働く環境の変化で保温カップが再注目
「仕事中でもデスクから離れず、自分好みの飲み物で水分補給したい」というのは、働く人すべてに共通する、ささやかな楽しみかもしれません。
テレワークを含め、働き方の新しいスタイルが社会に浸透したことで、保温カップや保温水筒(魔法瓶)が再注目されています。
そんな動きをさらに加速させたのが、使い捨てのカップを避ける企業やユーザーが増えてきたこと。コロナ騒動で店内用の陶器製カップでの提供を中断するコーヒーショップもある中で、新しい試みをスタートさせる企業もあります。
たとえばスターバックスは2021年11月から、NECソリューションイノベーターなどと共に、カップのリユースサービス「Re&Go」の実証実験をスタートさせています(東京丸の内エリア限定)。これは、保温性にすぐれたステンレス製カップをスマホを利用して借り、テイクアウトで飲み物を楽しむサービスです。
容器で味が変わる? マジックみたいな本当の話
筆者が保温性のカップを使う1番の理由は、「カップの材質によって味が違うから」。なぜか同じ飲み物でも、ペットボトル、プラスチックや紙コップだと、味や香りが変わって感じるんですよね。
そんな感覚が生まれる原因は、唇に容器が当たるときの熱伝導だといわれています。冷たい飲み物ならアルミ缶など熱伝導性のよいものは冷たく感じ、温かい飲み物なら温めた陶器などはほどよく熱が伝わり、おいしく感じるのはご存知の通りです。
近年では「飲み物の容器の色によって味を感じる強さが変わる」、そんな研究が千葉大学から発表されました。(千葉大学のニュースリリース「飲み物の容器の色によって味を感じる強さが変わる」)。
つまり、容器で味が変わる(ように感じる)というデータもあるわけです。働く環境が変化した今だからこそ、自分好みの飲み物を楽しみたいと思う人たちが、「容器」に注目するのは自然な流れかもしれません。
いろんなエピソードがある「魔法瓶」
筆者が子供の頃は、保温カップといえば「魔法瓶」。内側がガラスで鏡面加工しているタイプがほとんどでした。落としたり、乱暴に扱ったりして、内部を壊してしまった経験があり、現在のようにステンレスやチタンの製品が登場するまで、苦手な製品でした。
初期の魔法瓶は、「二重のガラスの間を真空にするため、電球の技術者と連携していた」というエピソードを工業高校で教わったことがあります。日本で初めて魔法瓶を生産したのは「日本電球」なので、あながち間違いではないのかもしれません。
魔法瓶のエピソードといえば、調理器具や、かわいいゾウのロゴで知られる「象印(ZOJIRUSHI)」。会社の正式名称は「象印マホービン株式会社」。あのロゴにあるゾウのキャラクターは、「空耳アワー」でタモリさんと共演している安斎肇さんがデザイン。空耳ファンや食器マニアには、よく知られた話です。
筆者が1番使う象印のステンレスタンブラー
いままで、いろいろなマグや保温ボトルを使ってきました。象印マホービンやサーモスなど、魔法瓶の専売メーカーのマグやボトルは保温性能が高く、一般的な2重構造のカップより優れた性能があると感じています。
筆者が愛用する象印マホービン「SX-FA45」は、バッグなどで持ち運べる密閉型のボトルではなく、「蓋付きの保温タンブラー」というジャンルの製品(Amazon.co.jpで2498円で購入)。
これを愛用している理由は、車での移動が多く、車内のドリンクホルダーに挿して使ったり、カフェで「マイタンブラー」で飲み物を購入したりすることが多いからです。
SX-FA45のペールホワイトはつや消しの白。遠目からは紙のカップに見え、それほど悪目立ちせず、小さなゾウのロゴも「空耳ファン」の筆者としてはとても気に入っています。
保温性能も驚くほど高く、「暖房を効かせた車内で、昼の飲み物の氷が夕方でも残っている」なんてこともよくあります。さすが、真空断熱技術を使った専売メーカーの製品といった性能でしょう。
まるでマジック!? 「暗殺者のティーポット」
最後に、マジックのような「飲み物を注ぎ分けられる、不思議なティーポット」の動画をご紹介します。(後半にタネ明かしもあります)。
マジシャンが見ても不思議な動画ですが、このティーポットは「マジックの道具」ではなく「毒を使った暗殺用」がそのルーツだといわれています。しかし、その真偽は不明です。
もっとも、真空断熱にジャンルのまったく違う「電球の技術」が利用されたルーツを考えれば、それほど荒唐無稽なエピソードではないかもしれません。
皆様におかれましても、怪しい老人のデザインのティーポットでお茶を注がれたら、辞退してマイタンブラーの中身を飲むなど、ご注意いただければ幸いです(笑)。
前田知洋(まえだ ともひろ)
東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。
著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。
この連載の記事
-
第225回
デジタル
PCケーブルの乱れは心の乱れ! ワンランク上のケーブル取り回し術 -
第224回
ゲーム・ホビー
「温度がリアルタイムでわかるフライパン」テンプパンを使えば、料理が3倍上手くなるかもしれない -
第223回
デジタル
スーツを持ち運ぶのに便利すぎる……「SU-PACK」 ならシワをつけずにたたんで、バッグの中に収納できる! -
第222回
デジタル
ティファールの衣類スチーマー、もっと早く買えばよかった 毎日使っているほど便利です -
第221回
ゲーム・ホビー
こういうのが欲しかった! 背が高い人に「ジョセフジョセフ」のアイロン台がオススメできる5つの理由 -
第220回
デジタル
タマネギを一瞬でみじん切り! スウェーデン製「アリゲーター」は気分よく使えて掃除もラクでテンション上がる -
第219回
デジタル
家にある雑誌を並べたら幅7mに! 必要な記事だけブックスキャナー「iOCHOW K2」で読み取るのが快適でした -
第218回
デジタル
エコで省電力、超シンプルな空気清浄+加湿器「Venta LW15」の変わらないスゴさ -
第217回
デジタル
マジシャンがフィッシング詐欺の手口を解説 重要なのは「いつ、どのタイミングでウソがバレるか」 -
第216回
デジタル
秘密基地感がある! 我が家にミニダクトがある生活 -
第215回
デジタル
自宅でレーザーによる「金属の切断」「金属の着色」「サビ取り」にチャレンジしてみた - この連載の一覧へ