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Wi-Fi Allianceが説明会を開催、製品認証プログラム「Wi-Fi CERTIFIED HaLow」も発表

低消費電力で1kmの無線通信を可能にする「Wi-Fi HaLow」とは

2021年12月03日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集●大塚/TECH.ASCII.jp

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 Wi-Fi Allianceは2021年12月2日、IoTデバイス向けの新たなWi-Fiテクノロジーである「Wi-Fi HaLow」(IEEE 802.11ah、読みは“ヘイロー”)について記者説明会を開催した。Wi-Fi HaLow搭載製品の認証プログラムである「Wi-Fi CERTIFIED HaLow」が発表されている。

新しい無線通信技術「Wi-Fi HaLow」のユースケース例

Wi-Fi Alliance マーケティング担当シニアバイスプレジデントのケビン・ロビンソン氏

 Wi-Fi HaLowは、低消費電力/長距離カバレッジを特徴とする新たな無線通信技術。1GHz未満の低い周波数帯を利用するため、電波が壁などの遮蔽物を貫通しやすく、およそ1km程度の長距離通信も可能。さらに、ボタン電池駆動デバイスでも数カ月、数年にわたって使用できるという。

 こうした特徴から、Wi-Fi HaLowはIoTデバイスの無線通信(LPWA)向けとされており、屋外設置のセンサーやメーター、パーソナルウェアラブルデバイスといったデバイスにおける活用が考えられる。また、電波利用率を向上させることで、アクセスポイントあたり数千台のデバイスをサポートする点、IoTアプリケーションのために拡張可能なプラットフォームを提供できるのも特徴だ。

Wi-Fi HaLowの主な仕様と特徴

 既存のWi-Fiプロトコルを採用していることから、ネイティブでIPに対応しており専用ハブ/ゲートウェイが不要、マルチベンダー間の相互運用性、WPA3セキュリティ対応、簡単なセットアップなどのメリットも備える。

 さらに通信速度についても、1メートルの近距離では80Mbpsの高速通信を達成しているほか、1kmの距離でも150kbpsの速度を維持できるという。

他のWi-Fi規格との比較。高周波数帯を使えば通信を高速化できるが、通信距離は短く、消費電力も大きくなる

 Wi-Fi Alliance マーケティング担当SVPのケビン・ロビンソン氏は、「Wi-Fi HaLow はスピード、パワー、通信距離、通信密度、貫通性、セキュリティのすべてで強みを持っている」と述べ、他のIoT向けLPWA(低消費電力/広域無線通信)テクノロジーと比較した際の優位性を強調し、自信を見せた。

 「Wi-Fi HaLowは、他のテクノロジーよりも幅広いIoTアプリケーションに対応でき、最も優れたテクノロジーだと考えている。IoT分野では、テクノロジーに多くの選択肢があるがゆえに、逆に導入への意思決定スピードが鈍化するなど、IoTのフルポテンシャルを制限することになっている。Wi-Fi HaLowによって、そうした課題も解決できる」(ロビンソン氏)

Wi-Fi HaLowと他のIoT向けLPWAテクノロジーの比較(縦軸が速度、横軸が通信距離)

 さらにロビンソン氏は「IoTはWi-Fiにとって大切な市場になる」と述べ、まずはコンシューマーIoT領域で利用が始まるものの、その後は産業分野での利用が大きく促進されるとの予測を示した。なお、世界中で使用されているIoT接続デバイスは、2021年の138億台から、2025年には2倍以上となる300億台を超えると予測されている。

 「すでにWi-Fi HaLowのチップセットが開発されており、2022年には出荷数が1000万個を突破すると予測されている。多くのシリコンベンダーがWi-Fi HaLowの普及期に向けて準備を進めており、今後、IoTにおける活用が一気に加速するだろう」(ロビンソン氏)

 なお、IEEE 802.11ah製品の認証プログラムであるWi-Fi CERTIFIED HaLowは、米国で11月2日に米国で発表されている。

 Wi-Fi HaLowは、日本では、915~928MHz帯を利用する予定であり、さらに「総務省では来年、追加で7MHzを割り当てると聞いている。Wi-Fi HaLowに追加できるのではないかと期待している」とした。

「全世界人口が『1人2台』のWi-Fi製品を利用している」

 Wi-Fi Allianceは、Wi-Fi機器のシームレスな相互接続性実現を目的として、数百社の業界大手企業が加盟する世界的な非営利団体。日本でもソニーやトヨタ、KDDIなど100社以上が参加している。「あらゆる場所で、すべての人とモノをつなぐ」ことをビジョンに掲げており、Wi-Fiの普及と進化、発展をサポートしている。

 2000年以降、Wi-Fi Allianceが「Wi-Fi CERTIFIED」プログラムを通じて認定した製品数は6万5000以上となり、実証済の相互接続性やバックワードの互換性、業界標準のセキュリティ保護を実装した製品を認定している。

 なお、世界のWi-Fi接続製品は累計で370億台に達し、現在使用されているものだけでも160億台、1年間に発売される新製品数は40億台に及ぶという。ロビンソン氏は「全世界人口が『1人2台ずつ』のWi-Fi製品を利用している計算になる」と、その規模の大きさを説明した。

 「Wi-Fiは、全世界で年間3兆ドル以上の経済効果をもたらし、日本でも2021年には2510億ドルの経済効果を生み、2025年度には3250億ドルに拡大すると予測されている」(ロビンソン氏)

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