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今後のテレビのありようを模索するテレビマンの叫び、そこから予見するテレビの明るい未来

2021年08月23日 14時30分更新

文● 原田健

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 7月13日に「第11回 衛星放送協会 オリジナル番組アワード」の最優秀賞が発表され、ドキュメンタリー部門では「BS12スペシャル『村本大輔はなぜテレビから消えたのか?』」(BS12 トゥエルビ)が受賞した。

 同番組は、ウーマンラッシュアワー・村本大輔への密着取材を通して、テレビというメディアを見つめ直す意欲作。2013年に「THE MANZAI 2013」で優勝後、テレビの出演数が急増した村本だが、原発や沖縄の基地問題などを漫才のネタにし始めた頃からテレビ出演が激減し、2020年のテレビ出演はたった1本。テレビで見なくなった彼は、ジャーナリストさながら福島や沖縄などに足を運び、被災地の人々の生の声を聞いて回り、それらを“笑い”に変え続けていた。村本の活動を追いながら、テレビというマスメディアの存在意義と課題を浮き彫りにし、視聴者に問い掛ける。

 「THE MANNZAI 2013」で一躍有名になった村本は“早口漫才”という新しいスタイルを確立しネタ番組を席巻。さらに、“嫌われ芸人”“ゲス芸人”というキャラクターでバラエティ番組で引っ張りだこに。そんな中、2017年12月にテレビ番組で原発をネタにした漫才が話題を呼び、2018年1月に出演した討論番組での発言から村本への風向きが変わり始める。一個人の意見としての発言ながら、「テレビというマスメディアで放送するのはいかがなものか」というような空気が漂い始め、それに呼応するように村本のテレビ出演が減っていく…。

 村本自身の思いと関係者への取材を見せながら、常にテーマとしてあるのは「果たしてこの風潮は正しいのか?」という問い掛けだ。

 インターネットの普及により、エンターテインメント界に大いなる変革が起こっている昨今、常に叫ばれてきたのはテレビの存在意義についてだ。テレビが映画から“娯楽の王座”を奪ってから数十年が経ち、その王座はインターネットのものへと移行しつつある中、考え抜かれた企画、多額の制作資金、多大な影響力などテレビならではのストロングポイントを見つめ直す動きに平行して、非日常性、大衆に寄り添わざるを得ない性質、影響力が大き過ぎるゆえに制限されることなどのウィークポイントも浮き彫りになっている。

 この社会の潮流の中で、同番組が掲げたテーマはとても意味深く、今後のテレビのありようをもがきながら模索しているテレビマンの叫びのように思える。

 もちろんドキュメンタリー番組として、政治的なネタにこだわる村本の思いや信念、テレビとは別の場所で活動する意味などをとらえ、日本社会の不自由さや不十分な部分にもスポットを当てており、また違った角度の問題提起もある。

 しかしながら、慟哭にも似たこのテレビマンの叫びに、心を震わせられる者は少なくないだろう。テレビが好きだからこそ感じるテレビの問題と、それをどうにかしたいという切実な願いに、なぜだかテレビの明るい未来を予見してしまうし、衛星放送協会が主催するアワードにこの番組が最優秀賞に輝くこと自体、テレビの未来は開けていると感じられる。

 「若者のテレビ離れが叫ばれる中、テレビは“オワコン”なのか?」確固たる理由はないが、その答えは「否である」と感じさせてくれる制作者の熱い思いに触れてほしい。

【放送情報】
BS12スペシャル「村本大輔はなぜテレビから消えたのか?」
放送日時 :9月12日(日)4時~
チャンネル:BS12 トゥエルビ(無料放送)
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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