「いつ金になるの?」と聞かれながらも社会課題に向き合った

企業がSDGsに取り組むのは大変だが、そのぶん成果は大きい

文●小島寛明

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ブロックチェーンで「証明書つき野菜」

――具体的には、どんな課題に取り組んできたんでしょうか。

 たとえば、有機野菜の価値をブロックチェーンで再定義する取り組みがあります。

 有機野菜の生産者が手間ひまをかけて野菜をつくっていることは、なかなか消費者には伝わりません。そこで、「こんなにちゃんと野菜を管理しています」という記録を、生産から流通、小売に至るまでブロックチェーンに書き込んでみたんです。

 ブロックチェーンは原理的に情報の改ざんができませんから、それは「証明書つきの野菜」になります。そうして通常200円で売っている小松菜を証明書つきにして六本木で販売してみたら、市場価格の倍でも飛ぶように売れました。

 この取り組みは、その後、高級品の果物が本当に日本で生産されたのかをブロックチェーンを使って証明し、海外に輸出するプロジェクトなど、様々な領域に活用されています。

VR+リモートで幻肢痛緩和セラピー

――医療系のプロジェクトもあると聞いています。

 VR(仮想現実)ヘッドセットを使って、遠隔で幻肢痛のリハビリを支援するプロジェクトがあります。

 幻肢痛は、不慮の事故で成人後に手や足を失ってしまった人が、もともと手や足があったはずのところに強い痛みを感じるものです。

 セラピストが伴走し、鏡を見ながら手を動かすなどして、時間をかけてリハビリをするんです。しかしこの分野のセラピストは都市部に少数いるだけで、他の地域で探すのは難しい。

 そこでVRのヘッドセットを使い、たとえば右手を失った人が左手を動かすと、失われたはずの右手があらわれる。動作を続けることで、幻肢痛を緩和するというセラピーです。

 こうしたVRを使ったセラピーはすでに存在していたのですが、イノラボはVRと遠隔リハビリを両立させたシステム構築を支援しました。

 遠隔コミュニケーションのノウハウは、コロナ禍の影響もあり、さまざまな分野に転用されています。幻肢痛遠隔セラピーの取り組みを通じて育んだ技術シーズが、他のプロジェクトで活用され、ビジネスにつながっているのです。

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