5月12日から発売されたトヨタ「bZ4X」とスバル「ソルテラ」の公道試乗会へ参加しました。トヨタとスバルが共同開発した兄弟EVは、どんなクルマであったのか、また、2車の違いなどをレポートします。
電気系はトヨタ、4WDはスバル
互いの得意なところを持ち寄ったEV
5月に発売開始となったトヨタ「bZ4X(ビーズィーフォーエックス)」とスバル「ソルテラ(SOLTERRA)」は、トヨタとスバルが共同開発した新型EVであり、基本を同じくする兄弟車です。ちなみにトヨタはEVの「bZシリーズ」を2025年までに7車種を投入すると予告していますから、あと3年で6台の新型EVが登場します。その最初のモデルが「bZ4X」なのです。
そして、この「bZ4X」と「ソルテラ」が面白いのは、その開発方法にあります。トヨタとスバルが、それぞれスタッフを出し合った特別なチームを結成し、そのチームがクルマを開発したというのです。生産はトヨタが担います。これに対して、従来のトヨタと他社との共同開発である「トヨタ GR86/スバル BRZ」や「トヨタ GRスープラ/BMW Z4」は、トヨタが商品企画&デザインを担当し、開発&生産はスバルやBMWなどの他社に依頼する方式でした。つまり、今回の兄弟EVは、よりトヨタが深く関わっているクルマとなります。
開発者に話を聞いたところ、企画やデザインなどの基本はイーブン、ただし、電気系はトヨタ、4WD制御はスバルといったように、互いに得意なところを活かしながらの開発となったようです。1997年の初代プリウスから現在まで約25年にわたって電動車を手掛けてきたトヨタは、電池やモーターの扱いに関しては、知見&実績とも世界最高峰の存在です。一方、スバルはWRCで実力を証明したように4WDの専門家。その両者の得意な技術を結集したのが「bZ4X」と「ソルテラ」ということになります。
1モーターでFF、2モーターで4WD
そんな「bZ4X」と「ソルテラ」は、どんなクルマなのでしょうか。まず、プラットフォームは、新規開発した専用品を使います。車体の中央の床下に71.4kWhのリチウムイオン電池を搭載し、FF車は前輪に最高出力150kW(203.9馬力)・最大トルク266Nmのモーター、4WDは前輪と後輪にそれぞれ80kW(109馬力)・169Nmのモーターを搭載します。FFは1個で150kW(203.9馬力)、4WDは2個合計で160kW(218馬力)のパワーを発揮します。満充電からの最長航続距離はFFで559km、4WDで540km(共にWLTCモード)。ライバルとなる日産「アリア」の65~90kWh、160kW~290kWと比べると、パワーは控えめになっています。
ボディーサイズは、全長4690×全幅1860×全高1650mmでホイールベースは2850mm。それに対して、トヨタの「RAV4」は全長4600×全幅1855×全高1685mmでホイールベース2690mm。フォレスターは全長4640×全幅1815×全高1715mmでホイールベースが2670mm。人気ミッドサイズSUVと比べてみれば、「bZ4X」と「ソルテラ」は、背が低くてホイールベースが長いのが特徴です。エンジンを積むSUVとは、ちょっとプロポーションが違っているのです。その分、車内の前後方向を広くとれるのが魅力となります。
価格は「bZ4X」がFFで600万円、4WDで650万円。ただし、一般向けはサブスクの「KINTO」のみ。「KINTO」のサイトを見ると「申込金77万円、月々10万7800円」のプランが一例として提示されていました。「ソルテラ」の価格はFFが594万、4WDが638万円/682万円。こちらは普通に現金一括やクレジットなどでの支払いとなります。
未来を感じさせる
個性的なデザインと操作系
「bZ4X」と「ソルテラ」の顔つきは独特です。エンジン車では必須となるエンジンを冷やすためのラジエターが、EVなのでありません。その特徴を活かしたグリルレスのフロントデザインは、まるでマスクをしたようにも見えます。上下に細く、左右に長いヘッドライトと組み合わさった顔つきには精悍と言っていいでしょう。また、前後のホイールアーチに設置された樹脂のモールはSUVらしい力強さを感じさせます。
「bZ4X」と「ソルテラ」の違いは、その顔にもあります。スッキリとした印象の「bZ4X」に対して、「ソルテラ」はスバル独特のヘキサゴングリルを採用し、フォグランプも設定。よりアウトドアを感じさせるのが「ソルテラ」となります。そういう意味では「bZ4X」は、より街中を向いたデザインと言えるのではないでしょうか。
インテリアの特徴は運転席周りです。メーターが高い位置に設置されるだけでなく、ステアリングまわりと一体化したようなデザインとなっています。まるで、1人乗り飛行機のコクピットのような雰囲気。非常に未来感があります。
12.3インチの大きなディスプレイの下にシフトノブがありますが、この形状も独特。丸形で、右に回して「D(ドライブ)」、左に回すと「R(後退)」となります。シフトノブのさらに下には、スマートフォンを収納するトレイ。ワイヤレス充電機能が付いています。また、センターコンソールの下は収納スペースになっており、USB Type-Cのポートが2つありました。タブレットを置くのにピッタリの場所となります。
ちなみに、全高が低く、床下に電池を配置しているためか、車内の上下方向はそれほど広いわけではありません。SUVというよりもセダンのような雰囲気です。ただし、前後方向の寸法は十分なので、後席の足元は広々としていました。また、運転席からの視界が良いのは好印象でした。
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