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前田知洋の“マジックとスペックのある人生” 第140回

人をダメにする家電「ふとん乾燥機」のマジックみたいな威力

2021年05月04日 16時00分更新

文● 前田知洋 編集●ASCII

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初めて買った布団乾燥機

 すべてが初めての経験でした。布団乾燥機を買うのも、使うのも、その布団で寝てみるのも……。

 筆者はデジタルガジェットも家電も大好きです。どんなジャンルでも気になる新商品が発売されると、まずウェブでチェックして、店頭で触るのがルーティンワーク。しかし「布団乾燥機」に限っては、昔から存在は知ってはいましたが、ぜんぜん興味がありませんでした。

 どうやら、筆者の電化製品の優先度は、PC、その周辺機器、ビデオカメラ、デジカメなどのデジタルグッズ(筆者はホームオフィスなので、これらも家電の範疇に入れています)。一般的な家電のカテゴリーなら、冷蔵庫、洗濯機、電気ケトル、オーブンレンジ、トースターでしょうか。このカテゴリーは、製品寿命が長めなので、購入頻度よりも使用頻度で並べました。

 もし「家電占い」とか「家電で精神分析!」があるとしたら、筆者は自分が思い込んでいた「ご自愛が大好きなタイプ」ではなく、「一生懸命働く/働かされるタイプ」なのでしょう。

 なぜなら、どの機器も「楽して時短」というよりも、「(多少面倒でも)プロみたいな成果が出る」マニアックな機種ばかりだったからです。そういえば、数年前に高価で高機能なマッサージチェアを買いましたが、あまり使っておらず、すっかり服の置き場所になってますし……。

ライフスタイルで使う家電は異なる

 布団乾燥機に興味がなかった理由として、筆者は子供の頃からベッド派だったことも挙げられます。といっても、裕福な家に育ったわけではなく、大学生までは2段ベッドと共に暮らしていました。

 大学を卒業してからは海外で暮らしていたため、布団を干すというよりは、シーツとカバーをよく交換し、ベッドパッドと布団はシーズンごとにドライクリーニングに頼む、というライフスタイル。布団乾燥機に縁がなかったんです。

 さらに、いままでの布団乾燥機のスタイルにも疑問がありました。寝る前に付属のマットを布団に入れて、ホースで繋いで、スイッチオンって、なんかスタイリッシュじゃないと思っていたんですよね。

就寝がまったく別のものに

 ところが、家電量販店を訪れたところ、なんだかスタイリッシュなフォルムの布団乾燥機を発見。象印「ふとん乾燥機 スマートドライ RF-FA20」です(実売価格1万3000円前後)。よく見ると、ホースもマットも必要ないらしく、スペックを見るとシングルサイズなら35分で乾燥させるそう。

 サイズも想像より小さく、ホースを必要としない吹き出し口は、ガンダムのエアインテーク(空気を取り入れる入り口)みたいでカッコいい。その開閉動作もメカニカルで、ガンダムファンならお約束のセリフ「こいつ……動くぞ!」を初めて呟きそうになりました。手動ですが(笑)。

ガンダムのエアインテークのような可動式の吹き出し口

 象印という企業の信用と、テレビ番組「タモリ倶楽部」の人気コーナー「空耳アワー」にレギュラー出演の安西肇さんがデザインした、象のマークもやっぱりキュート! すぐに購入を決意しました。

 さっそく使用してみたところ、「今まで買わず、使っていなかったことを後悔するレベル」の感動を与えてくれました。

 筆者は、朝方まで原稿を書いたり、仕事のスタートが夜の9時だったりと、生活のリズムが狂った人生をもう30年も続けています。海外を含め、出張も多いですし……。それが原因なのか、ベッドに入ってからの寝入りが悪く、睡眠から覚めても疲れが取れないことがたびたびあります。

ホースと専用マットがなくても、布団が膨らんで温風がマジックみたいに全体に広がります

 ところが、使い始めた初夜(?)から、ベッドに入って数分、あっという間に眠ってました。なによりも、温泉に浸かったような温かさによる「うあ……」という爽快感も至福です。

 ご存知かもしれませんが、睡眠のプロセスにおいては、体温が徐々に下がることによって入眠するそう。乾燥機で温められた寝具の温度がゆっくりと下がり、なおかつ、乾燥しているので身体が蒸れない……。これを発明した人、天才です。

買って後悔しなかったと断言できる

サイズは枕よりも2回りくらい小さい

 あまりの魔法かマジックのような威力に「こ、これは人間をダメにする悪魔の家電では……」と思うようになったほど。

 というのも、いったんベッドに入ると、その天国のような快適さから抜け出せなくなり、たぶん電話が鳴っても、玄関のチャイムが鳴っても居留守を使ってしまいそうです(筆者は朝方から寝ることも多いのです)。

 さらに、使いはじめてから、この1ヵ月ほど「布団乾燥機が壊れたらどうしよう」「後継機種が出るのかなあ」「製造中止になったら……」と心配でしかたありません。

 買って幸せになったのは確かですが、それと同時にダメ人間になってしまったのか? 

 その判断は、これをお読みの皆さまに任せることにいたします。ああ、夜が早くこないかなあ……。もうすでにダメ人間になっているのかも……(笑)。

 店頭では試せないタイプの家電なので「ぜひお試しを!」と言えないのが心苦しいですが、筆者にとっては買って後悔しなかった製品、それだけは断言できる気がしています。本当は、マジックのタネみたいに、みんなに秘密にしておくべきだったかなあ……。

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。

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