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10分間のミニ番組だからこそ宿る“美しさ”

2021年08月25日 15時30分更新

文● 原田健

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© 2021 Mystery Channel Inc.

 7月13日に「第11回 衛星放送協会 オリジナル番組アワード」の最優秀賞が発表され、ミニ番組部門では「名探偵のお弁当」(AXNミステリー)が受賞した。

 同番組は、専門チャンネルならではのミステリーの楽しみ方を視聴者に知ってもらうことを目的に、食を通じてミステリーの世界を体感し、親しんでもらいたいという思いから企画されたもの。推理小説に登場する料理にフォーカスし、その料理の再現とともに、日本人の味覚に合わせてアレンジしたレシピを紹介する。

 ミステリーと食を愛する私立探偵が推理小説に登場する料理を再現し、それを身近なレシピにアレンジしたお弁当にするという設定なのだが、“比較的自由度が高い”というミニ番組の特性を生かした「ミステリーを、食で斬る」という発想が面白い! しかも、登場する料理をただ再現するだけでなく、テーマとなった推理小説と、その歴史的背景をひもとき、当時の食文化にまで触れることで、きちんとミステリーファンの心をくすぐるポイントがあるところがにくい。

 さらに、再現した料理を日本人の味覚に合わせてアレンジするという微に入り細を穿つ番組作りは圧巻。おしゃれで落ち着いた映像と食欲を増進させる小気味良い音楽、そして必ず作ってみたくなる簡単でおいしそうな料理…。まさに計算され尽くした本格ミステリーのような趣向で、ミステリー専門チャンネルの矜持はそのままに食の魅力を伝えている。

 重厚な物語と張り巡らされた伏線、考え抜かれたトリック、予想を裏切る結末など読み応えのある長編は言わずもがな面白いが、さらっと読めて読み終わるとある種の爽快感を感じる短編もなかなかどうして独特の良さがある。それは、無駄な装飾は省きながらも、決められた範囲内で趣向を凝らして作られたものには“美しさ”が宿るからだ。

 たかが10分のミニ番組と侮るなかれ。ミニ番組だからこそ現れる“美しさ”を感じながら、制作陣の創意工夫を味わってみてはいかがだろうか。

【放送情報】
名探偵のお弁当
10月31日19時~
AXNミステリー

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