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DX専任部門の設置とDX実践度スコアの関係、「内向きDX」から「外向きDX」への変化など詳細を説明

2022年のIT投資は明るい? ITR「国内IT投資動向調査」を読み解く

2022年01月21日 08時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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日本企業のDX実践度、たとえ「平均点」でも安心できない理由

 自社におけるDXの位置づけについて、「全社レベルで取り組むべき最重要課題」だと考える企業は32%となり、2019年、2020年を上回った。さらにDX専任部門の設置状況についても23%が設置済みだという。

2019~2021年調査における「DXの位置づけ」「DX専任部門の設置状況」の変化

 それでは具体的にどのようなテーマのDXに取り組み、成果は上げられているのか。同調査ではDXのテーマを「従業員エンパワメント」「顧客エンゲージメント」「オペレーション最適化」「製品・サービスの競争力向上」の4分野における合計16項目に分類し、それぞれの取り組み状況を聞くとともに、それに基づく「DX実践度スコア」を算出している。100点満点で90点以上ならば「大半のDXテーマで成果が上がっている段階」となる。

 今回の調査における全体平均スコアは30.5点。スコア分布を見ると、「多くのDXテーマで企画化が進むとともに、そのうちの一部ではプロジェクトが始まった段階」(10~30点)や「多くのDXテーマでプロジェクトが実施されているが成果は上がっていない段階」(30~50点)がボリュームゾーンだ。また「一部のDXテーマで企画化が始まった段階」に該当する10点未満の企業も23%を占める。

 「DXに取り組んでいないわけではないが、まだまだ“道半ば”。企画段階だったり、社内で承認を得ている状況だったり、プロジェクトにまでたどり着いていない取り組みがまだ多いというのが、平均的な日本企業の立ち位置」(舘野氏)

 一方で舘野氏は、90点以上の企業が3%、70点以上だと8%いることに触れながら、「デジタルの市場は、進んだ企業が市場を一気に奪い取っていく。だから平均点が30点だからまだ大丈夫というよりも、確実に進んでいる会社が1桁台とはいえある」ことを認識すべき、と助言した。

「DXテーマの取り組み状況」16項目と「DX実践度スコア」

 先述したように全体では23%の企業がDX専任部門を設置しているが、DX実践度スコア別にその状況を見ると、スコア90点以上の企業では65%が設置済みだ。その一方で、10点未満の企業では設置状況も9%にとどまる。

 この結果から舘野氏は、「DX専任部門を置くべきか、IT部門に任せるべきかという議論は決着がついた。専任部門を前提に考えなければ(DX実践度で)高いスコアを出すことは難しくなる」と指摘する。

DX実践度スコア別のDX専任部門設置状況

売上が増加する企業はDX専任部門を設けている

 同調査では毎年、IT部門の人員動向とIT支出の決定権についても調べている。今回の調査では、従業員全体に占めるIT部員(正社員)比率が平均2.9%、ボリュームゾーンは「1~2%」の層だった。正社員に加えてIT子会社の社員、その他のITスタッフまで加えると6.6%となる。この数値はこれまでと大きな変化はない。

 加えて、今回は新たに「デジタル戦略遂行のための人材をどこから確保しているのか」についてもたずねている。「新卒」と「中途採用」という回答がそれぞれ約4割だが、「業務部門」や「IT部門」からデジタル化推進部門に異動するパターンも2割程度見られる。

「IT部門の正社員比率」「ITスタッフ比率」と「デジタル戦略人材の配備策」

 また「IT支出の決定権」について、どの部門がどの程度のIT予算決定権を持っているかを調査したところ、「IT部門」の39%に次いで「経営者または経営の意思決定を行う会議体」が24%、「経営企画/デジタル推進部門」が19%、「業務部門」は18%となった。

 これを売上増減別で分類すると、売上が「10%以上の増加」を示した企業群では「経営企画/デジタル推進部門」が24%と、平均(19%)を上回っている。ITR シニア・アナリストの水野慎也氏は、「売上が好調だとデジタル推進部門がしっかりと決定権を持ち、権限移譲されてIT投資を進める――という好循環があると推測できる」と説明した。

「IT支出の決定権」

「内向きDX」から「外向きDX」への拡大が始まった?

 同調査では、IT投資意向を製品・サービス分野別でもたずねている。

 新規導入可能性のある製品・サービスとして前年度からランクアップしたものは、1位の「電子契約/契約管理」や4位の「電子署名/タイムスタンプ」などだ。三浦氏は、業務効率化を主眼としたこれらの「内向きのDX」が2020年度に圧倒的に伸びた一方で、新事業/新サービス開発や顧客体験向上などを目的とした「外向きのDX」に注力し始めた兆候も見られると指摘する。

 投資増減指数を見ても、2020年度は1位だった「ビデオ会議/Web会議」が5位にランクダウンし、代わって「IoT」が1位となっている。三浦氏は「IoT、AI、5Gなど、導入済みの企業においてもより投資を増やしていくところから、これらを利用した外向きのDX、新しいビジネスをスタートさせるための投資が増えているのでは」と語る。例えばIoTとセットで利用することが予想される5Gについては、通信事業者のサービスを利用するパブリック5G、自営設備を利用するローカル5Gの両方が新規導入可能性/投資増減指数ともトップ10に入っており、IoTと5Gによる新規サービス開発のような動きがあるものと考えられる。

 さらに三浦氏は、投資増減指数の2位となった「BI/データ分析」について、「弊社でも『顧客データの分析をしたい』という問い合わせを多くいただいている」と述べる。今回の調査によって、データ分析の範囲を広げようという動きがあらためて浮き彫りになったとまとめた。

「2022年度に新規導入/投資増加が期待される上位10製品・サービス」

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