「AYA SCORE」「まちのコイン」が目指すもの:
地方創生に「スコア」や「コイン」が使えるワケ
SDGsの文脈で、都市と地方との関係性に再び注目が集まっている。
社会課題の解決に挑戦しているイノラボは、地域貢献活動をスコア化し、都市と農村との持続的で幸福な関係を育むアプリ「AYA SCORE」を開発。2019年11月から宮崎県東諸県郡綾町で実証実験を開始している。
「地域資本主義」を提唱して、さまざまな事業を展開するカヤックは、コミュニティ通貨「まちのコイン」を開発。2019年9月に神奈川県で採択されてから、長野県上田市や福岡県八女市など、14の地域で活用されている。
AYA SCOREとまちのコインは、設計思想や誕生経緯などは異なるが、地域課題をITの力で解決したいという基本的なコンセプトは共通だ。
なぜ地方創生にスコアやコインだったのか。イノラボの森田浩史所長、カヤックの佐藤純一氏に、それぞれのサービスが生まれた背景や、都市と地方との関係性を考える上で重要なキーワードとなる「社会関係資本」や「地域資本主義」について語っていただいた。
都市と農村との持続的で幸福な関係を育むアプリ「AYA SCORE」
森田 最近、地域課題に向けて「関係人口」というキーワードをよく聞くようになりました。「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々を指す言葉です。関係人口を増やすのが大切といわれてますけども、どうやったら関係人口を増やせるんだろうと思われる方も多いと思います。
イノラボは様々な先端技術を活用して新しい未来のカタチを創るお手伝いをする組織です。積極的に地方の皆さんと関わって何か新しいことを起していくことが大事だと思っているんです。
和辻哲郎さんの風土論で「風の人」と「土の人」という表現がありますが、私たちは超「風の人」なんです。外から入ってきて、新しいことをその地で起こす。ただ、風の人だけでは新しいことを継続的に起こすのは難しい。風の人はどんどん別のところに風を起こしに行ってしまいますから。「風の人」はきっかけを作り、関係性を作り、座組を作り、といったところまでを仕立てるのが仕事なんです。その後は、土の人が地元でそれをしっかり定着させていく。そういう関係性を築いていくことがまず、関係人口を構築する上では大事だろうと。そして、風の人がすべての地方に行くことは難しいので、デジタルの力を使って、遠隔地にいてもつながっていく関係、デジタルの関係人口を増やせるといいなと思ったのです。
農水省の方とそんな話をしたとき、「地方の移住者と定住者を増やすことは長年の課題。この課題解決に、デジタルを使ってチャレンジすることができたら面白いかもね」というお言葉をいただき、それでは地域版ソーシャルスコアをやってみませんか? と提案をさせていただいたんです。
ソーシャルスコアはもともと中国の芝麻信用やアリババとかがやっている、「シェアサイクルをちゃんと返した」とか「ローンをちゃんと返済した」とかそうしたさまざまな情報に基づいて個人をスコアリングするサービスです。中国はそういう仕組みを導入したことで、住んでいる方の行動が改善しました。おたがいに信用しやすくなり、人と人がつながるようになったとも言われています。
ソーシャルスコアを関係人口の文脈に置き換えて、都市の人と地方の人がつながる1つのきっかけにできないかという着想で生まれたのが「AYA SCORE」です。