「月額約30万円から」で事前手続き、導入、運用までパッケージ化、5年で数千カ所への導入目指す
NTT東日本「ギガらく5G」発表、安価なマネージドローカル5Gサービス
2022年03月02日 07時00分更新
NTT東日本は2022年3月1日、企業向けマネージド・ローカル5Gサービス「ギガらく5G」を2022年5月から全国で提供すると発表した。
キャリアグレードの5Gスタンドアロン(SA)機能をローカル5Gとして提供するもので、事前手続きから導入、保守運用までをマネージドサービスとしてワンパッケージで提供する。「従来価格の5分の1水準」という安価なコストも特徴で、今後5年で数千カ所への導入を目標に掲げる。
ローカル5G環境を「従来価格の5分の1」水準で構築、利用可能に
ギガらく5Gは、屋内/屋外へのローカル5G提供に対応したマネージドサービス。顧客拠点にはUPF(ユーザープレーン装置)やCU/DU、RU(無線装置)、アンテナのみを設置し、NTT東日本のデータセンターにあるSA型5Gコアと接続させることで、ローカル5G環境を構成する。
UPFを顧客拠点内に設置することで、拠点内における低遅延の通信を可能にするほか、既設のLANとも簡単に接続できる。またRUやアンテナは屋内/屋外向けに複数の種類をラインアップしており、カバーエリアの規模や設置環境に応じて柔軟に選択できる。
さらにローカル5Gの導入と運用に必要な作業を、ITアウトソーシングサービスとしてワンパッケージで提供する。具体的には導入場所の電波シミュレーションから、アンテナ/RUの配置やネットワークの設計、免許取得(支援)、ネットワークやソリューションの構築、ネットワーク運用、監視や修理サポートまでのサービスだ。
NTT東日本の試算によると、ギガらく5Gを導入し5年間運用する場合のトータルコストはおよそ2000万円(屋内設置/最小構成の場合)。これをすべて自社導入すると約1億円かかることから、従来の5分の1水準でローカル5Gが導入できるとアピールしている。
なおギガらく5Gの提供料金は、サブスクリプション(月額)型と一括払い型が用意されている。サブスクリプション型の場合は、基本利用料(税抜)が1拠点あたり月額27万9000円、屋内用RU/アンテナ(一体型)が1台あたり3万1000円となっている。工事費などの初期費用は別途かかる。またオプションとしてRUやアンテナの追加、顧客自身で免許取得する場合の支援などがある。
ローカル5Gにまつわるこれまでの課題をすべて解決する
記者発表会においてNTT東日本 ビジネス開発本部 担当部長の増山大史氏は、国内でローカル5G制度がスタートした2019年12月からこれまでの、およそ2年半の取り組みで得られた知見と課題について説明した。
NTT東日本では、2020年に東京大学と共同で実証実験施設「ローカル5Gオープンラボ」を開設したのを皮切りに、東京都/東京大学との三者協定に基づく「東京都DX推進センター」や東京都立大学におけるローカル5G環境の構築、総務省が展開する地域課題解決型実証への参画などの取り組みを行ってきた。
「ローカル5Gはプライベートネットワークの重要なパーツになっていくであろうと考え、先駆けるかたちでローカル5Gオープンラボを開設した」「(ローカル5G領域において、NTT東日本は)おそらく日本で一番多くの基地局数、多くのベンダーの基地局を取り扱ってきた」(増山氏)
一方で、ローカル5Gの活用を検討する企業からはさまざまな課題の声も聞かれるという。「コストが非常に高い」「専門知識が必要、手続きの手間もかかる」「システム監視やトラブル対応が難しい」「試験導入する手段がない、試験環境から本番環境へ拡大できない」「既存のLANにローカル5Gを追加するかたちで導入したい」といったものだ。
今回のギガらく5Gは、ローカル5Gにまつわるこうした課題をすべて解決し、ローカル5Gの普及を促すサービスと位置づけられている。
増山氏は、ギガらく5Gの特徴を大きく5つにまとめて紹介した。本稿ではすでに触れたが、「キャリアグレードの5G SA機能を、トータルITO(ITアウトソーシング)とワンパッケージで提供」「利用環境に合わせた多様なラインアップ」「従来価格の約5分の1ですべて揃う」「月額/一括払いが選べて5Gデータ通信が使い放題」「本格運用までカバー、既設のLANにもアドオン可能」という5つだ。
もうひとつ、増山氏は「ローカル5Gはプライベートネットワークの構築にとても有用だが、ネットワークだけがあっても、顧客のDX推進や地域課題の解決ができるとは考えていない」と述べたうえで、顧客企業やパートナー企業との連携もさらに強化していく方針を示した。
「われわれとしては、まず高品質で廉価なローカル5Gを提供していく。その次は『ローカル5Gはもう使える』という前提で、パートナーにさまざまなDXソリューションを開発していただきたい。顧客企業においても、先駆的な取り組みを進める際にローカル5Gを活用いただいて、産業や地域の課題を解決していただければと考えている」(増山氏)
広帯域なアップリンクが使える準同期にも対応
記者発表会ではローカル5Gおよびソリューションのデモ展示も披露された。
ギガらく5Gでは、アップリンクのスループット比率を高める「準同期TDD」モードの設定も可能となっている。一般的な同期TDD設定ではダウンリンク最大1488Mbps/アップリンク最大230Mbpsだが、準同期の場合はダウンリンク最大988Mbps/アップリンク最大466Mbpsとなる(いずれも理論値、アップリンクは2レイヤー端末のもの)。デモ展示ではアップリンクのスループットを実測しており、420Mbps超の数字が安定して得られていた。
またユースケースの1つとして、8Kカメラの高精細映像をローカル5Gで伝送し、高度な現場把握に利用するデモが紹介された。たとえばバルブの開閉状態、アナログメーターの数値確認といった設備監視や、不審者やドローンなどの侵入監視に役立てられる。高精細な映像のため拡大すれば詳細まで目視することができ、また映像をAI処理して異常検知を行ううえでもより正確な判定が期待できる。