ソニーグループでは、スマートフォンの開発を通じて培ってきた通信技術や、通信セキュリティなどの社内技術や知見を活かしたリモート運転を、自動運転時代の到来を見据えた重要技術と位置づけ、従来のVISION-S 01では、日独を5Gでつないだ運転実験を実施したこと、搭載したテレマティクスシステムを用いた映像・制御信号の低遅延伝送や、監視・予測などの通信制御によって、パートナー企業とともに技術向上に取り組んできたことなどを示し、これらの成果もVISION-S 02に生かしていく考えを示した。
3つめのEntertainmentでは、立体的な音場を実現するシートスピーカーと、ソニー独自の「360 Reality Audio」に対応したストリーミングサービスにより、好きなアーティストの生演奏に囲まれているような没入感のある音楽体験ができるほか、車室内の前方パノラミックスクリーンおよびリアシートの各席のディスプレイでは、臨場感がある映像視聴体験ができるように、映像配信サービス「BRAVIA CORE for VISION-S」を搭載。さらに、自宅のPlayStationにリモート接続してゲームを体験したり、クラウド経由でストリーミングゲームを楽しめる機能を新たに追加した。
吉田会長兼社長CEOは、「VISION-S 02は、安全性、快適性、エンターテインメント性を基盤に開発した新しいプロトタイプであり、イメージングとセンシング、クラウド、5G、そしてエンターテインメントのそれぞれのテクノロジーを活用し、モビリティを再定義することができる」などとした。
2020年1月に、VISION-S 01を発表した際、吉田会長兼社長CEOは、「過去10年は、スマートフォンをはじめとする『モバイル』が、私たちの生活を根本から変えた。だが、次のメガトレンドは、『モビリティ』だと信じている」と述べ、「VISION-Sは、安心、安全な自動運転の実現を支えるイメージング/センシング技術や、最先端のエレクトロニクス技術を結集して革新的な車内エンターテインメントを具現化したプロトタイプになる。こうした取り組みが『モビテリィ』を再定義することにつながる」と発言していた。
ソニーグループにとって、EVは決して遠い領域の事業ではない。
ソニーが得意とするCMOSイメージセンサーを活用できたり、スマホ事業で培った5Gをはじめとする通信技術、映像や音楽といった車内エンターテイメントシステムのノウハウが活用できたりするほか、EV化によって、ITの活用がクルマを常に進化させる環境の実現につながり、これもソニーにとってはプラスの要素になる。
これまでのクルマは、購入したら、そのまま使い続けることが基本だったが、これからのクルマは継続的に進化し、そのためのサービスを提供する環境が求められる。ここでもソニーグループが持つ技術が活用されることになる。
吉田会長兼社長CEOは、「ソニーのAIやロボティクス技術を活用し、モビリティの可能性を追求することができる」とする。
もちろん、クルマの走る、止まる、曲がるといった基本性能や、クルマそのものの安全性、車体の量産技術の確立や、サポート網の構築となると話は別だ。このほかにも事業化した際に考えられる課題は多い。こうした取り組みをソニーグループだけでなく、パートナー企業とともにどう構築するのかにも注目される。
だが、吉田会長兼社長CEOが、世界中から注目を集めるCES 2022の会場で、自らEV事業参入を発表した本気ぶりはひしひしと伝わってくる。
「多様で革新的なソリューションを創造することができるソニーグループの特性を生かし、これを新たな領域に持ち込み、未来に向けた大胆な一歩を進めることができる」と、吉田会長兼社長CEOは語る。今後、ソニーグループが本格的に検討するEVの市場投入に向けた具体的な道筋が、どういった形で描かれるのかが気になる。
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