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「Slack Frontiers Japan」基調講演、Slack導入企業のコクヨ、ウーブン・プラネットもゲスト登壇

“Digital HQ=Slack”が不確実性の時代の企業に求められる理由

2022年05月18日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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コクヨ:「Slackは自律的に使えば使うほど価値の高まるツール」

 基調講演では国内のSlack導入企業2社がゲスト登壇した。1社目は、文具やオフィス家具などで知られるコクヨだ。コクヨでは今年4月からSlackの本格導入を開始した。

ゲスト登壇したコクヨ 代表取締役社長の黒田英邦氏

 Slackを導入した理由について、コクヨ社長の黒田英邦氏は、同社が目指す長期ビジョンを達成するためには、コクヨ自身での働き方の変革が不可欠だったためだと説明する。

 コクヨではオフィス家具や文房具の製造、オフィス空間の設計、オフィス消耗品の通販といったビジネスを通じて、現在およそ3000億円規模の売上を上げている。ただし、それぞれの市場はデジタル化の波を受けて成熟、飽和してきており、「現在は高いシェアもいただいているが、長い目で見るとこの会社には将来がないのでは」(黒田氏)という危機感も抱いているという。

 そこで昨年、2030年に向けた長期ビジョンを策定した。オフィス家具や文房具を作る会社ではなく「働き方、学び方、暮らし方を提案する会社になっていく」というビジョンを掲げ、売上5000億という目標も掲げた。その目標を実現すべく、コクヨ自身の改革として「組織を超えて自律的に動くプロジェクト型の仕事の作法を身につける」ことを目指している。

 「企業が大きくなると、どうしてもヒエラルキー化、サイロ化が進み、それそのものが“変わる”ことの障壁になってしまう。それを打破するために、僕ら自身はプロジェクト型の働き方をもっとうまくできるようになりたい。上から言われたことをやるのではなく、プロジェクトごとにテーマが決まっていて、メンバーが自分たちで答えを出していく。会社はそれを支える組織であるべき、という考えに至った」(黒田氏)

コクヨでは2030年の売上5000億円という目標に向けて、多様な事業を次々に創出し、それが“森林”のように集まる経営モデルへのシフトに取り組んでいる

 プロジェクト型の仕事を促進するツールとして、なぜSlackを選んだのか。もちろんSlackのさまざまな機能がそれに適しているということもあるが、一番の理由は、Slackが「メンバーが自律的に使わなければ成果が出ないツール」、逆に言えばメンバーが自律的に使うほど価値が高まるツールであると理解したからだという。

 「(Slackは)使えば使うほど価値が出てくる、つながればつながるほど、情報を共有すればするほど価値が高くなるツールだとわれわれは理解している。またこれを使って何をやりたいのかということを、われわれメンバー自身で考えられる。そういう仕組みであるということで、採用に至った」(黒田氏)

Slackは「自律的に使えば使うほど価値が高まる」仕組みのツールと評価し、採用した

 コクヨには、新たな製品やサービスを作る際には必ず、顧客や消費者の立場に立って社内で「実験」をしよう、という企業文化があるという。Slackについても、自社の変革に役立てるだけでなく、将来的な顧客提案につなげる目的で「Slackを使った新しいハイブリッドワークとはどういうものなのかを、自分たちで実験、実証していきたい」と語る。

 「われわれ自身が『日本で一番Slackを使いこなしている会社』になって、世の中にもご紹介できるように頑張っていきたい」(黒田氏)

自社内の改革だけでなく、顧客への価値提案にもつなげていきたいと語った

ウーブン・プラネット:「グローバルに広がるトヨタグループを“One Team”にするために」

 ゲスト登壇したもう1社のSlack導入企業は、トヨタグループのウーブン・プラネット・ホールディングスだ。同社 VPでITの責任者を務めるジャック・ヤン氏は、ウーブン・プラネットは自動運転や安全技術、コネクテッドシティなどの研究、先行開発を通じて、顧客に「世界で最も安全なモビリティを開発、提供する会社」だと説明する。同時に、トヨタグループ内のIT活用とデジタル化を牽引するという役割も担っている。

ゲスト登壇したウーブン・プラネット・ホールディングス Vice President, Head of ITのジャック・ヤン氏

 Slackを導入した理由について、ヤン氏は「グローバルのトヨタグループで“One Team”を実現してくれるため」だと説明した。大企業の複雑な組織構造にも対応するEnterprise Gridプランを採用することで、チーム、パートナー、地域といった障壁を超えて、透明性の高い情報共有ができる“One Team”が実現したと語る。

 「ここでは(統合と独自性の)バランスもかなえている。それぞれのグループ企業が、それそれのブランドカラーも維持しつつ“One Team”の一員になるということができる」(ヤン氏)

トヨタグループ各社が、それぞれのカラーを保ったままで“One Team”になれると説明

 グローバル組織として、時差にとらわれないSlackの非同期コミュニケーションが活用されているほか、Google Workspaceや翻訳ツールと連携させることで多言語、多文化をまたぐ業務の生産性が向上していると語る。またカスタム絵文字の利用や、従業員が家族写真などを投稿する「#happy-moments」チャンネルを作成して、“グローバルの一体感”も醸成していると語る。

 今後の展望としては、従業員体験向上という目標を掲げた。Slack上における従業員行動のテレメトリに基づいて、組織の垣根を超えたオープンなコラボレーションができているかどうかを分析し、変化を促していくという。またトヨタのグループ会社や事業部門、パートナーなどのEnterprise Gridへの統合もさらに進めていくと話した。

 そして、将来的にはトヨタグループを超えてデジタルカルチャーを構築していくという目標を掲げた。「わたしの役割は、単にウーブン・プラネットの業務生産性を高めることだけではない。『Mobility to Love, Safety to Live』というミッションに基づき、データの価値を活用しながら、お客様や社会の幸福度を高めていきたい」(ヤン氏)。

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 なお、基調講演を含むSlack Frontiers Japanの全セッションは、イベントサイトで5月23日からオンデマンド配信される予定だ。

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