200馬力は日本の道路事情にジャストフィット
まずは街乗りから試乗開始。イグニッションを押すと、ちょっとだけ野太い音が。「お、やる気ですな」という印象。エンジンはトルクフルで、変な鼓動感とかもなく、静粛そのもの。でありながら、踏めばスムースに駆け上がるのですから「直4でもアルファのエンジンは気持ちいい」とニコニコ。足も御三家とは異なり、しなやかさの中にシッカリとした芯を感じさせる素晴らしい仕上がり。一言で言えば日本の道にピタリとあっているように思えます。
重厚さを基調とするBMW、硬質さの中に軽やかさを感じさせるメルセデス・ベンツ、柔らかな質感のアウディと表現するなら、そのすべての良い所どりがアルファ ロメオなのかもしれません。クアドリフォリオと比べると刺激的成分は少ないものの、あの上質かつ素晴らしい足の血統はそのままで、もう少し柔らかさに比重を置いたのが、このスプリントの足といえそうです。
セダンだからゆったりのんびり、という気分になりがちなのですが、ハンドリングがスーパースポーツのような切れ味が鋭く、スパッとノーズがインを向くあたりが、長兄クアドリフォリオの血そのもの。「おいおい、お前。やる気なのか?」と首都高に行くと、確かに楽しい。200馬力ですから踏んでも大したことはなく(510馬力比)、この位が日本で楽しめるいい塩梅なのかなとも感じた次第。もちろんクアドリフォリオのハイパフォーマンスな世界も素晴らしいですが、ジュリア スプリントは実に現実的で最高! もう言うことありません。御三家は素晴らしいですが、楽しめるという点では、ジュリア スプリントの方が上かも。ステアリングを握って騒ぎだすラテンの血は抑えることができないわけです。
碓氷峠をドライブ
やっぱり200馬力がちょうどいい
さて、もっとジュリア スプリントを楽しみたいと思った私。お借りしたボディカラーはアノダイズドブルーというメタリック色。ふと頭の中で、某クルマ漫画に登場するシルエイティの姿が思い浮かびました。そう、インパクトブルーです。あのクルマも確か200馬力程度で、このジュリア スプリントと同じ。なにより漫画に登場するドライバーは女性で、ジュリアという名は女性に多い名前。これは行くしかありません。漫画の舞台となった群馬県の碓氷峠へ!
明け方の5時、都内を出発。一路、軽井沢駅へと向かうジュリア スプリント。確かに運転支援系があった方がラクなのですが、なくても別に困らないことを実感。100km/hの高速クルージングも静かで快適。よくできたクルマです。
上信越自動車道の碓氷軽井沢ICを降りて、まずは軽井沢駅方面へ。そして中山道を群馬方面へ走ること数分。群馬県との県境である碓氷峠の山頂に到着。ここから約12kmの間に184のコーナーをクリアしながらダウンヒルをするというわけです。
まずはアルファ ロメオd.n.a.システムの中から、スポーツモードにあたるdを選択。シフトレバーを助手席側に倒してマニュアルモードにセット。さらにメーター表示をナビから3連メーターへと変更し準備万端。これでテンションが上がらないわけがなく、愚かな血が騒ぐのを抑えることができません。
劇中ですと1コーナーはアクセル全開でしたが、それはさすがにできない話。まずは普通に下ることにしましょう。8速あるパドルのうち、2速と3速を小刻みに変えながらダウンヒル。スポーツカー並のクイックなステアリングとそのフィールは峠道にピッタリで、もう少し車体がコンパクトなら……とは思うのですが、クルマの重さを感じることなく、次から次へと迫るコーナーをクリアしていきます。
パドルシフトはイマドキ珍しい、ラリーカーと同じステアリングボスに付くタイプ。つまりステアリングホイールをグルグル回しても、パドルの位置は変わらないわけで、常に「シフトダウンは左、シフトアップは右」に位置するから峠にピッタリ。
足も適度に柔らかく、荒れた路面でも怖さは皆無。さらに適度にロールしますから、どのタイヤに過重がかかっているのか、とてもわかりやすいのも美質。かといってロールしすぎないですから、気持ちがイイ。つまり最高! で、調子に乗って走ると、キャッツアイがあったり、大きな木の枝などが転がっていたりするので注意が必要。あくまでオトナの楽しみ方で下っていきます。というより、劇中みたいな速度は乗らないと思うのですが……。
ブレーキフィールもよく、コントローラブル。それでいて、シッカリと停まるのも◎。いつしか沙雪と名乗る女性が助手席に座って「次、インベタ。グリップで」「次、右。狭いよ」(CVかかずゆみ)の声が聞こえるような。
そして、C121に差し掛かり「入口からめいっぱい流していくよ。ガツンと一発、かましてやろうよ。この碓氷峠で一番難易度の高いコーナーで」との声が。いや無理です。出口が極端に狭い云々の前に、キャッツアイあるし対向車結構来るし。
というわけで、心臓が縮み上がるような瞬間はまったく体験することなく、名物の碓氷第三橋梁、通称めがね橋へ。ここまでくると、ほとんどゴールしたようなもの。あとはコーナー1番に向かって、緩やかな下り坂とコーナーを駆け抜けるのみ。
峠の釜めし本舗おぎのやの駐車場でドーナツターンするのみ。いや、そんなことしませんしできません。
こうして碓氷峠をアルファ ロメオのジュリア スプリントで走った私。もちろん上りも楽しみ、200馬力はちょうど良いと実感。結局3往復もしてしまい「思い出したよ。走り始めた、あのワクワクする感じ」というのがピッタリの体験でした。これがほかの御三家でも同じ思いになったのかはわかりませんが、クイックなハンドリングと、素晴らしい足、適度なパワーはウェルバランスのひと言。このバランスが、110年を迎えたクルマメーカーの力量であり、知見なのだと思った次第。なによりステアリングを握っているだけでワクワクする。やっぱりアルファ ロメオは特別なクルマでした。

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