タグを見ればその物品の素性がわかる
このM-65フィールドジャケットは、いつ、どこで作られたものなのでしょうか? それを知るために、タグを見ていきましょう。ちなみに、古着の中には、このタグが取れていて、素性がわかりにくいものもあります。
なお、筆者が購入したものは、タグが茶色っぽく変色していました。経年変化もあると思うのですが、購入したときにタバコの匂いがかなり生地に付いていたので、前の所有者が喫煙者だったのかもしれないなあと。この匂いを取るために、けっこう苦労して洗いました……。
まず、サイズは「SMALL SHORT」。同じサイズでも丈が選べる仕様はミリタリーものでは定番の仕様。同じ「SMALL」でも、「SMALL - X-SHORT」「SMALL - SHORT」「SMALL - REGULAR」「SMALL - LONG」……といった具合に、胸囲と身長にあわせて丈の長さが選べるのです。SMALL SHORTは、日本のメーカーのサイズでいうと「S〜M」ぐらい、かなあ。
HEIGHTは身長で、「UP TO 67 IN」は「身長67インチ(およそ170cm)まで」。CHESTは胸囲で、「FROM 33 TO 37 IN」は「胸囲33インチから37インチまで(およそ84〜94cm)」。身長が170cm、胸囲が84〜94cmぐらいの人向けのサイズということです。
「STOCK NO」は、NSN (National Stock Number)、米国国防省の備品管理番号です。「8415-00-782-2935」は、「COAT, COLD WEATHER, FIELD」の中でも、SMALL SHORTサイズに割り当てられた番号ですね。
その下には「NATO SIZE」。これはNATO加盟国の共通サイズで、「6070/8494」ですから、「身長160cm〜170cm、胸囲84cm〜94cm」の人向けであることを示しています。
「COAT, COLD WEATHER, MAN's, FIELD, OG-107」は物品名ですね。「MAN's」は男性用。「OG-107」は米国陸軍のカラーコードです。OGはオリーブグリーンを指しています。
「DLA 100-78-C-0378」というのはいわゆるコントラクトナンバー、国防兵站局発注番号です。この「78」の部分が製造年の下2桁なので、1978年製とわかります。DLAは国防兵站局(Defense Logistics Agency)のこと。ちなみに、1960年代から1977年まではDLAではなく「DSA(国防補給局)」になっています。
OUTERSHELL(表地)とLINING(裏地)は、先ほど触れたので省略します。
タグの下半分には取り扱いにあたっての注意が書いてあります。「温かいところに入る前に雪や霜が付いていたら落とせ」「高温のストーブの近くに置いとくな」など。
ちなみに納入メーカーの表記はどこにあるかというと、一番下の「SO-SEW STYLES, INC.」がそれ。M-65フィールドジャケットに限らず、ミリタリーウェアは多数の企業が生産を請け負うことが多く、SO-SEW STYLESもその一つ。有名なメーカーでいうと、MA-1などで知られるAlpha Industriesなども製造を手掛けていました。
ラフに羽織るだけで印象が決まる
M-65フィールドジャケットは、その無骨でタフな外見が最大の特徴。ゴツいシルエット、特徴的な立ち襟も相まって、ラフに羽織るだけでも印象的な外見になります。
安価なレプリカ(復刻品)も出ているので、本物にこだわらず、まずはそこから試してみるのもいいかもしれません。ブランドにもよりますが、マイサイズの新品を1万円前後で購入できます。
素材やディテールなどにこだわり、単に再現する以上のものを目指した本格的な商品もあります。価格は高くなりがちですが、じっくり着倒したいなら、そちらも選択肢に入ってくるでしょう。
そもそも、古着で買うとなれば、自分の理想の「状態」と「サイズ」を兼ねそなえたものを探さないといけないので、それはそれで大変。それゆえに、筆者のようにマイサイズを見つけたときの喜びもひとしおなのですが……。
また、前述したように、何しろ有名なミリタリージャケットなので、多くのブランドが個性的な商品を展開しています。たとえば、エポレットがなかったり、シルエットがスマートになっていたり、生地を変えてみたり……。「自分が着るにはミリタリー感が強すぎる」と思ったら、ファッションブランドがアレンジしているM-65フィールドジャケットを探してみるのも手でしょう。
とくに、「ゴツい」という印象は、肩のエポレットや、下に着込むことを想定した大きめのシルエットなどから来るものです。ブランドがアレンジしたものは、その点を配慮して、エポレットを排除したり、細めになっていたりと、よりスマートになっているデザインが多いので、着やすいかと思います。
パーカーの上に羽織ってリラックス感を出したり、きっちりした格好にあえて合わせることでちょっとハズした感じを狙ったりと、意外と使いやすいアイテム。春や秋の印象的なアウターとしていかがでしょう。
モーダル小嶋
1986年生まれ。担当分野は「なるべく広く」のオールドルーキー。編集部では若手ともベテランともいえない微妙な位置。一人めし連載「モーダル小嶋のTOKYO男子めし」もよろしくお願い申し上げます。
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