日帰り訪問客にポイントを絞り分析
分析の対象は、仙台や松島から石巻への日帰り訪問客にポイントを絞った。観光客向けの宿泊施設が少ない石巻には、近隣地域の宿泊客が誘致ターゲットとなるためだ。なお、来訪者と住民の分離には、平均滞在日数を利用した。
データからわかったことは、松島海岸へは東京等首都圏からの訪問者が多いのに比べ、石巻と女川では宮城県内からの移動が多いということだ。
群流センサーのデータからは、どこからどこへ移動したかという施設の回遊ルートや、日別・時間別の訪問者数がわかる。例えば調査期間中突出して訪問者が多かったのは、各所で震災慰霊祭が行われた3月11日と岸田総理が訪問した12日だった。11日当日の時間別に分析すると、実際に追悼式が開催された午後よりも、準備段階の午前にピークがあったことなどがわかった。ほかに市民バスの車載センサーから、観光客利用の可能性を探ったが、こちらはほぼ利用がないと判明した。今回得られた結果については、現在さらなる分析を進めているとのことだ。
データを利用して観光客誘致を進めていく
続いて、今回の結果と観光庁の調査データ等を踏まえ、現状分析と今後の観光客誘致についての提案が行われた。
石巻市の課題は宿泊比率の低さと県外からの観光客の少なさにある。その原因として考えられるのは、隣接する都道府県との差別化が難しいことや、旅行者が求める非日常感に乏しく魅力が欠けること、移動手段が車でないと観光が難しいこと、捕鯨推進地域であることがインバウンド面で課題であることなどを挙げた。
観光発展のための戦略としては、石巻近郊からの呼び込みのため半日程度の観光や体験ができるサービスの開設や、再来訪してもらえる応援団・ファンを獲得するためにピースツーリズムを推進することなどを挙げ、具体的なコース案、今後の観光計画、街づくりについての計画案が示された。
センサー設置等にも協力した石巻観光協会からは、今回見えてきた課題に対しての施策を考える必要性や、さらに分析を進めるうえで効果的と思われるセンサー配置箇所の提案が行われた。そのほか、石巻圏観光推進機構(DMO)からは、「データに沿った観光戦略を立案するうえで今回得られた情報はありがたい。各地にある震災遺構の現状の回遊状況を把握し、各所を結びつけるプランを考える参考にしたい」といった意見があった。
ビッグデータ活用に寄せられる大きな期待
事業修了後も、Wi-Fi型群流センサーは引き続き設置し、リアルタイムのデータ把握は継続していくとのことだ。Wi-Fi型群流センサーのデータは、Web上で可視化されており、過去のデータも含めてリアルタイムデータが観測可能になっている。期間等の絞り込みや検索、並べ替えもブラウザ上から行えるため、専門知識やPC操作に詳しくない人でもデータを容易に利用できるようになっている。今後はオープン化も検討しているとのことだ。
報告会の冒頭には齋藤正美石巻市長からも、ビッグデータを活用した観光戦略に大きな期待を寄せているとのメッセージが流されていた。多くの人を巻き込むことで、震災復興のための効果的な施策を展開していくことができそうだ。
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