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業務を変えるkintoneユーザー事例 第117回

創業122年目の老舗が挑んだ社内業務の大改革

他社事例に学び、ロート製薬流にアレンジしたkintoneの社内浸透ノウハウ

2021年09月08日 10時30分更新

文● 柳谷智宣 編集●大谷イビサ

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まずは日報アプリからスタート 期限日を設定すると人は入力する

 この状況を打破するため、情報が集まるプラットフォームとしてkintoneを導入した。最初に紹介してくれた事例は「BPレポート」アプリ。同社では、営業職のことをBusinessPlannerの略称でBPと呼んでいるので、BPレポートはいわゆる営業日報アプリにあたる。運用ルールは、毎日書くこと、商談の記録を残すこと、それ以外の業務報告もすること、の3つだけ。画面もシンプルだ。

 商談相手の情報は別アプリの企業マスタから取得し、定性的な情報を書くフィールドを設けた。商談したブランドも、別アプリのブランドマスタからルックアップしたので、ブランドごとの商談状況も可視化され、集計も簡単にできるようになった。

日報アプリを作成し、毎日入力するなど3つのルールを制定した

「BPレポート」アプリの画面。ルックアップを活用して集計しやすく工夫している

 次に紹介してくれたのは「セット品・企画品積み上げ」アプリ。コラボ商品や限定品は常に生産している商品ではないので、担当BPがこのドラッグストアに提案するところから始まる。ファーストステップで目標数量を設定・申告し、実際の商談を経て、最終決定した責任数量を申告して、精算を行なうという流れだ。

 従来はExcelで管理していたのだが、目標数量が100個なのに、責任数量がゼロになっているケースが出た。数値だけ見ても、なぜ減ったのかがまったくわからないという。どんな相手に、どんな交渉をしてゼロ個になったのかを把握できない状態だったのだ。

「人間は不思議なもので、(責任数量を報告する)期限日を設定すると、期限日に書くのです。商談で決まる責任数量と資材の準備期間が重なるのですが、リアルタイムに商談情報がわからないので、結局目標数の上限で見切り発車して調達していました。そうすると、責任数量が目標数より下回ると、包材を廃棄するといったイレギュラーが起きていました」(柴田氏)

krewSheetとkrewDataの導入でUIにも配慮

 UIにも気を遣った。kintoneアプリに置き換える際、ユーザーの負担を最小限にするため、慣れ親しんだExcelのUIで作業できるようにしたかったという。そこで採用したのが、グレープシティが提供している「krewSheet」。Excelのような一覧を簡単に作成できるkintoneプラグインだ。

 同時にワークフローも変えた。目標数量はkrewSheet上に記入してもらうが、商談後の目標数量は「BPレポート」に書くようにしたのだ。ここは、kintoneの導入支援事業を手がけるアーセスにカスタマイズを依頼したという。BPレポートのレコードの作成日がセット品・企画品のヒアリング期間中だった場合、選択された企業とひも付けをして、対象品目が自動表示されるようにしたのだ。

 すると、責任数量を入力するのと同時に、日報で商談の経緯や合意事項といった定性報告もできるようになる。この責任数量は同じくグレープシティの「krewData」というデータ集計プラグインにより、「セット品・企画品積み上げ」アプリに反映した。krewSheetのレコード詳細画面からは、責任数量が書かれたレポートに遷移することができ、いつでも訂正報告をチェックすることができるようになったのだ。

従来のExcelではなぜ商談がうまくいかなかったのかがわからない

責任数量はBPレポートに書いてもらうが、krewDataでkrewSheetに反映されるようにした

 この2つのアプリにより、脱Excelが実現した。従来は締め切りまでわからなかった数字が毎日のBPレポートで上がってくるようになり、状況把握までのスピードが向上した。毎日BPレポートを書くので、メンバーの状況が可視化され、臨機応変に対応するチームビルディングもできるようになった。そして、部門を超えたコミュニケーションも活発化した。

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