国土交通省では、携帯電話の位置情報データを活用した実証実験事業を進めている。2021年12月に実証実験の採択事業者が決定し、2022年3月には成果報告会で成果の報告・公表が予定されている。今回、実証実験に参加している自治体から、滋賀県日野町、香川県高松市、愛知県岡崎市の3自治体に話を伺った。自治体が抱える課題は多い。その解決手法としてビッグデータ分析にはどのような期待を寄せているのだろうか。それぞれが語る実証実験を軸とした取り組みからは、日本の自治体が抱える課題とデータ活用での可能性が見えた。(以下、文中敬称略)
――ビッグデータの実証実験といえど、参加している自治体はそれぞれ立地や規模、抱えている課題もさまざまです。まずは自治体の概要と、本実証実験に参加した背景についてお聞かせください。
日野町 津田 日野町は滋賀県の東南に位置する山間にある人口約2万1000人の町です。町には工業団地があり、夜間人口よりも昼間人口の方が多いという特徴があります。しかし、流入してくる人口を町の活性化に活かせなかったという課題がありました。そこで、公共交通の活性化によって町の活性化を目指す取り組みとして「わたむき自動車プロジェクト」を2021年度より開始しました。その一環として今回の国交省の実証実験に参加しています。
高松市 宮武 高松市は人口約41万5000人を擁する香川県の県庁所在地です。四国の海の玄関口として昔から栄えてきましたが、今は本州と四国を結ぶ3本の橋がかかったことにより、港町という性格から変化が起きており、地域政策にも対応が求められています。今回は具体的課題の解決という視点ではなく、移動のデータをこれからどのようにうまく使っていくかという広く一般的な観点から、実証事業に参加しました。
岡崎市 鈴木 岡崎市は、トヨタ自動車がある豊田市や、デンソーやアイシンがある刈谷市と一体の経済圏を形成しており、西三河というエリアに属しています。西三河の人口は全体で160万人ほどで、岡崎市の人口は約38万5000人です。折しも令和5年1月から大河ドラマ『どうする家康』の放映がNHKで始まります。市の中心には徳川家康生誕の岡崎城があり、大河ドラマ館を設置することが決定しているため、観光客の増加が見込まれます。ですが、一方で岡崎城は国道1号線沿いにあるため、交通渋滞が悪化する可能性もあります。今回、ビッグデータを活用して、渋滞悪化という負の側面の最小化と、集客効果の最大化に取り組んでいきたいと考えています。
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