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前田知洋の“マジックとスペックのある人生” 第158回

いま注目される「保温カップ」 自分好みの容器を選ぶ理由とは

2022年01月11日 16時00分更新

文● 前田知洋 編集●ASCII

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働く環境の変化で保温カップが再注目

 「仕事中でもデスクから離れず、自分好みの飲み物で水分補給したい」というのは、働く人すべてに共通する、ささやかな楽しみかもしれません。

 テレワークを含め、働き方の新しいスタイルが社会に浸透したことで、保温カップや保温水筒(魔法瓶)が再注目されています。

 そんな動きをさらに加速させたのが、使い捨てのカップを避ける企業やユーザーが増えてきたこと。コロナ騒動で店内用の陶器製カップでの提供を中断するコーヒーショップもある中で、新しい試みをスタートさせる企業もあります。

 たとえばスターバックスは2021年11月から、NECソリューションイノベーターなどと共に、カップのリユースサービス「Re&Go」の実証実験をスタートさせています(東京丸の内エリア限定)。これは、保温性にすぐれたステンレス製カップをスマホを利用して借り、テイクアウトで飲み物を楽しむサービスです。

珍しいスターバックスの陶器製の保温カップ。アメリカのスタバで働く友人からのプレゼント

容器で味が変わる? マジックみたいな本当の話

 筆者が保温性のカップを使う1番の理由は、「カップの材質によって味が違うから」。なぜか同じ飲み物でも、ペットボトル、プラスチックや紙コップだと、味や香りが変わって感じるんですよね。

 そんな感覚が生まれる原因は、唇に容器が当たるときの熱伝導だといわれています。冷たい飲み物ならアルミ缶など熱伝導性のよいものは冷たく感じ、温かい飲み物なら温めた陶器などはほどよく熱が伝わり、おいしく感じるのはご存知の通りです。

 近年では「飲み物の容器の色によって味を感じる強さが変わる」、そんな研究が千葉大学から発表されました。(千葉大学のニュースリリース「飲み物の容器の色によって味を感じる強さが変わる」)。

実験に使われた容器(千葉大学のニュースリリースより)

容器の色彩による各味覚への影響(千葉大学のニュースリリースより)

 つまり、容器で味が変わる(ように感じる)というデータもあるわけです。働く環境が変化した今だからこそ、自分好みの飲み物を楽しみたいと思う人たちが、「容器」に注目するのは自然な流れかもしれません。

いろんなエピソードがある「魔法瓶」

 筆者が子供の頃は、保温カップといえば「魔法瓶」。内側がガラスで鏡面加工しているタイプがほとんどでした。落としたり、乱暴に扱ったりして、内部を壊してしまった経験があり、現在のようにステンレスやチタンの製品が登場するまで、苦手な製品でした。

 初期の魔法瓶は、「二重のガラスの間を真空にするため、電球の技術者と連携していた」というエピソードを工業高校で教わったことがあります。日本で初めて魔法瓶を生産したのは「日本電球」なので、あながち間違いではないのかもしれません。

 魔法瓶のエピソードといえば、調理器具や、かわいいゾウのロゴで知られる「象印(ZOJIRUSHI)」。会社の正式名称は「象印マホービン株式会社」。あのロゴにあるゾウのキャラクターは、「空耳アワー」でタモリさんと共演している安斎肇さんがデザイン。空耳ファンや食器マニアには、よく知られた話です。

筆者が1番使う象印のステンレスタンブラー

 いままで、いろいろなマグや保温ボトルを使ってきました。象印マホービンやサーモスなど、魔法瓶の専売メーカーのマグやボトルは保温性能が高く、一般的な2重構造のカップより優れた性能があると感じています。

 筆者が愛用する象印マホービン「SX-FA45」は、バッグなどで持ち運べる密閉型のボトルではなく、「蓋付きの保温タンブラー」というジャンルの製品(Amazon.co.jpで2498円で購入)。

筆者の愛用する、蓋付き真空断熱タンブラーSX-FA45-WM(象印マホービン)ペールホワイト。小さいゾウがかわいい

 これを愛用している理由は、車での移動が多く、車内のドリンクホルダーに挿して使ったり、カフェで「マイタンブラー」で飲み物を購入したりすることが多いからです。

 SX-FA45のペールホワイトはつや消しの白。遠目からは紙のカップに見え、それほど悪目立ちせず、小さなゾウのロゴも「空耳ファン」の筆者としてはとても気に入っています。

 保温性能も驚くほど高く、「暖房を効かせた車内で、昼の飲み物の氷が夕方でも残っている」なんてこともよくあります。さすが、真空断熱技術を使った専売メーカーの製品といった性能でしょう。

まるでマジック!? 「暗殺者のティーポット」

 最後に、マジックのような「飲み物を注ぎ分けられる、不思議なティーポット」の動画をご紹介します。(後半にタネ明かしもあります)。

 マジシャンが見ても不思議な動画ですが、このティーポットは「マジックの道具」ではなく「毒を使った暗殺用」がそのルーツだといわれています。しかし、その真偽は不明です。

 もっとも、真空断熱にジャンルのまったく違う「電球の技術」が利用されたルーツを考えれば、それほど荒唐無稽なエピソードではないかもしれません。

 皆様におかれましても、怪しい老人のデザインのティーポットでお茶を注がれたら、辞退してマイタンブラーの中身を飲むなど、ご注意いただければ幸いです(笑)。

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。

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