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SteamOSとWindows 11では性能が変わる!?Steam Deckのパフォーマンスを徹底的に検証!

2022年08月29日 11時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●ジサトラハッチ/ASCII

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 2022年8月4日9時より、AMD製カスタムAPU(Vah Gogh)を搭載したポータブルゲーミングPC「Steam Deck」の予約が始まった。最も安価な64GB eMMCモデルで6万円弱、最上位の512GB SSDモデルで10万円弱という価格設定の割高感は否定できないが、Steamのゲームを快適に遊べるという点において見るべき部分がある。

 ただ出荷時期は2022年末という話も伝わってきているため、ONEXPLAYERやAYANEOといったポータブルゲ ーミングPCのライバルに対し、どう対抗していくかに注目が集まるところだ。

Steam Deckの予約ページ。予約金として1000円が必要となる。無論購入時の価格からは引かれるし、予約を取り消せば返金される

Steam Deckの検証機。512GBのSSDを搭載した最上位モデルとなる。ただドックについては、残念ながらまだValveにもレビューできるような個体はないとの事だ

Windows PCとしての性能をチェックする

 Steam Deckのゲームパフォーマンスを見る前に、Steam Deckに搭載されているカスタムAPUはWindows環境でどの程度のパフォーマンスを発揮するのであろうか? 前回示した通りSteamOSはArch Linuxベースであるため、筆者が普段使い慣れたツールの大半が使えないし、筆者がこれまで行ったハードウェアレビューのデータとも比較しづらい。せっかくWindowsも入れられるのだから、まずはWindows 11環境で検証してみた。

 セットアップに関しては特別なことはしていない。ドライバーも公式ガイドから全て取得し、Windows上で特別な設定はしていない。

Steam Deck用のWindowsドライバーはSteamのサポートページから落とせる。全部入れても一部デバイスマネージャーに「?」マークは残るが、動作そのものに問題はない

 まずは定番「CINEBENCH R23」から始めよう。今回は特に比較を行わないが、CPU周りに関しては今年登場した廉価版Ryzenの検証記事のデータが参考になるだろう。テストは10分間の予熱時間を経てスコアーを算出する標準的なモードを使用している。

「CINEBENCH R23」のスコアー

 この数値だけでピンと来なければ以前実施したRyzen 3 4100での検証と比較するとよい。Steam DeckのカスタムAPUのCPU性能はRyzen 3 4100に対しマルチスレッドで8%程度、シングルスレッドでは10%程度下回っている。

 あちらはTDP45Wをフルに使えるデスクトップ向けCPU、こちらは最大15Wのモバイル向けAPUである。今時のメインストリームCPU基準だと非力なのは間違いないが、ローエンドCPUと比較すると案外性能は良いという印象だ。無論GPUを併用するともっと性能が下がる可能性はある。

 続いては総合ベンチマーク「PCMark 10」を利用する。ゲーミング以外の性能をみるStandard Testを実施した。

「PCMark 10」Standard Testのスコアー

 こちらもRyzen 3 4100のデータと比較すると、CPU負荷の軽いEssentialsテストグループでは割と健闘しているが、CPU負荷の重いDCC(Digital Content Creation)テストグループでは惨敗。もっともRyzen 3 4100のデータはGPUがボトルネックになりにくいようにRadeon RX 6800を選択しているので、Steam Deckの限られたグラフィック性能が足を引っ張っていると考えられる。

 ついでにPCMark 10に搭載されているバッテリーテストも試しておこう。シナリオ別(動画鑑賞やゲームなど)に応じた負荷を連続でかけ、バッテリーが切れるまでの時間を計測するテストになる。Steam DeckはゲーミングPCであるため、ここでは“Gaming”を選択した。

「PCMark 10」Battery Benchmark(Gaming)の結果。下に見えているフレームレートのグラフ(横軸は時間。左が開始時点でグレーのラインは約20分間隔)に注目

 このテストでは3DMarkのFire StrikeのGraphicsテストのシーンを延々と繰り返す。Steam DeckのAPUにとってはやや重めかつ全力でGPUを利用するので、ここで出た1時間23分というのは割とワーストケースに近い結果といえるが、リザルト下に表示されているフレームレートグラフの右端が大きく乱高下している点に注目。

 これは高負荷が連続して続いた結果、パフォーマンスが強制的に落ちていることを示唆している。よってSteam Deckで長時間ゲームをする場合は無用に負荷を上げない工夫が必要になる。即ち画質を下げるのはもちろんだが、垂直同期をオンにする、あるいはSteamOS側でフレームレートリミッターで60fpsを上限にするなど、システムの負荷を下げる工夫をした方が良いだろう。

 続いてはストレージパフォーマンスを見るために「CrystalDiskMark」を回してみよう。テスト条件はNVMeモード、1GiB×5モードで計測した。

「CrystalDiskMark」によるストレージ性能

 SATAよりは格段に高速だが、PCI Express Gen3 x4の中庸なTLC NANDのSSDといったところだ。Steam Deckが使用しているSSDは2230サイズの非常に小さなモジュールであるため、DRAM入りのような高速タイプの搭載は難しい。内蔵SSDはPCI Express x2とx4の2通りがあるが、仮に512GBのx2版と256GBのx4版でどちらが速いかまでは不明だ(一応謳い文句では512GB版の方が速いとされている)。

 とはいえ、これ以上の読み書き性能があっても、ゲームの読み込み待ち時間はそう速くはならない。まずAPU側の性能で頭打ちになると考えられるからだ。x2接続でも実用上は大きな問題にならないとValveが表明しているのはこのためと考えられる。

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