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位置情報ビッグデータが解決する地域課題

アフターコロナ、位置情報、コスト……携帯電話の位置情報データ活用における成功のカギとは

ドコモが語る「位置情報データサービスの現在」

文●森嶋良子 編集●北島幹雄/ASCII STARTUP

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 国土交通省が進める携帯電話の位置情報データを活用した実証実験事業では、基地局情報やGPSなど、さまざまな位置情報データが分析のために使われている。中でも、4つの採択事業で利用されているのが、ドコモの「モバイル空間統計」だ。基地局データをもとに人口を推計でき、リアルタイムで精度の高いデータを提供できるといった特徴がある同サービス誕生の経緯と現状、目指す未来とは。そして位置情報のデータ活用を成功に導くためには何が必要か。「モバイル空間統計」の事業展開をしている株式会社ドコモ・インサイトマーケティングエリアマーケティング部鈴木俊博氏に、数々のロケーションデータビジネスを手掛けるスタートアップ企業である株式会社ナイトレイの谷佳祐氏に話を伺った。(以下、本文敬称略)

株式会社ドコモ・インサイトマーケティング エリアマーケティング部 部長 博士(工学)の鈴木俊博氏。株式会社NTTドコモにてモバイル空間統計の研究立上げより参画。2013年より株式会社ドコモ・インサイトマーケティングにてモバイル空間統計の事業推進に従事。国土交通省や運輸政策研究所でのビッグデータ関連の専門委員を歴任、現在は東京海洋大学の非常勤講師など。

株式会社ナイトレイ コンサルタントの⾕佳祐氏。大学卒業後、近畿日本ツーリスト株式会社へ⼊社。2013年より株式会社オリエンタルコンサルタンツにて、「地域の魅⼒づくり」に携わる事業の企画提案からマーケティング調査を⼿掛ける。アグリコネクト株式会社にて、「農業×地域活性化」の地域活性化コンサルティング、株式会社アイキューブでも地⽅創⽣を中⼼に事業開発コンサルに携わる。2020年より株式会社ナイトレイにて位置情報を活⽤した地域活性化⽀援に従事しつつ、フリーランスコンサルタントとして産物を活⽤した地域ブランディングなど、様々な地域の活性化⽀援をおこなっている。

社会や産業の高度化を推進するために基地局データ利用を事業化

谷 「モバイル空間統計」は今では多くの事業者に利用されるようになりましたが、ここまでの経緯はどのようなものだったのでしょうか。

鈴木 もともと携帯電話の基地局データは、設備設計や日々のオペレーション用データとして常に活用されてきたという歴史があります。これらの基地局のデータを活用することで、社会や産業の高度化をなんらかの形で支援できないかと考え、2008年にドコモの研究所で研究を開始しました。その後、技術的な可能性や社会的有用性、個人情報利用に関して関係省庁有識者の方々に議論いただき、2013年の10月からドコモ・インサイトマーケティングとして事業を開始しました。

 基地局データ活用にあたって、当初はどのような点を課題と考えていましたか?

鈴木 技術的や法律的な課題のほかに、世の中に受け入れられるかどうかという点については、議論を慎重に積み重ねながら検討しました。このような事業として進めるうえで大事なポイントです。準備段階ではかなり石橋をたたきながら進めたので、2013年に事業を開始したあとは、ネガティブな反応はほとんど発生していません。

 今回の実証実験以外にも「モバイル空間統計」の利用例は多数ありますが、特徴的な事例をご紹介いただけますか?

鈴木 モバイル空間統計では「人口マップ」を一般公開しています。昨今の状況下で人が大勢集まるところを避けたいというニーズが生まれました。参考にできる情報として、全国の各都市のリアルタイムの人口を提供しています。社会貢献のひとつとして展開しており、各方面からご評価をいただいています。

 ほかにも、内閣官房の新型コロナウイルス感染症対策推進室に、リアルタイムの人口変動を提供し、政策検討に活用いただいています。東京都には、人口マップを都民向けにカスタマイズして発信するサイトを構築していただきました。オリンピック期間は、NTTデータと連携し、翌日の混雑状況の予測を発信しました。

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