「いつ金になるの?」と聞かれながらも社会課題に向き合った

企業がSDGsに取り組むのは大変だが、そのぶん成果は大きい

文●小島寛明

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「病気の木を探す」重労働をAIで軽減

――SDGsは、開発途上国の持続可能な開発も重視されています。

 インドネシアで、ゴムの木の深刻な病害の早期発見に取り組むプロジェクトがあります。

 タイヤをつくるには天然ゴムが必要です。そのため、大規模農場でゴムの木をたくさん育ててラテックスを抽出するわけですが、東南アジアのゴムの木には「根白腐病」という病害が蔓延しています。木の根が腐る病気なのですが、外観からはわからず、気づいたときには木全体が腐ってしまうというものです。

 現地の熟練した従事者が葉の色・ツヤなどを見ると、外見から病気が分かるのですが、その精度はわずか20パーセント程度。病気の可能性があると、土を掘り返して根の状態を確認しますから、かなりの重労働も生じます。

 ブリヂストンからこの課題をテクノロジーで解決できないか、と相談をいただいたのがプロジェクトの始まりです。

 実際にインドネシアの農園を訪問して、熟練者がどういうところを見ているのかを調査したのですが、従事者の判断軸は「なんとなくツヤがある」「あのへんを見ている」といった感覚的なものでした。

 それを暗黙的な状態のまま画像情報として取り込み、AIに読み込ませていったんです。様々な葉の色・ツヤの画像データを蓄積したことで、最終的には診断の精度は90パーセントを超えました。

農園スタッフの「暗黙知」をデジタル化し、病気の木をAIが発見

 これはインドネシアのブリヂストンの農園で始めたプロジェクトものですが、現在はブリヂストン以外の農園への展開も検討が始まっています。実際、ゴムの木を栽培しているのは、ほとんどが零細事業者が運営する小規模の契約農園なんです。SDGsの視点では、AIによる病害診断は、契約農園の収量向上や重労働の軽減につながる取り組みと言えます。

住民といっしょにつくるスマートシティを実験

――SDGsの17のゴールのひとつとして、「住み続けられるまちづくりを」というゴールが設定されています。

 スマートシティを住民といっしょにつくるための合意形成プラットフォーム「Decidim」に取り組んでいます。

 現在、様々な自治体でスマートシティの取り組みが進んでいますが、実際に、「遠隔医療をやりましょう」とか「自動運転車を走らせましょう」と言っても、なかなか住民はついてきません。

 自治体と住民が「どんなまちをつくっていきたいのか」とか「そのためにどんな施策を導入するのか」といった検討を、みんなでオープンに共有しながらディスカッションし、共創するための仕組みが「Decidim」です。

 これまでも、自治体が住民と対話する仕掛けとして、掲示板や目安箱のようなものはあったのですが、インタラクティブに合意をして、それを自治体の予算とひも付けて、政策として実行するものはありませんでした。

 「Decidim」では、住民から施策に関するアイデアや意見を募るだけでなく、Decidim上で施策の賛同・支持の意思表示から絞り込みまで行います。

 そうして合意が形成された施策に、行政が予算をつけて実行するのです。

 このように合意形成プロセスをオープンにしている自治体は、現時点では日本にはありませんが、今後は、こうしたことがデジタル上で簡単にできるようになると考えています。

 「Decidim」は最先端のテクノロジーを使う仕組みではありませんが、既存のテクノロジーを上手に組み合わせて課題解決を目指すものです。

 デジタルの仕組みを活用して、議員に政策判断を委ねてきた間接民主主義のあり方のアップデートにつながることを期待しています。

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