最新パーツ性能チェック 第354回
「Ryzen 7 5700G」「Ryzen 5 5600G」を“安いRyzen”として使うのはアリ? dGPU使用時のパフォーマンスを検証
2021年09月08日 11時00分更新
より描画負荷の重い「DiRT 5」や「F1 2021」でも
L3キャッシュの容量が影響
前回は内蔵GPUのみで動くような軽量タイトルを中心に検証したため、レイトレーシングを使うような重量級ゲームは未検証だった。そこで「DiRT 5」「F1 2021」で画質を盛った時のパフォーマンスにRyzen 5000Gシリーズがどう影響するかを見てみたい。レイトレーシングが入るためハード的に対応していないRX 5600 XTは除外し、RX 6800 XTのみで検証する。
まず、DiRT 5は画質“Ultra High”とし、レイトレーシングによる影を有効とした。F1 2021も“Ultra High”設定をベースに、アンチエイリアスはTAAのみ、レイトレーシングはデフォルトの“Mid”とした。ゲーム内ベンチマーク機能を利用してフレームレートを計測している。
レイトレーシングを有効化しているのでRX 6800 XTのRay Acceleratorがボトルネックのひとつになっているが、平均フレームレートで見ると最大10%強の差が生まれた。ここでもL3キャッシュの多いRyzen 5000シリーズの方がハイエンドGPUのパフォーマンスをより良い状態で引き出せることが確認できた。
ここまでの検証をまとめると、ハイエンドGPUにはRyzen 5000Gシリーズは向かないが、性能控えめミドルクラスのGPUであるなら、Ryzen 5000Xも5000Gも大差ないといえるだろう(VALORANTのような例外もあるが)。
「Lightroom Classic」と「Media Encoder 2021」では
正反対の傾向になる
ここまではゲームの検証だったが、ビデオカードを追加した場合クリエイティブ系アプリの処理性能も変わるのだろうか? 前回も使用した「Lightroom Classic」「Media Encoder 2021」を利用して検証する。
まず、Lightroom ClassicではDNG100枚→JPEG書き出し時間を比較する。ソースの画像は調整ありのDNGファイル(61メガピクセル)100枚、それを最高画質のJPEGに書き出すが同時にシャープネス(スクリーン向け、適用量標準)も付与する。ここではビデオカードはRX 5600 XTのみで検証している。
前回の検証でRyzen 5000Gシリーズはコア数の等しいRyzen 5000シリーズのX付きモデルに対してシチュエーションによって遅いという結果がでていたが、今回RX 5600 XTを追加して比較しても、Ryzen 5000Gシリーズの不利は覆ることはなかった。
Ryzen 5000GシリーズはメモリーコントローラーなどのダイとCPUコアのダイが分離していないという構造的な優位性はあるものの、L3キャッシュを半分に減らしているため、L3キャッシュが効くシチュエーションでは不利になる傾向にある。Lightroom ClassicでRAW現像をやるなら、Ryzen 5000Gシリーズは避けた方がよいだろう。
Media Encoder 2021の検証では、「Premiere Pro 2021」で編集した4K動画(再生時間約3分)を「Media Encoder 2021」にて1本の4K MP4動画にエンコードする時間を比較する。エンコードの設定はVBR/1パスのソフトウェア(CPU)エンコード、ビットレートは平均50Mbpsとした。
Media Encoder 2021のエンコード時間もRyzen 5000Gシリーズが圧倒的に遅いことは前回の検証で判明済みだ。しかし、今回RX 5600 XTを追加して検証すると、処理時間はコア数が等しいRyzen 5000シリーズのX付きモデルと大差ないという結果になった。Ryzen 5000Gシリーズを単体で使った時にエンコード時間が極端に長くなる理由は、ビデオのデコード作業時にGPU(Adobe系アプリで言うMercury Playback Engine)を使うためだ。
ちなみにこのMercury Playback Engineをオフにすると、エンコード時間がさらに伸びるため、ある程度強力なGPUとの連携は欠かせない。

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