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「いつ金になるの?」と聞かれながらも社会課題に向き合った

企業がSDGsに取り組むのは大変だが、そのぶん成果は大きい

文●小島寛明

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IT企業は「社会の中での役割」が大事になる

――企業としては、社会課題の解決と同時に利益も生む必要があります。そうでないと会社そのものがサステイナブルでなくなってしまうかもしれません。

 はい。ただ、口にするのは簡単でも、やり続けることは難しいものです。

 想いを持ってプロジェクトを始めても、継続するにはランニングコストがかかりますから。

 イノラボを立ち上げた当初もきつかったです。「CSRをやっているの?」とか「いつ金になるの?」みたいなことはよく言われました。

 とはいえ、企業として短期的に利益を出していくだけでなく、企業としての存在価値を中長期的に示していくことも大事だという信念もありました。それがなければ、企業がサステイナブルでなくなってしまいますから。

 IT業界は人材の流動性が高いんです。社員に気持ちよく働き続けてもらうためにも、会社が何を目指して、何をやっているのか、社会の中でどういう役割を担っていこうとしているか、メッセージすることは今後ますます大事になってきます。

 ですので、イノラボがSDGs的なテーマを意識しながら活動を続けてきたことは、大きな意味があると思っています。ある日突然、社会課題を解決しようと言い始めたわけではないからこそ、胸を張って主張ができるのです。

 もちろん、最終的にどうビジネスにつなげていくかは、永遠の課題です。でも、我々が取り組んでいることは直接事業化にならなくても、そこで培ったノウハウを展開することはできます。

  たとえば、幻肢痛の遠隔セラピーをつくって、売れなかったとしても、ノウハウは、さまざまなプロジェクトで活用できます。

 農産物の生産や流通をブロックチェーンに記録する仕組みをつくって、それがヒットしなかったとしても、ブロックチェーンのノウハウを別の企業に提案できるかもしれません。

 イノラボには様々な出口があるので、取り組みが許容されやすい土壌があるのです。もちろん、それに甘えず、活動のKPI(重要業績評価指標)をきちんと設定するなどして、関係者に納得してもらうことも大事なことです。

――近年、日本企業の研究開発費がどんどん削られ、結果として日本企業の競争力が損なわれたという見方があります。

 ビジネスを続けていると、特定の知の深化に向かう傾向があるんですよ。たとえば、当社の場合、金融ビジネスには金融の専門性、製造ビジネスには製造の専門性が求められるため、新たな知を求めていっても、どうしても同じベクトルに向かいがちです。

 でも、知の進化を深めすぎると、世の中の大きな変化や新たなビジネスチャンスを捉えるのは難しくなります。

 一歩引いた視点で見れば成長の可能性のある領域がたくさんあるのに、渦中のメンバーはそこに踏み込めないということが起こってしまうのです。

 だからこそ、オープンにつながり、幅広い知を探索しないといけないのです。

 イノラボは、まさに知の探索の組織です。継続的に成長し続けるための仕掛けとして、こういう機能が必要なのだと思っています。

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