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夢の技術! 自動運転の世界 第38回

自動運転の基礎 その38

「人とくるまのテクノロジー展 2022横浜」で感じた自動運転技術の今

2022年06月12日 12時00分更新

文● 鈴木ケンイチ 編集●ASCII

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コンチネンタルの次世代LiDARが可能性を感じさせた

 そんな中で、個人的にこれは! と思った「自動運転技術」の展示は、コンチネンタルにあった。新世代のライダー(LiDAR)だ。ブースの角の柱の上にライダーを設置し、通路を通る人を検知するというもの。2020年にコンチネタルが出資した、カリフォルニアのAEye社と共同開発している。ポイントは「300m先までセンシングが可能」「2024年に量産を計画」という部分だ。

コンチネンタルのブースに展示されていた、次世代LiDAR。2024年からの量産を予定

会場に設置した次世代LiDARでセンシングした会場通路の様子。300m先までを検知可能

 実は現在、量産されているLiDARのほとんどが300m先をセンシングする能力がない。しかし、100km/hで走行するクルマは、1秒間に約27.8mを進む。つまり、10秒間の余裕を得るには、300m先の道路状況を詳細に把握する必要がある。そしてタイヤが落ちていたり、路面に穴が開いていたりするのを把握するには、カメラとレーダーだけでは足りない。LiDARにも300m先を見る力が必要なのだ。逆に言うと、この300m先を見ることのできるLiDARが登場して初めて、レベル3の自動運転が実現化すると言ってもいいだろう。量産は2年先ということは、そこまでレベル3の自動運転の登場を待つ必要があるということだ。

コンチネンタルのブースの角の高い場所に設置された次世代LiDAR。四角い部分で赤外線を発光させ、丸い部分で受光する

コンチネンタルのブースに展示さえていた、ディスプレイ埋め込み式のドライバーモニタリングシステム

 また、自動運転関連としては、トヨタ車体の試みも発表されていた。トヨタ車体が発売する小型EV「コムス」を使った自動運転の実証実験を、ここ1年ほど実施しているという。「コムス」に取り付けたLiDARだけでなく、インフラ側のカメラと組み合わせることで、簡便に自動運転システムを構築するという。走行環境は、自社工場内という限られた場所となるが、今後の商品化も検討中だという。工場内の資材運搬などに利用できそうな技術だ。

トヨタ車体による小型EV「コムス」を使った自動運転のデモカー。屋根にLiDARが設置されている

日立とホンダの複数の子会社によって設立された新会社「日立Astemo」は小型EVのコンセプトを展示

 それ以外で、個人的に気になったのが市光工業による「e-Grille」という技術だ。これはクルマのグリル部分をライティングのためのスペースに使おうという提案だ。クルマの電動化が進むほどに、エンジン冷却のためのフロントのグリルの必要性が低下する。そこで空いたスペース(グリル)に明かりの機能だけでなく、コミュニケーションの機能も持たせるというアイデアだ。自動運転中に、ドライバーに代わって周囲に意思表示することもできるし、EVの充電状況を知らせることもできる。電動車や自動運転技術が普及するほど、このアイデアを採用する車両が増えることだろう。

市光工業による「e-Grille」。グリル部に発光パネルを設置し、車外とのコミュニケーションに利用するというアイデアだ

 自動運転技術は残念ながら足踏み状態だが、電動化の進化は着実で力強い。今後2~3年は、新型EVの登場の話題が多くなることを予感させる展示会であった。

日立Astemoは、インホイールモーターのコンセプトを展示

ジェイテクトのブースでは、リンクレスのステア・バイ・ワイヤーが展示されていた。2022~2025年に量産を予定

HKSのブースでは、エンジン車の排気ガスの力で発電するコンセプトが展示されていた

筆者紹介:鈴木ケンイチ

 

 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。


 

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