの新規市場開拓や新規ビジネスの創出につなげる。

 記者発表会でパナソニック コネクト 代表取締役 執行役員 社長・CEOの樋口泰行氏は、「パナソニック コネクトのコア事業のひとつであるメディアエンターテインメントにおいて、KAIROSを収益の柱に育てていく」と発言。2026年度に350社、30億円の販売目標を掲げている。

パナソニック コネクトが提供開始する「KAIROSクラウドサービス」の概要

KAIROSクラウドサービスの特徴と、「KAIROS Connect Center」(大阪)のようす

「撮る/創る/映す」のワークフローを変革、約30%の業務効率化

 KAIROSは、パナソニック独自の映像処理技術を搭載したIT/IPプラットフォーム。2020年9月からオンプレミス版を提供しており、これまでにジャパネットブロードキャスティングや、サイバーエージェントの「Chateau Ameba」スタジオなど、国内外で40社以上、50システムが導入されている。東京オリンピック/パラリンピックの実証実験で活用された実績もある。

 一方、今回新たに提供するKAIROS クラウドサービスは、クラウド/サブスクリプション型の映像制作ソリューションと位置づけられる。自由度の高い映像制作を可能にし、さまざまなアプリケーションと連携することで、撮る/創る/映すといったワークフロー全体をシームレスにつなぎ、いつでもどこでも手軽に映像制作や配信が行えるようになる。

 パナソニック コネクト 現場ソリューションカンパニー 映像メディアソリューション事業本部長の梶井孝洋氏は、「シームレスなワークフローで、映像制作を時間と場所の制約から解放し、自由度の高い映像制作をクラウド上で手軽に実現。さらにサブスクリプションサービスとしたことで、継続的に進化/拡充するサービスを、いつでも自由に利用できる。初期投資を抑え、いつでも、どこでも、手軽によりよい映像制作を実現できる環境を提供できる」と自信を見せる。

 AWS上に構築されたKAIROSクラウドプラットフォームでは、遠隔地のカメラやスマートフォンなどからのストリーミング伝送、リモートライブスイッチングなどを可能にして「約30%の業務効率化」(同社)を実現するという。カメラ映像を同プラットフォームに送り、クラウド上で映像のライブスイッチングや音声のミキシングなどを実施、直接デバイスに表示させたり、インターネット配信プラットフォーム経由でスマートフォンなどにライブ配信したりすることができる。

撮る、創る、映すをリモート/分散化して従来のワークフローを変革

 従来の映像制作現場では、撮影現場にさまざまな映像機材を持ち込むことが多かったが、KAIROSクラウドサービスでは機材の運搬、準備の時間、人の移動といった負担が軽減され、撮影と制作、視聴を異なる場所で行うリモートプロダクションも実現する。

 たとえばスイッチングや映像の合成、配信後の映像確認などは、撮影現場と離れた場所で、タブレットやノートPCを使って行える。加えて、iPhone用アプリの「Mobile Camera」をインストールすると、撮影した映像データがKAIROSクラウドプラットフォームへ自動的にアップロードされ、映像素材として蓄積されるほか、「Kairos Creator」アプリを使ってリアルタイムのスイッチングも可能になる。蓄積した素材は、ノンリニア編集機や市販のソフトウェアで編集する素材ファイルとしても活用できるため、ライブスイッチングとファイル送出を活用した本格的な映像制作が行える。複数の配信先を設定することができ、複数の表示デバイスに最適化した画角での同時配信も可能だ。

 「こうした撮影/制作/配信のすべての作業は、パソコンとネットワーク環境があるだけで実現できる」(パナソニック コネクト 現場ソリューションカンパニー 映像メディアソリューション事業本部長の梶井孝洋氏)

 KAIROSクラウドサービスの利用価格(税抜)は、初期登録費が3万円、月額費用は20万円から。

クラウドを通じてライブストリーミングと素材ファイルをリモートに伝送、配信

多様な現場ニーズに応え、メディアエンターテインメント事業の柱に育てる

 なおパナソニック コネクトでは、オンプレミス版KAIROSも引き続き提供していく。オンプレミス版は低遅延、高画質、高度な演出が求められる放送局やスタジアムなど、リアルタイム性を追求する現場での映像制作に活用。一方で、KAIROSクラウドサービスは高度な演出を実現しながらも、いつでも、どこでも、簡単に映像制作ができることを求める現場での活用を中心に考えているという。

 「コロナ禍でのオンライン、リモートニーズがあり、映像視聴スタイルの多様化が進み、ライブ配信を含む映像制作需要が急拡大している。限られたリソースを効率的に配分しながら、ニーズに迅速に柔軟に対応する必要がある。コンテンツオーナーは、自ら映像による情報発信をしたいと考えているが、その多くが機材や技術スキルが充分ではない。また放送局や製作会社には、人員不足であったり、スキル/ノウハウが一部の熟練者に集中していたりといった課題がある。KAIROSクラウドサービスは、リモートによる分散型ワークフローを可能にすることで、人員や機材などのリソースを最小化しつつ、配信の多様化や演出の高度化、効率化を実現していく」(奥村氏)

 パナソニック コネクトでは、KAIROSクラウドサービスを活用した映像制作をサポートするため、東京と大阪に「KAIROS Connect Center」を開設している。リモートでの映像制作に必要な機材やネットワーク環境を完備し、実況を行える「コメンタリールーム」も併設する。

 「大掛かりなコントロールルームを設置したくない場合にも、簡単にリモートプロダクションを実現できる施設。パートナー企業とともに共創活動や検証を進め、サービスの進化や機能拡張につなげ、継続して、現場ニーズに合わせた柔軟な機能群を開発することで、現場に最適なソリューションへの進化、拡充を目指す」(奥村氏)

 さらに、映像制作フローに必要な技術の連携により、サービスの進化や拡充に向けて共創する企業を対象にしたテクノロジーパートナー、映像制作現場の活性化に向けた情報発信などのプロモーション活動において連携する企業を対象にしたプロモーションパートナーを募集する。

 冒頭で触れたとおり、同社 社長・CEOの樋口氏は、KAIROSを同社メディアエンターテインメント事業の柱として育てていく考えを示している。

 「パナソニックグループは、長年に渡ってメディアエンターテインメント事業に取り組み、ライブスポーツや放送局、イベントの空間演出などに携わってきた。現場を支える苦労についても理解している。カメラやプロジェクターなどの専鋭化したハードウェアに加えて、従来の映像スイッチャーの概念を覆すライブ映像制作プラットフォームのKAIROSを組み合わせることで、リモートプロダクションに踏み出すきっかけになったり、小さなスタジオでもキー局のスタジオと同じことできるようになったりといったことが可能になる」(樋口氏)

 さらに樋口氏は、パートナーとの共創によってKAIROSに新たなアプリケーションを追加し、「映像制作の可能性を広げることができる」と述べた。将来的にはKAIROSクラウドサービスを通じて、AIがカメラを自動制御し、映像制作を完全リモートで行えるようにもなるだろうとしている。

パートナーとの共創を通じてKAIROSクラウドサービスの進化/拡充も図っていく方針

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