コンチネンタルの次世代LiDARが可能性を感じさせた
そんな中で、個人的にこれは! と思った「自動運転技術」の展示は、コンチネンタルにあった。新世代のライダー(LiDAR)だ。ブースの角の柱の上にライダーを設置し、通路を通る人を検知するというもの。2020年にコンチネタルが出資した、カリフォルニアのAEye社と共同開発している。ポイントは「300m先までセンシングが可能」「2024年に量産を計画」という部分だ。
実は現在、量産されているLiDARのほとんどが300m先をセンシングする能力がない。しかし、100km/hで走行するクルマは、1秒間に約27.8mを進む。つまり、10秒間の余裕を得るには、300m先の道路状況を詳細に把握する必要がある。そしてタイヤが落ちていたり、路面に穴が開いていたりするのを把握するには、カメラとレーダーだけでは足りない。LiDARにも300m先を見る力が必要なのだ。逆に言うと、この300m先を見ることのできるLiDARが登場して初めて、レベル3の自動運転が実現化すると言ってもいいだろう。量産は2年先ということは、そこまでレベル3の自動運転の登場を待つ必要があるということだ。
また、自動運転関連としては、トヨタ車体の試みも発表されていた。トヨタ車体が発売する小型EV「コムス」を使った自動運転の実証実験を、ここ1年ほど実施しているという。「コムス」に取り付けたLiDARだけでなく、インフラ側のカメラと組み合わせることで、簡便に自動運転システムを構築するという。走行環境は、自社工場内という限られた場所となるが、今後の商品化も検討中だという。工場内の資材運搬などに利用できそうな技術だ。
それ以外で、個人的に気になったのが市光工業による「e-Grille」という技術だ。これはクルマのグリル部分をライティングのためのスペースに使おうという提案だ。クルマの電動化が進むほどに、エンジン冷却のためのフロントのグリルの必要性が低下する。そこで空いたスペース(グリル)に明かりの機能だけでなく、コミュニケーションの機能も持たせるというアイデアだ。自動運転中に、ドライバーに代わって周囲に意思表示することもできるし、EVの充電状況を知らせることもできる。電動車や自動運転技術が普及するほど、このアイデアを採用する車両が増えることだろう。
自動運転技術は残念ながら足踏み状態だが、電動化の進化は着実で力強い。今後2~3年は、新型EVの登場の話題が多くなることを予感させる展示会であった。
筆者紹介:鈴木ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。
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