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リアルとオンラインのハイブリッドで開催した今年のPyCon JP

PyCon JP2021から見るPython業界とオンラインイベントの今

2021年12月13日 10時00分更新

文● 菱沼佑香 編集●MOVIEW 清水

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 こんにちは、一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会(以下、当協会)の顧問理事の寺田学です。当協会が提供しているPython3エンジニア認定試験の試験問題策定と、コミュニティ連携を行なっています。

一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会(以下、当協会)の顧問理事の寺田学氏

 また、日本国内でのPythonの普及や開発支援を行うためのカンファレンス「PyCon JP」を開催している非営利組織、一般社団法人PyCon JP Associationの代表理事を法人の設立当時から務めています。

 PyCon JP自体は2011年から毎年開催しており、当初は座長として活動してきましたが、イベントが大きくなり、法人を設立したため、今では座長を別の方に担ってもらい、代表理事に専念しつつ、イベント開催時にはアドバイザーとして相談に乗っています。 今年のPyCon JP は、オンラインと現地のハイブリッド型で開催され、無事終了を迎えていますが、今回はこのPyCon JPのこれまでと、イベントを振り返った感想をお話したいと考えています。

PyCon JPのこれまでとPyCon JP2021での試み

 PyCon JPは座長を中心に多くのボランティアスタッフによって開催を続けており、毎回、1000人ほどが参加する大規模なイベントに成長しました。通常、イベント期間の二日間はトークとカンファレンスを行い、その前後にチュートリアルデーやスプリントデーを行なってきました。

 2019年までは現地での開催でしたが、コロナ禍の影響で2020年はオンライン開催となり、今年も現地開催は厳しいだろうという想定の下、オンラインでの準備を進めていました。

 ですが、緊急事態宣言の解除とスタッフの熱い想いで、初日の一部イベントを現地で開催し、その他のトークをオンラインで行うというハイブリッド式をとり、現地とオンラインのいずれかの参加であっても、どちらのトークも聞けるような仕組みが取り入れられました。

 現地に来られる方からは入場料をいただく形をとりましたが、30~40人ほどが来場され、オンライン含め、全体で600人ほどにご参加いただいたようです。

 開催中のコミュニケーションはDiscordによるチャットの駆使と、Ask the Speakerによる質疑応答によって、コミュニケーションが活発になるような工夫が凝らされていました。また、スタッフはスポンサーブースを順番にツアーで紹介し、参加者としても新しいものを知る機会として有益なものとなったのではと思います。

興味深かったトークはキーノート

 すべてを追い切ることは難しいほど、どのトークも興味深いものばかりでしたが、その中でも特に興味深かったのはやはりキーノートだと思いますので簡単にご紹介します。

・谷合 廣紀氏:将棋とPythonの素敵な出会い

 
谷合氏は「Pythonで理解する統計解析の基礎」という本を書いている方で、プロ棋士と大学院生の二足の草鞋でいながら、ディープラーニングの世界で研究者としてよく知られている方です。

 昨今の将棋業界は、こちらが何%勝っているという予想をしながら行う中継が主流ですし、多くのプロ棋士がコンピュータを使って研究するのが常識となっており、いまや将棋はAIなしでは語れなくなったと言えます。

 そんな中、自身でAIや将棋評価のプログラムを作り、プロにもなった谷合氏への注目度は非常に高いものです。

 現地で行われたキーノートでは、普段の将棋の話に加え、なぜAIを作ったか、作ってみてどうだったかという話をされていました。

 物静かにお話をされる方で、どれも非常に興味深いお話ばかりでしたが、同時に自分で何でも作れてしまうこの方には勝てないなと思ったのが印象的です。Pythonによる解析もですが、Electronを使用した評価用アプリを見ていると、ただひたすらに凄いなと感じました。

 ASCII.jpにこの基調講演のレポートが掲載されていますので、詳しい内容にご興味がある方はぜひお読みいただければと思います。

PyCon JP 2021で現役棋士が語るPythonとDLの胸アツプロジェクト

・Brandt Bucher / ブラント ブーカー氏の講演

 ブラント氏はPython3.10で追加された目玉機能、match case構文の機能を提案し、実装者の一人となった人物です。また、Python のコア開発者であり、現在はMicrosoftでCPythonインタープリタの速度向上を目的としたチームに所属されています。

 この講演ではなぜmatch case構文を入れたのか、その先にどんな未来があるかを聞くことができ、とても面白いものでした。

 Pythonにはずっとswitch case構文がなく、今までif elseがあるから良いと言われてきました。

 確かにオープンソースであるPythonの世界で、新しい機能を入れるのはPythonを複雑にしてしまう可能性があるため、難しいところでもあります。今回のアップデートでmatch case構文が入ったのはとても印象的な出来事でしたし、リリースされた機能を見てみれば実際に使うだろうなと思えるものでした。

 そんな注目が集まっている新たな機能であるmatch case構文の追加については、ブラント氏がその必要性を説き、みんなに認めてもらうことから始められました。実装に際しては、さらに使いやすいものに仕上げるところまでされており、その過程はとても興味深いものでした。

参加しての感想

 毎回、PyCon JPは現地に足を運んでおり、今回も現地で開催される初日はもちろん現地で過ごし、翌日はオンラインで参加するというスタイルをとりました。

 Pythonエンジニア育成推進協会もスポンサーとして出展しており、ブースではDiscordが活用されました。現地では自身も出演したCMが流され、恥ずかしい反面、「わぁ!」と現地で話題になったので、それはそれで良かったなという思い出になりました。

 昨年や今年のオンラインイベントを見ていると、現地でやってきたことをオンラインでも楽しめるようにと、スタッフが苦労しながら工夫を凝らしているなという印象を持ちました。懇親会でも非常に楽しく会話ができ、久しぶりにいろんな人と会話ができましたし、イベント通して、とても楽しめるものだったと感じています。

 その反面、現地で感じる熱量のすごさや、顔なじみとの再会、新たな出会いといった現地カンファレンスの良さを再認識するとともに、偶然性をオンラインに求めることの難しさも実感しています。

 今まで接点のなかった人と知り合い、そして友人を作るにはオンラインではなかなか難しいものですが、今後、いろんなツールを工夫して使うことで、突発的な偶然性が実現できればいいなと感じています。

 ところで、参加していたどの企業もオンラインイベントに非常に慣れてきたようにも感じました。

 スポンサーをされる多くの企業がだれかとの出会いや、自社のサービスを知ってほしいという思いからされているため、いろんな工夫が見えましたし、これからのオンライン時代を見据えた対応がされていました。

Pythonをこれから学ぶ方に

 近年、Pythonを使う人は増え、その人気は衰えを知りません。各企業のオンライン活用が進んだ今、イベントの参加によって得られる知識の幅は広がりましたし、参加者間でのコミュニケーションが取れれば、新たな仲間を得る機会にもなります。ぜひ積極的に参加してみてほしいなと思っています。

 最後にPythonをこれから学ぶ方に一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会の代表理事である吉政忠志方一言お伝えします。多くのプログラミング言語にあるお作法という「そのプログラミング言語らしく書く」という考え方がPythonにも存在しています。Pythonの場合はPythonic(パイソニック)やPython Zen(パイソンゼン)になります。Pythonもお作法を守らずに書いてしまうと、正しく動かなかったり、品質や保守性が悪くなったりします。Pythonを学ばれる方はぜひこの2点をPythonの基本として学ばれることをお勧めします。

 また当協会が提供するPython3エンジニア認定試験はPythonic(パイソニック)やPython Zen(パイソンゼン)、そして文法やデータ分析の観点で理解度をチェックできる試験として評価されています。学習のチェックにぜひご活用ください。

執筆者:菱沼佑香

IT企業(ソフトウェア開発、セキュリティ、ホスティング)で営業事務、営業、マーケティングを経験。現在は吉政創成株式会社で取材、撮影、ライターとして主に活動。月刊連載数本。

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