税務署は取引先の申告で、あなたの収入を把握している
「確定申告をしていないとどうなるか」について、高橋創税理士は「不利益のほうが多い」と断言。確かに、ユージさんのように、「10%も源泉税が引かれているんだから、いいよね?」という理由から長期間、確定申告をしていない人もいます。
実際に、税務署も納税額が発生しないほど収入が少なかったりしたら、スルーしてしまうことも多いでしょうし、そのうちに本人も放置してしまうことがあります。
しかし、税務署はあなたが申告をしなくても、取引先が提出した書類などによってあなたの収入をしっかり把握しています。お金の出入金には履歴があり、どこにどうお金が流れているのか、税務署はきっちり見ていますからね。出版社、広告代理店、モデル事務所、写真スタジオ……みんな申告しているはずですよ。余談ですが、昔、無申告をしていた歌舞伎町で小さなスナックのママに督促状が来たことがあります。それは酒屋さんに税務調査が入ったからなんですね。
それでも「収入が少ないから」と放置するなかれ。習慣というのは恐ろしく、収入が増えても確定申告をしないまま「大丈夫でしょう」と放置するうちに、税務署にチェックされ、さかのぼっての課税やいわゆる罰金が課される可能性もあります。
また、組織に所属していないフリーランスにとって、収入や納税額が記載された確定申告書は信用の証。それがないことによってローンを組むとき、賃貸住宅を契約するときなどに、断られてしまうこともあるのです。
ぜひ、今年から「目を背けずに」確定申告をしてください。ひとまず、領収書は保管しているようなので、作業に取り掛かってみると簡単ですから。
監修者紹介――高橋創税理士(髙橋創税理士事務所)
1974年東京都生まれ。東京都立大学経済学部卒業。専門学校で所得税法の講師,会計事務所勤務を経て2007年に新宿で髙橋創税理士事務所を開設。税理士業の傍ら新宿ゴールデン街のバー「無銘喫茶」の経営なども行う。
著書に『桃太郎のきびだんごは経費で落ちるのか? 日本の昔話で身につく税の基本』(ダイヤモンド社,2021年)、『「知りたい!」がすぐひける 小さな会社の経理・人事・総務』(西東社,2022年)などがある。
髙橋創税理士事務所 https://takahashi-hajime.jp/
この連載の記事
- 第7回
ビジネス
【確定申告】個人事業主に税務調査「うっかり重加算税」の恐怖 - 第6回
ビジネス
【2022年提出 確定申告】医療費控除はなにが対象? 人間ドックやサプリは? - 第5回
ビジネス
【2022年提出 確定申告】税理士が驚いた! 終わらない減価償却と謎の空白 - 第4回
ビジネス
【2022年提出 確定申告】そのギャラ飲み、確定申告が必要です - 第3回
ビジネス
【2022年提出 確定申告】白紙や空の領収書は脱税? 税務署バレする? - 第2回
ビジネス
【2022年提出 確定申告】「なんでも経費」にできる? 収入の最低金額は?