今回はまたもやAMDのCPUというか、APUの話をお届けしよう。ただしやや普段と異なる、カスタムAPUの話である。
7月16日、ValveはSteam Deckを発表した。Steam Deckの第一報はこちらに上がっているのでお読みいただくのが早いが、SNS上ではゲームギアの再来だと話題になっていた。
ゲームギアとの類似性はともかくとして、主な仕様は下の画像の通りだ。
本題はこのAPUの話であるが、その話はあとでまとめてするとして、おもしろいのはこのSteam Deckが完全にPCそのものであることだ。
標準状態では、Arch LinuxベースのSteamOS 3.0が動作し、この上でSteamが動く格好だ。ではWindows向けのゲームは? というと、このSteamOS 3.0の上で動くProtonというソフトウェアを利用することで動作する。
ProtonはもともとDXVKと呼ばれる、DirectXのAPIをVulkan APIに変換して動かすトランスレーターで、これを利用してDirectXベースのゲームをVulkan APIを使って動作できるというものだ。
またDirectX以外のAPI(つまりWin32/64 API)についてはWineという、オープンソースの互換環境で動かす形になっている。少し語弊があるかもしれないが、Proton ≒ Wine+DXVK という感じだと考えていただいても大きく間違ってはいないはずだ。
もっとも当然ながら100%互換はありえないので、中にはちゃんと動作しないものも存在する可能性はある。現時点でどの程度の不具合があるかは公開されていない(そもそもこれから確認する、というゲームの方が多いはずだ)が、ProtonのページではKnown Proton Issuesとして以下の項目が並んでいる。
判明しているProtonの問題 | ||||||
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.NET/WPF | ゲームランチャーには、.NET/WPFのようなOS依存のフレームワークではなく、Qtのようなスタンドアローン技術を使用することを勧める。ベストなのは独立したゲームランチャーを使うのではなく、ゲームクライアントのUIに機能を統合すべき。 | |||||
Media Foundation | 帯域とディスク使用量を節約するため、VP9などのコーデックを使用することを推奨する。 | |||||
アンチチート(不正対策) | ユーザー空間のアンチチートコンポーネントを使用することを推奨。コンポーネントは通常Wine環境で動作し、Windowsと同レベルの機能を提供できる。カーネル空間ベースのアンチチートは現在サポートされておらず、推奨もできない。現在ほとんどのアンチチート技術を提供するベンダーと協力して、Protonとの互換性を確保している。もし現在利用しているアンチチート対策がProton上で機能しない場合、ベンダーとValveの両方にサポートを依頼してほしい。 | |||||
アンチタンパー(解析・改変対策) DRM(デジタル著作権管理) |
一般的に、ディスク使用量とパフォーマンス最適化のために、PCプラットフォームのこういった機能の使用は推奨しない。この機能はWine環境でサポートされていれば完全に動作するが、新規タイトルのサポートに大きな時間がかかる可能性がある。 |
見ておわかりのように、これはゲーム開発者向けのKnown Issuesであって、ユーザー向けではない。まだユーザー向けのページはそもそも存在しない。
それでは不便ではないか? というユーザーは、SteamOSの代わりに任意のOSを入れることもできる。要するにWindows 10(11が入るかどうかはまだ不明)を入れられる、という話である。
もっともSteam Deckの3つのSKUのうち、64GBだとWindowsを入れたらわりとキツいことになるので、最低でも256GB版、できれば512GB版が必要と思われる。目安で言えば、32bit版で16GB、64bit版では26GBくらい占有するそうで、64GBでは40~50GBしか残らないことになる。
「それでは安いのを買ってSSDを交換すれば?」と思うところだが、“Steam Deck FAQ: 31 Big Questions Answered”の58秒目あたりで「内蔵ストレージはアップグレードできない。ただし、SDカードスロットがあるので、必要な時に必要なサイズのSDカードを装着できる」という答えがあった。
上の画像にもあるように、eMMCにしてもNVMe SSDにしても、2230サイズのM.2カードの形で提供される方式になっているようで、ただしユーザーの交換を想定していないというあたりは、例えば内部を全部バラさないと交換できないとか、そういう類になっている可能性もある。このあたりは実物を開けてみないとわからない話だが、あまり自分で交換することは想定しない方が無難だろう。
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