2022年度に進める3つの注力分野
2022年度にレッドハットが日本で注力するのは、「オープンハイブリッドクラウド領域の拡大」、「OpenShiftの新しい提供モデル、新価格、新サービスを展開」、「アジャイル支援事業を拡大」の3点だという。
これらの注力分野は、DXに関する3つの鍵を反映したものであるとも語る。
DXに関する3つの鍵とは、コロナ禍においてDXが進展し、次のステージが訪れ、マルチクラウド化をロードマップに盛り込むユーザー企業が増加したことによる「あらゆるクラウドの活用」、コンテナなどの活用によって実現する「アプリケーションのクラウド対応」、クラウド活用やAIの導入などを背景に、変化に対するスピードが加速し、それにあわせることができる体制へと移行する「組織文化、プロセス、スキル」である。
ひとつめの「オープンハイブリッドクラウド領域の拡大」について岡社長は、「オープンハイブリッドクラウドという言葉は、レッドハットが提唱してきたコンセプト。いまでは、多くの企業が使う言葉になってきた」と前置きしながら、「マルチクラウドの進展とともに、ベンダーロックインされることなく、使い勝手がよく、パフォーマンスを出すことができるコンテナプラットフォームとして、OpenShiftを拡大させていく」とする。
日本においては5Gとエッジコンピューティングに注力
日本において、とくに注目しているのが、5Gおよびエッジの領域だという。
「5Gの整備が進展し、それに伴い、エッジの利活用が増大している。これまでにない市場が生まれることになり、ネットワーク基盤のクラウド化が進展する。レッドハットもエッジにはいち早く取り組む考えである」とする。
レッドハット社内では、通信分野を担当しているチームを独立させ、グローバルチームとして、一貫した支援体制が行えるように再編したのも、5Gやエッジの大きな潮流を捉えたものだ。
「レッドハットのようなグローバルカンパニーが求められるのは、日本以外でどんなことが起きているのかという情報を、日本のお客様やパートナーに提供することである。だが、5Gに関しては、日本の通信メーカーの動向への関心が高い。双方が知見を共有することで、業界全体のイノベーションを拡大していくことが大切であり、そこに貢献していきたい」とする。
さらに、オープンハイブリッドクラウド領域の拡大に向けては、日本が得意とする製造業への提案を加速。インダストリー4.0の実現に向けたビジネス開発専門組織を設置し、大手製造業を中心にした新規事業の開拓を開始したという。また、岡社長は、「自動化2.0に取り組む」と語り、「自動化するか、しないかという会話はもうない。どのレベルまでの自動化を求めるのかという会話になっている。レッドハットでは、Automation Adoption Journeyを打ち出し、運用の部分を自動化することで負荷を軽減するために、まずは、限られた部門で自動化を行い、これをスケールアウトして、全体に広げていく提案を行っている。こうしたステップを踏むことが重要であり、その成功モデルを横展開し、幅広い顧客に提供していきたい」とする。
AWSやAzure、GCP環境での施策を拡充
2つめの「OpenShiftの新しい提供モデル、新価格、新サービスを展開」では、ROSA (Red Hat OpenShift Service on AWS)をはじめとして、AWSやAzure、GCPの環境において、レッドハットのマネージドサービスを活用するケースが急激に増加していることを示し、それにあわせた施策を展開することになる。
「この数年で、レッドハットにおいて、最も大きな変化はなにかと聞かれたら、間違いなくマネージドサービスの利用拡大だと答える」としながらも、「オープンソースの文化を知り、クラウドを熟知したレットハットが、ユーザー企業をどうサポートするか、パートナーとのエコシステムをどう構築するかが、ますます重要になる。そして、マネージドサービスをリードする存在であり続けなくてはいけない」と語る。
OpenShiftマネージドサービスを利用している企業は、大手銀行や通信、リテール、グローバル自動車メーカーなどがあり、業種を問わない状況になっているという。「一昨年に比べて、利用社数は5倍に増えている。マネージドサービスに対する関心が高い」とする。
こうしたビジネスを加速するために、新たなマネージドサービスとして、データ駆動連携のKafka、データサイエンスにおいてはAI/MLに関するマネージドサービスを提供することを新たに発表した。
その一方で、OpenShift関連製品の値下げを発表。具体的には、Kubernetes Engineは33%の値下げ、Data Foundationでは40%の値下げを行った。
そして、OpenShiftの適用基盤も拡大しており、ARM on AWSやEdge、Azure Stack Hubにも対応した。
「OpenShiftに対する新たな活用の形を提案すること、導入の敷居をさらに低くしたいという狙いから、新しい提供モデル、新価格、新サービスを展開することになる」と語る。
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