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夢の技術! 自動運転の世界 第41回

自動運転の基礎 その35

JR西日本とソフトバンクが目指す自動運転バスは遠くない未来に実用化される?

2021年10月23日 12時00分更新

文● 鈴木ケンイチ 編集●ASCII

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 9月27日、西日本旅客鉄道(以下「JR西日本」)とソフトバンクは、自動運転と隊列走行技術を用いたBRT(Bus Rapid Transit:バス高速輸送システム)の実証実験を開始すると発表した。開発には、JR西日本とソフトバンクだけでなく、先進モビリティ社、BOLDLY社、日本信号社など、自動運転や信号制御関連の企業も関わっている。

 このプロジェクトは、すでに昨年(2020年)3月に立ち上げが発表されている。そのプロジェクトの進行の中で、実証実験を行なうテストコースが完成したことで、今回の発表となったのだ。

今回発表されたBRTのイメージ

 そのテストコースとは、滋賀県野洲市にコース総延長1.1㎞、最大直線距離600mの周回路で、一般路とのクロスポイント(交差点)や交互通行ポイント、駅・停留所なども作られる。ここを使って、2022年春より自動運転車両を用いた隊列走行などの走行試験を開始する。試験に使う車両は、小型、大型、連節バスの3種。試験車両には、ライダー、レーダー、ステレオカメラ、路面マーカーを探知する磁気センサー、GNSS(全球測位衛星システム)、ジャイロ、車々間通信機能など、自動運転に必要なセンサーが一通り搭載されるという。試験を通じで、どれが本当に必要なのかを見極めるというのだ。

滋賀県野洲市のテストコース

 隊列走行では、先頭車両にドライバーが乗車し、後続バスは無人で運行する。営業スピードは60㎞/hを想定。バスとバスとの車間は、走行時で10~20m、停車時で1~3mだ。駅や停留所に到着したときの、車両と縁石との距離は4㎝(+-2㎝)を目指し、乗り降りの容易さを実現するという。また、車両・車内の監視システムも並行して開発する。

バスには様々なセンサーを取り付け、必要なぶんだけ残す

 JR西日本とソフトバンクは、そうした技術を、2023年をめどに確立。2020年代半ばの社会実装を目標とするとした。

 この新交通サービスでポイントとなるのは、3種の車両を自由に組み合わせるところだ。使い方次第でニーズに細かく応えることができる。具体的に例を挙げれば、大量に人を運びたい時間帯があれば、連節バスを最大4両連ねて、約500の人を運ぶこともできる。路線を広くしたいのであれば、支線を作って、そちらは小型バスを用いる。そして、メイン路線に入ったら、連節や大型バスの後に小型バスをつなげて隊列走行させるのだ。また、逆にメイン路線から支線に小型バスだけを向かわせることも可能。さらに支線に向かわせるバスにドライバーを乗せれば、そのまま一般道を走らせることもできる。様々なニーズにきめ細かく対応できるのが、この新交通サービスの大きな長所だろう。

 この新交通サービスの良いところは、低コストということ。電車ではなく、道路を走るバスなので、線路や送電線を敷設・管理する必要はない。隊列走行の追従する車両が無人なので、省力化もできるのだ。

 そして、さらに技術的なハードルが低いことも良い点。走らせるのは専用道であって、ほかの車両や歩行者、路上駐車など、自動運転を難しくする他者がいない。専用路なのだから路面にマーカーを敷設することもできる。しかも隊列走行時の先頭車両にドライバーが乗っている。完全なる無人の自動運転を目指すわけではないのだ。だからこそ、わずか2年先の2023年には技術的に目途をつけるというのも、そう難しくないだろう。

 ただし、現状では、どこの路線や自治体に導入されるのかは未定だ。既存の鉄道路線からの切り替えになるかもしれないし、まったく新しい都市への導入になるかもしれない。また、既存の鉄道との連携だけでなく、独自路線の開拓という可能性もあるのだ。

 どちらにせよ、ニーズに柔軟に対応でき、コストが安く、しかも技術的なハードルが低いというのが、この新しい交通サービスの特徴だ。導入に手を挙げる自治体や事業体が登場する可能性は高い。隊列走行を行うBRTが走り出す日は、それほど遠くないはずだ。

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筆者紹介:鈴木ケンイチ

 

 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。


 

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