「有明プロジェクト」「Digital CAFIS」における活用方法を紹介、「Google Cloud Day: Digital '21」
ファーストリテイリング、NTTデータがGoogle Cloudの導入事例を披露
NTTデータ:デジタル時代のミッションクリティカルな決済基盤
続いて登壇したNTTデータは、同社における「Digital CAFIS」の取り組みについて説明した。
NTTデータが運用するCAFIS(Credit And Finance Information Switching system)は、1984年から35年以上の運用実績を持つ日本最大級のキャッシュレス総合プラットフォームである。日本のほぼすべてのカード会社と金融機関、そして100万店以上の加盟店が活用しており、現在は、月間9億件を超えるトランザクションを処理する規模を持つ。
今回紹介したDigital CAFISは、このCAFISをアップデートし、デジタル社会における価値を提供するための新たな取り組みと位置づけられている。NTTデータ ITサービス・ペイメント事業本部カード&ペイメント事業部長の栗原正憲氏は、「キャッシュレスの世界はテクノロジーとともに進化している」と語り、Digital CAFIS開発の背景を説明する。
「1990年代までは店舗でのクレジットカードでの決済が主流だったが、2000年以降、インターネットの普及が本格化したためeコマースへの対応を進めた。さらに、2010年からはモバイルデバイス利用の本格化にあわせて、電子マネーやスマホ決済にも対応した。現在ではデジタル化が加速しており、リアルとネットの融合や、ペイメント業界の構造変化にも対応していく必要がある。それを実現するのがDigital CAFISだ。Digital CAFISを活用して、ペイメントエコシステム全体を発展させるエンジンを目指したい」(NTTデータ 栗原氏)
Digital CAFISでは、オープンAPIによる決済サービスを提供する「Omni Platform」と、企画開発やサービス提供、顧客管理、人材育成、事業管理などプロセスを一気通貫で提供する「Digital Platform」を構築する。さらに、価値創造主体の商品開発力の提供、安定的なサービス提供力の構築、人材育成支援にも取り組むという。
ペイメントサービスの基盤となるOmni Platformでは、「シームレスな購買体験」「多様なチャネルと決済手段への対応」の実現を目指す。統合APIとワンストップサービスを提供することで、データの集約や活用促進にも対応する。
「ミッションクリティカルなペイメントサービスに求められる高可用性、高セキュリティに加え、マーケットの変化に対応するビジネスアジリティが必要。これを実現するために、Kubernetesを活用したマイクロサービスアーキテクチャーを採用し、複数のクラウドサービスやオンプレミスを組みあわせることにも取り組んでいる。ここで重要な役割を果たしているのが『Anthos』などのGoogle Cloudの製品だ」(栗原氏)
具体的には、ビジネス課題に対応するためのデータ活用に「BigQuery」を、マルチクラウド運用にAnthosを、そしてゼロトラストセキュリティ実現のために「Chronicle」を採用しているという。
「Google Cloudを選択した理由は、ミッションクリティカルシステムを安定的に運用するうえで必要となる故障解析性や保守の柔軟性に優れていること、オープンなテクノロジースタックであり、さまざまな技術の良い部分を組み合わせて統合して顧客に最適なサービスを提供できること。オープンで、ハイブリッドな環境構築をGoogle Cloudで実現できる」(栗原氏)
また、同社 ITサービス・ペイメント事業本部 カード&ペイメント事業部 デジタルペイメント開発室長の神保良弘氏は、Digital CAFISで目指しているものは「継続的に育てることができるプラットフォームの開発」だと語った。35年以上の運用実績を持つCAFISのように、今後30年以上わたって安定的なサービス提供が行え、さまざまなサービスを創出できるプラットフォームが目標だとする。
「Omni Platformでは、さまざまな顧客と協業し、新たなビジネスやサービスを作れるプラットフォームの提供を目的にしている。またDigital Platformでは、これまでNTTデータが行ってきたウォーターフォール型の開発方法ではなく、価値創造に追随できるように、アジャイル開発を用いたSAFeによる新たなプロセスを採用した。それにマッチする人材やパートナーとの協業、プロセスの再定義を行い、開発を進めている」(神保氏)
さらに神保氏は、ほかにもさまざまなクラウドサービスを取り扱うNTTデータがGoogle Cloudを選定した理由について、「ビジネスアジリティと高可用性、高セキュリティという3つの課題を解決できるテクノロジーを選定した」と述べたうえで、次のように説明する。
「ミッションクリティカルであるペイメントサービスは、Google Cloudが落ちてしまったのでサービスが提供できないというわけにはいかない。そうした事態が発生した場合にも、オンプレミスやAWSで動かすといったハイブリッドクラウドの環境で、アーキテクチャーを選定しなくてはならない。その際に、Anthosの技術は汎用性が高く、アプリケーションの移動も容易にできる。また、ゼロトラストの考え方に基づいたアーテキクチャーという点ではChronicleが適していると考えた。Chronicleはスモールスタートでの導入が可能である点も、コストの観点から大きなポイントだった」(神保氏)
Google CloudとAnthosを活用したハイブリッドクラウドは、2021年8月~9月にはローンチが可能であり、毎年機能を追加していくという。
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