TOYOTA GAZOO Racingは、今秋発売予定のGRカローラの日本仕様と、豊田章男社長の名を冠した今冬発売予定の限定車「GRカローラ モリゾウエディション」を発表しました。
大衆車と思ってナメてるとヤケドする
カローラは1966年の発売以来、長年に渡りトヨタを支えてきたクルマ。そして豊田章男社長が初めて購入したクルマは、「羊の皮を被った狼」の異名を持つカローラ1600GT。それゆえ、豊田社長は「多くのお客様に愛していただけるクルマだからこそ、絶対にコモディティ(日用品のような商品)と言われる存在にしたくない。お客様を虜にするカローラを取り戻したい」と、GRカローラの開発を開始したのだとか。
GRカローラはGRブランド車両としては初の4ドア車。エンジンはGRヤリス由来の1.6リットル直3ターボエンジンを搭載し、GRヤリスを上回る304馬力、トルク37.7kgf・mを発生。これをGRヤリス由来のスポーツ4WDシステム「GR-FOUR」で制御します。エンジンは下山工場での手組み。横には匠のバッジが貼られます。GRヤリスよりもパワーアップしているのは、開発中に豊田社長から「野性味が足りない」と言われたから。そして304馬力とちょっと中途半端に思えるパワーは「米国と日本では単位系が少し異なり、米国で300馬力と表記するには304馬力が必要だったから」なのだそう。
出力は多少違いますが、同じエンジンということで「GRヤリスと何が違うの?」という疑問が沸きます。まず前提としてGRカローラはGR車両としては初の4ドア車、つまり「一応、ファミリーを持っている方でも乗れるGR車両」という位置づけ。そしてもうひとつがGR車両としては最も長いホイールベース。実はGRスープラよりも長い2640mmあるのです。一方、GRヤリスのホイールベースは2560mm。また車体重量もGRヤリスが1130kgに対して、GRカローラは1470kg。そこから想像するに、GRヤリスの方がクイックでそしてパワーウェイトレシオの面から速そう。
開発担当者に話を伺うと「俊敏で速く、アグレッシブなスポーツ体験をされたい方にはGRヤリスの存在価値はあると思います。ピーキーな面を味付けとして残していますし、何より軽いですから。ですので熟練者が走ったらGRヤリスの方が速いでしょう。カローラは懐が深く、どこまでも安定してコントロールできるという安心感があります。ですから安定感が欲しいとか、ユーティリティーがあるといい、という方に適していると思います。もっともGRカローラをダルいと思う人は、相当な技量がある方でしょうけれど」とのこと。
かなり走りに対してストイックなクルマに仕上がっているようです。というのも、開発にあたっては初期の段階からSUPER GTなどで活躍する石浦選手が関与。「レースに勝つために鍛えたクルマを市販化する」という名のもと、開発中のGR車両に水素エンジンを乗せ、スーパー耐久シリーズに出場し、水素エンジンを鍛えるとともに、車両も総合的に鍛え上げたのだとか。よく水素エンジンが話題になりましたが、実はその時の車両はカローラではなく、GRカローラの開発車両だったというわけです。
エクステリアは空力優先。エンジンフードに設けられたエアダクトは通常はフタをしていますが、ネジ1本で開口可能。またフロントバンパーの両端には、ホイールの側面へ風を逃がすエアーインレット、そしてフロントタイヤ後ろにはエンジンルームからの熱を逃がすエアアウトレットが用意されています。また天井はカーボン製で軽量化。底面はフルフラット化されているなど、レーシング由来であることを物語ります。
ホイールはBBS製の鍛造品。タイヤは前後とも235/40R18で、ADVAN APEX V601を装着しています。ユニークなのはホイールが輸入車のように内側がかなり凹んでいるところ。トヨタとしては珍しくインセット30設定のホイールを履いています。ホイールの隙間からはスリットローターと赤い4ポットキャリパーの姿を拝むことができます。
インテリアは実にシンプル。DRIVE MODEとiMT、そして前後のトルク配分のダイヤルを配置するのはGRヤリスと同様です。装備も簡素で、USBは1系統でアームレストに配置。近くには12Vアクセサリーソケットを用意していました。前席はシートヒーターが用意されています。
後席もしっかり用意。ですが、欧州系Cセグのように足元は狭めです。ラゲッジスペースは十分な広さを確保。後席を倒せばタイヤ4本は入りそうです。