アドバイス:売上の入金日で記帳してはダメ!
まず、売上(報酬)について解説します。これは、確定申告における最低限でありもっとも重要な情報です。これが正確に計上されていることが、何よりも大切です。マサヤさんはそこをきっちりと押さえていますし、悪いことをしようとしているつもりはないのはよくわかります。
しかし、私の目から見れば、税務署から「不正」とされてしまう可能性大! ではどこが問題なのでしょうか。その前に、不正についての解説をしていきます。
確定申告での課税漏れには「不正」(売上除外、架空経費計上などをしている)と、「不正ではない」(うっかりミス)の2種類があります。マサヤさんの場合の問題点は「不正ではない」(うっかりミス)のように思えますが、税務署目線では「不正」になってしまう可能性が高い。マサヤさんのもっとも大きな問題は、「クライアントから入金した日に売上を立てていること」です。
これはあまり知られていませんが、税務上は「仕事が終わった段階」で売上として計上するというルールがあります。マサヤさんの場合は、本来ならば「イベントが終了した日」に売上を立てるべきなのですが、「売上を調整するためにあえて翌年に計上している」とみられてしまった場合には「不正」とみられてしまうのです。
事業には波がありますので、売り上げを翌年に持ち越すなどの操作により今回の確定申告での税金を減らそうとする方は、少なくありません。よくあるパターンでもありますので、もちろん税務署は目を光らせています。そういう時に多くの人は「わざとではない。知らなかっただけだ」と説明をするでしょう。
しかし、場合によっては「わざとやってる」と判断されてしまう可能性があるのが、税の世界なのです。マサヤさんは本来、売り上げとして計上すべき「仕事が終わった段階」ではなく、「入金があった段階」で計上しています。ここを税務署が見たときに、「意図的に売り上げを来期に持ち越した脱税行為」とみなされて、重加算税に該当してしまうこともあるのです。
基本中の基本ですが、確定申告は1月~12月までの1年間に納める所得税の金額を計算して申告します。クリスマスに実施したイベントは、売上の入金がたとえ翌年であったとしても、「仕事が終わった日」を売上として帳簿につけるべきなのです。次回は、このような勘違いに注意してくださいね!
監修者紹介――高橋創税理士(髙橋創税理士事務所)
1974年東京都生まれ。東京都立大学経済学部卒業。専門学校で所得税法の講師,会計事務所勤務を経て2007年に新宿で髙橋創税理士事務所を開設。税理士業の傍ら新宿ゴールデン街のバー「無銘喫茶」の経営なども行う。
著書に『桃太郎のきびだんごは経費で落ちるのか? 日本の昔話で身につく税の基本』(ダイヤモンド社,2021年)、『「知りたい!」がすぐひける 小さな会社の経理・人事・総務』(西東社,2022年)などがある。
髙橋創税理士事務所 https://takahashi-hajime.jp/
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