Ver3.10でみるPythonの進化と今後の期待感
Pythonは2020年にリリースされたバージョン3.9以降からは、毎年新たなバージョンをリリースするという方針となり、昨年10月には予定通りバージョン3.10が無事に公開されました。
この方針になる以前は18ヵ月に1回という頻度でリリースされてきたことを思うと、予定通りにバージョン3.10をリリースできたことは凄いことだと考えています。
そして、今回のバージョン3.10のリリースは、いろいろなメディアで取り上げられたようにmatch case構文が取り入れられ、今までにないインパクトがあったバージョンアップとなりました。
また、エラーメッセージの改善も注目したいポイントです。これによってより初心者に優しく、より使いやすくなったと言えます。
個人的にうれしかった出来事としては昨年9月にscikit-learnが1.0になったことです。みんなが使っているものですし、多くの人が関連してメンテナンスされているものですので、大きな成功例の一つだなと思います。
Pythonエンジニア育成推進協会の昨年の動き
当協会としては、基礎試験の教材であるチュートリアルがバージョン3.9に対応したことによる基礎試験の問題の改定や、実践試験の準備、PythonZen & PEP 8 検定試験の公開を進めてきました。
また、経済産業省が定めたガイドライン「ITスキル標準(ITSS)」のキャリアフレームワークと認定試験・資格とのマップにおいて、基礎試験、データ分析試験ともに、「職種:ソフトウェアディベロップメント」、「専門分野:応用ソフトのレベル1」に掲載されました。
実践試験については、1月17日に記者発表したとおり、2022年春から夏にかけてベータ試験を実施し、夏から秋ころに本格的な試験をスタートする予定で準備を進めていくことになります。
2022年、Ptyhonはここが変わる
・Pythonのバージョンアップ
Pythonのリリース的には3.11が出る予定ですが、リリース内容自体はまだまだ固まっていませんので、新たな目玉機能についての発表を待っているという状況です。
とはいえ、 Pythonのスピードアップがされる予定です。どこまでスピードアップされるかはわかっていませんが大きな期待です。他には、エラーメッセージの改善は継続的に進めていくと言われていますので新たなバージョンでも適用されていくと思われます。
また、ライブラリが安定的に動き続ける点についても引き続き目指しているところだと思います。
・分析とWebの融合
機械学習の面ではこれまで手元でやって終わる世界が多かったのが、今後は結果の表現において便利なWebと融合させる流れが増えています。
もともと機械学習をPythonでしている人は多く、多少の工夫をすればWebで表現できるPythonは使いやすいため、今後はそういった用途でもより使われることが増えていくのではないかと予想しています。
・現地開催イベントが復活の兆し
この2年ほどイベントで直接会えるシチュエーションではなく、仕事面ではリモートワークが中心で会ったことがないことが普通にはなりつつあるものの、一緒に開発することは増えています。
昨年、イベントがなく集まる場がなかったのは残念なことではありますが、みんながいろんな工夫をして、新しい世の中に対応してこうとしていると思います。それはコミュニティの世界も同じで、マイナス面ばかりではない気はしています。
ただ今年はグローバル的に見ても徐々に現地開催イベントが復活しそうな兆しが見え始めています。
直近で決まっているのは1月22日のPyCon Kyushu(熊本開催)です。さらに4月末~5月頭にかけてUS PyConがソルトレイクシティで現地開催される予定になっています。これらは今のところキャンセルはないはずです。現地開催イベントができるようになれば、旧来の仲間たちが集まるのはもちろん、新しい人が参加しやすい環境ができますので、期待感を持っています。
Pythonは今後、世間で幅広く使用されていくだろうということ、そして近年ではその役割が揺らぐことはないだろうと思っています。そのため今後もより良く、より使いやすく、より分かりやすく、そして、いろんなものに対応しやすいように、年々進化していくだろうと期待しています。
執筆者:一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会 顧問理事 寺田学