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編集部員の「これ、買いました」 第1回

アメリカのものとはちょっと違う、ユーロな雰囲気:

フランス軍のモッズコート「M-64パーカー」を買った

2021年10月29日 16時00分更新

文● モーダル小嶋 編集●ASCII

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「フランス軍のモッズコート」という説明は正しいか

 いきなりご機嫌なアラサー男性の画像で恐縮ですが、フランス軍がかつて採用していたフィールドパーカー、通称「M-64パーカー」を古着で購入しました。都内の古着店で、1万7800円。1964年にフランス軍により採用が開始され、1980年代まで使われていたものです。

 なお、このフィールドパーカー、これといった正式名称はないようで、「M-64」という表記もハイフンを入れたり入れなかったりします。とりあえず、記事内では「M-64パーカー」で統一します。

これがM-64パーカーです

 ただ、記事のタイトルで「フランス軍のモッズコート」としているものの、厳密に言うと、この書き方はちょっとおかしいかもしれません。

 モッズコートは、その名の通り、イギリスの労働者の間で1950年代後半から1960年代中頃にかけて流行したスタイルである「モッズ」の信奉者たちが着ていたため、その名が付いた……とされています。モッズ(Mods)とは「Modernism(あるいはModism)」の略だそうです。

 そのモッズたちが着ていたのが、1950年代にアメリカ軍で採用された野戦用パーカーの51年型モデル、いわゆる「パーカーシェル M-1951」(以下、M-51パーカー)。「踊る大捜査線」の主人公、青島俊作が着ていたのはこれだとされていますね。

M-51パーカー

 なお、M-51パーカーは「M-51」とも呼ばれますが、これだけだと「51年型モデル」の意味しかないことに注意。アメリカ軍には、51年型のフィールドジャケットやトラウザーズなど、M-51が付くものはたくさんあるわけです。

 このM-51パーカーをモッズたちが着ていたのは、放出品が大量にイギリスに渡ったので入手が容易だったため、という説があります。三つボタンのモッズスーツでキメていたモッズたちは、主にスクーターを移動手段としていたのですが、そのままではエンジンの油やはねた泥などでスーツが汚れてしまうので、丈の長いM-51パーカーを着て防いでいたと。

 ちなみに、今日では、モッズコートとして「M-65パーカー」も有名です。M-51パーカーの後継にあたるもので、フードが取れるやつですね。SEKAI NO OWARIが着ていたことでもおなじみ(ただ、かなりスリムに見えたので、特注品か、メンバーの体型にあわせてお直ししているのかも)。

M-65パーカー

 余談になりますが、M-65といえば、「M-65フィールドジャケット」も人気。映画「タクシードライバー」でロバート・デ・ニーロが着ていたアレです。

M-65フィールドジャケット

 ただ、M-65パーカーが採用されたのは1965年。もちろん、1965年当時のイギリスにもモッズはまだまだいたでしょうが、最新のアメリカの軍用コートがそこまでイギリス内に出回ったとも思えません。なので、モッズが着ているものは主にM-51パーカーのはず。

 そんな歴史を知らずとも、今ではモッズコートといえば「丈の長いミリタリー(風)コート」ぐらいの意味合いになっています。そもそも昔は「モッズパーカー」と呼ばれていましたが、ファッション業界で有名になるにつれて、「モッズコート」と呼ばれるようになりました。コートの定番の一つとして、世間に認知されたということかな。

 よって、フランス軍のM-64パーカーも、モッズが着ていたわけではないですが(時代的に考えて、着ていた人がゼロだとは言い切れないが、少なくとも多くの人が着ていたとは考えにくい)、今ではモッズコートと呼んでも通用するわけです。

 M-64パーカーを「フランス軍のモッズコート」と書くことに眉をひそめる人もいらっしゃるかもしれませんが、わかりやすい伝え方としてはセーフなのかな、と考えています。まあ、ネットで古着店などを検索すると、そう書いているショップもたくさん出てくるのですが……。

ユーロな雰囲気がある大人のミリタリーコート

 前置きが長くなりましたが、M-64パーカーがどういうものか、見ていきましょう。オリーブドラブ色の生地は、高密度に織り込まれたコットン地です。

基本的に「装備の上に着るもの」なので、身幅が広く、ガバっと羽織る感じ。前を開けて着たときのシルエットもなかなか優美なのですが、撮影を忘れました。ごめんなさい

後ろから見るとこんな感じ。裾の部分にスリットはない

サイドから。意外と裾が広がらない印象

 アメリカ製のモッズコート、M-51パーカーやM-65パーカーと比べると、全体的なシルエットにも大きく違いがあります。

 まず、裾の部分にスリットがない。たとえばM-51パーカーは、燕尾服のように先割れになっていてヒモが付いており、左右の足の内側で縛ることで裾がバタつかないようにできます。また、丈の調整ができるスナップボタンも付いています。「フィッシュテール」などと呼ばれる部分ですが、M-64パーカーにはその仕様がありません。

 また、肩の部分はセットインスリーブ(身頃の脇と袖の袖下をそれぞれ先に縫い合わせたもの)ではなく、ラグランスリーブ(袖が襟ぐりまで切れ目なく続くように縫ったもの)になっていて、肩が自然にストンと落ちるような感じになっています。

 それにより、大きめでありながら、どこか品のある、フランスというかユーロな雰囲気を感じさせる(と思う)仕立てになっていますね。この記事ではモデルがモデルなので、伝わりにくいかもしれませんが。

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