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編集部員の「これ、買いました」 第2回

「PRISON BLUES」ブランドのペインターパンツを購入:

メイド・イン・プリズン! アメリカの刑務所で作られたデニムを履く

2021年11月11日 16時00分更新

文● モーダル小嶋 編集●ASCII

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受刑者に更生の機会を与えるデニム

 ちょっとショッキングなタイトルかもしれませんが、嘘はついておりません。今回取り上げるのは、「PRISON BLUES」(以下、プリズンブルース)なるブランドのデニムペインターパンツです。

 ペインターパンツは、その名の通り、塗装や絵画に携わる人のためのワークパンツ。ハンマーループ(金槌を吊るす部分)やサイドポケットなどが付いていることが特徴です。

ウエスト30×レングス30(インチ)。ワイドテーパード(裾に向かって細くなる)タイプだが、急激に細くなる感じではない

 ちなみに購入したのはウエスト30インチ×レングス30インチ。(30インチはおよそ76cm。ですが、ウエストは実測で80cmぐらいでした)。このペインターパンツ、ウエストに関しては、28、30、32、34……と、2インチ刻みで用意されているようです。

 なお、レングスに関しては28インチや29インチのモデルも作っているそうなのですが、国内では見つからず、とりあえず購入可能だった店舗の在庫から一番短いレングスを買いました。

裾幅もそれなりにあるので、ブーツやボリュームのあるスニーカーもハマりそう

 プリズンブルースはデニムパンツの他にも、カバーオール、キャップなどを手掛けています。最大の特徴は、製品が受刑者たちのハンドメイドであること。作られているのは「Eastern Oregon Correctional Institution(オレゴン東部矯正施設)」とのこと。

フラッシャー(ポケットに付けられるペーパーラベル)には、制作の背景が記されています

 1989年、アメリカはオレゴン州のペンドルトンで、刑務所を管轄する更生局が、刑務所内で衣類の製造を始めたそうな。最初は受刑者が着用するためのものを作っていたそうですが、さらに、外部に売る製品も作られ始めました。

 その収益は、出所後の受刑者に渡されるのみならず、犯罪犠牲者の損害賠償の基金や、ブランドの運営費などにも充てられるそうです。受刑者に技術と更生の機会を与えているわけで、社会復帰の一助になっているともいえそう。

 そのような背景から、オレゴン州の刑務所で実際に着られているだけでなく、広報用のモデルも受刑者が務めているなど、徹底的にブランドの出自にこだわっているようです。

Made in U.S.A.、そして「Made on the inside」(「Inside」には「刑務所に入って」という意味もあります)

 作られている経緯が経緯なので、価格も安く、筆者は7920円で購入。アメリカ製のデニムパンツと考えると、相当に安い部類です。国内ではおよそ7000円〜8000円台で売られているようですが、いかんせんハンドメイドなので、安定して入荷しているわけではないとのことでした。

 ファッションに興味がある/ないに関わらず、その背景の社会的な意義を知ると、なかなか忘れがたいブランドではないでしょうか。

リジッドなので糊を落とします

 ところで、このペインターパンツは、リジッドデニム、未洗いで糊付けされたまま出荷したものなので、糊を落としてから履きます。この糊を落とす行為、やり方に正解というものはないようで、ネットで検索すると十人十色どころではない多種多様な方法がでてきます。

 中には糊でパリッパリになったままの生地を履くことで、自分だけのシワをくっきり付ける人もいるようです。ジーンズを洗わずに履き続けるばかりでなく、洗う際もドライクリーニングで縮みや色落ちを抑えるやり方もあります。

 コットンで作られたジーンズ(デニム)は、洗濯すると多少は縮みます。水分を吸収することで生地が膨らみ、乾燥すると元に戻るのですが、その際に編まれた組織の網目が詰まるからです。リジッドデニムは未洗い(水を通していない)のため、最初の洗濯でかなり縮むとされています。もっとも、防縮加工されているものもあるほか、生地の状態などにもよるので、縮み方は一概には言えませんが。

 そういえば、映画「さらば青春の光」で、登場人物が新品のジーンズを履いたままシャワーを浴びて、そのまま部屋でテレビを見る……というシーンがありました。これも、自分の脚に沿って縮ませ、ぴったりフィットさせるということなのでしょう。

 ただ、リジッドのまま履いてシワを付けたとて、洗濯して縮んだらシワの位置が“ズレる”のではないか、そもそもパリパリで履き心地が最悪ではないか、イスやら何やらがインディゴで青く汚れるのではないか……という懸念もあります。筆者は履く前に洗うことにしました。

 先述したように糊の落とし方に正解はありません。自分が望んだ風合いになるようにやるのが一番。筆者の場合、まず、40度ちょっとのお湯に3時間ほど漬けました。

洗面台でお湯に漬ける

 大きいバスタブでやりたかったのですが、インディゴがバスタブに付着すると、落とすのが面倒です。このあたりは賃貸のつらいところですが、別に持ち家でもつらい作業になるでしょうね。なので、汚れが比較的つきにくい陶器製の洗面台で漬けました。裏返しにしています。

 ジーンズによっては、石鹸を溶かしたお湯で押し洗いをしたほうが、しっかり糊が落ちていいかもしれません。これは個人の判断ですが、プリズンブルースのデニムはそれほど糊でパリパリした感じではなかったので、お湯だけでいいかなと。

洗濯

 お湯から引き上げたら、洗濯機で(洗剤を入れずに)裏返したまま洗います。変なシワが付かないように形を整えてすこし干してから、半乾きのままコインランドリーに持っていて、ガス乾燥機で乾燥させました。

乾燥機にも1回かけました。厚めですがそれなりにふんわりしたように思います。ちなみに生地は14.5オンスです

 乾燥機にかけることで生地がぎゅっと詰まります。後で裾上げすることを考えると、縮めておいたほうが楽かなと。ただ、このデニムは防縮加工がされているとのことで、それほど大きくは縮みませんでした。

 乾燥の際に熱が加わるほか、タンブラーでぐるぐる回ってあちこちが擦れるので、すこし色落ちしたり、ムラができたりするのですが、そもそもタフに扱うペインターパンツですし、「刑務所で作られたものなんだから、色落ちを過度に気にして丁寧に扱うのも違うかな」という考えです。

 くどいようですが、これはあくまで個人の考え。どのような色落ちを望んでいるか(あるいは色落ちさせたくないか)でまったく変わってきます。筆者もデニムの取り扱いについてはプロフェッショナルではありません。試行錯誤が楽しい、ということで一つ。

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