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Project PLATEAU by MLIT 第6回

東京23区から新しい世界を創るハッカソンレポート CityGMLを使ってデジタル都市の新たな活用方法を見つけ出せ

実用レベルの災害人流シミュレーションに驚き 審査員もうなる実装が続々現れた3D都市モデルハッカソン

2021年03月10日 11時30分更新

文● 重森大 編集●北島幹雄/ASCII STARTUP

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 3D都市モデルの活用方法を探る、「Project ”PLATEAU”(プラトー)」のオンラインアイデアソン・ハッカソン。アイデアソンから約1ヵ月を経て、実装モデルを競う「東京23区から新しい世界を創るハッカソン」が開催された。防災あり、SDGsあり、ゲームありと多様なジャンルからの提案が展開された。ハッカソンということで実装レベルにも注目が集まったが、いずれも高い完成度を見せ、審査員をうならせた。(アイデアソンのレポートはこちら

目の前の課題を解決する実用的なアイデアが多く、期待は大きい

 国内約50都市を対象に「CityGML」という形式の3D都市モデルを整備し、オープンデータとして公開するプロジェクト・プラトー。そのデータ活用方法を競うアイデアソン・ハッカソンイベントが開催された。

 アイデアソン開催は2020年2月、ハッカソン開催は同年3月と約1ヵ月の間隔が空いている。その期間にどこまで深掘りし、システムとして実装できるか。本イベントにメンターとして加わり各チームと向き合った、パノラマティクスを主宰する齋藤 精一氏は「ビジネスにつながる実用的なアイデアが多い」と、ハッカソン中の取材で前半アイデアソンを振り返った。

「うまくいけば実装してサービス化しようと思っているのではと思うほど、レベルが高いアイデアソンでした。ハッカソンでどこまで実装されるのか、興味を持って見守っています」(齋藤氏)

パノラマティクス 齋藤 精一氏

 ICTやIoT、スマートシティ、デジタルツインなど、言葉だけが先行していた分野において不足していたピース、すなわち実際の基盤である3D都市モデルが整備されつつある。その意味を理解している感度の高い人が参加者に多いのではないか、齋藤氏は本イベントの成果をそう読み解く。

 特にアイデアの実用性については、今すぐ解決すべき課題に取り組んでいるチームが多いと語った。

「デザインを考える人は、5年、10年先を見ていますが、一方で新型コロナウイルス感染症やSDGsなど、いますぐに解決しなければならない課題が目の前にあります。空飛ぶ自動車のような夢のある話もいいけれど、それよりも早く解決すべきことがあるのでは、と思っていました。そういう課題に取り組んでいるチームが多いのは、今回のアイデアソン・ハッカソンの特徴ではないでしょうか」(齋藤氏)

 今回のプロジェクトは国土交通省の旗振りのもとで開催されたが、今後は官民の役割分担を考えていく必要があるのではないかとも、齋藤氏は指摘する。アイデアソンやハッカソンを通じて実際のサービスにつながれば、経済効果が発生する。その分野は、民間主導で進めることができるのではないかという考え方だ。では行政は何をすべきなのか。

「この指とまれ、とイベントを行うのは民間に任せて、その“指”の元となるものを提供するのが行政の役割ではないかと考えています。今回のイベントでいえば、CityGMLのデータを作成するという部分ですね。それから、行政が担うべきもうひとつの役割は、いいアイデアが出てきたときに規制緩和を行って後押ししてあげること。これは行政にしかできません」(齋藤氏)

 アイデアソンでは大風呂敷を広げておきつつ、ハッカソンでは技術的、時間的制約から構想をシュリンクさせることは珍しくない。しかし本イベントではアイデアソンから時間が空いたこともあってか、実際のデータに触れてアイデアを深めてきたチームが多かった。アイデアソンからハッカソンでより成果物の可能性が広がっているというのは希有な経験であり、それぞれのチームの成果を楽しみにしていると齋藤氏は期待を語ってくれた。

いよいよ発表、各チームがアイデアソンから練り上げた成果に注目

 最終的にプレゼンに臨んだ12チーム。成果発表では、6名の審査員が、グランプリ、準グランプリ、奨励賞を選定。また、参加者全員が投票で選ぶオーディエンス賞も設けられた。以下、多彩なジャンルやテーマ、高レベルな実装も含めて展開された、本ハッカソンでの各チームの発表内容を、審査員のコメントとともにお届けする。

1.S3DGs「SDGs三方よしマップ(環境・社会・経済)」

 CityGMLのデータから日陰と風をシミュレートするシステムを構築。付随して、近隣エリアのSGDsイベントやテイクアウト可能な飲食店情報もマップに落とし込んだ。休日などにイベントを探して参加することでSDGsへの理解を深め、その後は日陰と風の状況を見て暖かい場所で、あるいは夏には涼しい場所でランチをとることができる。

 日陰の情報は負荷が大きいため、あらかじめシミュレートしたデータを読み込むことで表示を高速化、風のデータは気象情報を元にPython の流体力学ライブラリでリアルタイムにシミュレートしているとのこと。Vue.jsで構築されたWebアプリなので、端末を問わず利用できる。

 千代田 まどか氏から開発においてこだわった点を聞かれると、「熱中症で救急搬送されるお年寄りや子どもが年々増えているので、そういう方でも使えるものを目指しました。裏側では3D都市モデルという先進的なものを使っていますが、アプリの見た目はあえてシンプルにしています」と答えた。


2.SupraDynamism「都市空間における生態系デザインのためのサポートツール」

 植生を意図的に配置することで、生態系が持つ機能を向上できるという「拡張生態系理論」に基づき、都市の生態系を最適化したいというアイデアが元になっている。

 ハッカソンで実装したのは、植生同士がどのように影響を与え、生態系に多様性をもたらすかをシミュレートするツール。様々なパターンの植生プランをシミュレーションすることで、複雑なプランニングと集団的合意形成が必要な都市の植生計画を支援する。

 日立製作所の石丸 伸裕氏から具体的な活用方法について尋ねると、「コンビニや工場など新しい建物を作る際、どこに建物を配置し、どこに植生を配置するのがいいかシミュレータで試行錯誤して検討できる」とユースケースを教えてくれた。


3.GOLGOs「23区が生む太陽光エネルギーで電気自動車はどれだけ走れるのか?」

 変革期にあるエネルギーをテーマに据え、なおかつわかりやすさにポイントを置いて実装してきたのがチームGOLGOs。

 可視領域、面積、高さなどから、ビルが持つ太陽光発電のポテンシャルをシミュレートし、「ビルのSDGs力」として可視化。さらに発電した電気で新幹線、EV、電動アシスト自転車がどのくらいの距離を走れるのか地図上に示してみせた。

 角川アスキー総合研究所の遠藤 諭氏はこれを見て「日照からSDGs度が測られると、都市が南に向けて発展するなど新しい現象が起きるのでは」とコメント。それに対しては、「壁面の緑化やビル内での環境対策など複合的な指標を取り入れてSDGs度を測れるようにしたい」と返した。


4.良いラボ「街・建物と屋内情報を繋ぐデータビューワの開発」

 3D都市モデルは建物や道路などの都市スケールのデータを基本としており、屋内空間の再現には作りこみが必要になる。そこを補完すべく、屋内の構造情報、IoTを活用したデータと組み合わせて屋内外のデータをシームレスに閲覧できるビューワを開発した。

 地図上の建物をポイントすると、建物内の施設一覧や、データがある場合には屋内の画像などを見られる。人流データとの組み合わせでコロナ渦における3密回避のような活用方法があるのではと語られた。

 沖電気の千村 保文氏からは「3密かどうかという静的な指標だけではなく、たとえば病院内で医師や看護師、患者がどう動いたかをセンシングして感染拡大防止につなげるなど、動的なデータと組み合わせると活用が広がりそうだ」とコメントがあった。


5.しゃきるとん★せな「ヘキメン 〜建物壁面の価値創造〜」

 建物の壁面を広告スペースとして活用する際の価値をシミュレートし、定量的に比較できるようするシステムを提案。壁面に光源を設置してそれが届く範囲を試算することで、壁面広告の視認範囲を割り出している。

 ここに人流データを組み合わせることで、リーチ人数、費用対効果を計算。有名ビルを使った試算ではリーチ人数が2580万人という結果になり、広告代理店が示す同ビルのリーチ人数2700万人との誤差は約5%と高い精度を見せつけた。

 石丸氏から、人流のデータは変化するが追随できるかと問われ、「日次バッチ程度で対応可能」との見解を示した。


6.影の功労者「都市SYM 〜人もデジタルツイン〜」

 

 アイデアソンで発表した構想を大きく転換してきたのが、このチーム。都市の主役は建物ではなく人だと語り、CityGMLデータ上で人流シミュレーションを行う仕組みを構築した。

 CityGMLのデータを読み込んだだけでは交差点などの情報はないため、道路情報を画像データとして読み込み、交点を解析したうえで経路探索を行い、人の動きをシミュレート。一定範囲の人がエリア外に出るように設定してシミュレーションを行うことで、災害時に街頭エリアから避難するために要する時間や、時間的に最も遠い場所を見つけられる。

 審査員からは「実装力のレベルが高い」、「災害人流シミュレーションはすでに実用化のレベルではないか」と仕上がり具合の高さに驚きの声があがった。


7.チームLIT「〜デジタルと現実が相互作用する世界〜」

 「世界をHackableに」をキーワードに、3D都市モデルを使って現実空間にデジタル情報を重ね合わせる方法を探る。

 ハッカソンではXR空間上に情報を配置できるLit-オーサリングツールと、それをARやVRで見ることができるLit-Clientを作った。それによってどのような体験を得られるのか動画にまとめられており、効果がわかりやすかったのも印象的だ。

 石丸氏が、バードアイビューがあればナビゲーションとしての使い勝手が高まりそうだと指摘があったが、「デモンストレーションでは一瞬しか写っていないが、Lit-Clientには上空30メートルからの視点も用意している」とのこと。


8.#A8WELL11「フレア(バーチャルフリーマーケット)」

 コロナ渦でリアルイベントを開催することが難しくなっている。そこでWithコロナ/Afterコロナを見据えてオンライン、リアルの双方で使えるマーケットプレイスを提案。

 3D都市モデルから作ったバーチャル空間にシンボルを配置し、そのシンボル周辺でリアルイベントとバーチャルイベントを開催する。ブロックチェーンを使った地域貢献ポイントと組み合わせ、街にいいことをしていくとシンボルが大きくなり、街がさらに好きになる仕組みを目指す。

 国土交通省の筒井 祐治氏は「地域の取り組みをご神木というシンボルで評価する仕組みは、使い方によって面白い展開を期待させる」とコメントした。


9.チームRTG「REAL TOKYO GAME 〜東京がまるごとゲームの舞台になるプラットフォーム〜」

 CityGMLから作成したバーチャルな東京を、まるごとゲームの舞台にして遊んでしまおうと考えたのが、チームRTGだ。といってもゲームそのものの制作を目指したのではなく、ゲームをつくり、楽しむためのプラットフォームを提案してきた。ユーザーにはゲームをつくる楽しみ、共有する楽しみ、都市を舞台に遊ぶ楽しみを提供するという。

 実際に港区東麻布のCityGMLデータを元にゲームフィールドを作り、Voxelアートを作るゲームをインターネット上に展開し、審査員や参加者が体験できるプレゼンを行った。

 筒井氏はこのアイディアを東京以外の都市で展開することに興味を持ったようだ。「我が街意識の醸成や、自分たちで街を作るという楽しみを得られそうだ」と語った。


10.おとシェア「野外コンサートの音や視線が届く範囲を建築物の影響も含めて推定。ビル群の中にコンサート会場を計画。」

 アイデアソンからハッカソンまでの間に、音声SNSであるClubhouse がブレイクするなど、一気に注目を浴びるようになった音メディア。おとシェアはそこに注目し、いい音がある場所をシェアリングしたり、コンサート開催に適した場所を探したりできるシステムを考案した。

 デモではSpatialChat上にCityGMLに基づいた音場を配置し、自由に動き回りながら好きな音がある場所を探せる仕組みを構築した。

 千代田氏は「音のサービスはいまブームになっているので、ニーズにも応えられるのでは」と感想を述べた。


11.ラストワンM「ラストワンM」

 従来、バリアフリー情報は2Dのマップ上に表示され、どのフロアに多目的トイレがあるのか、車椅子で入れる入口が建物のどの位置にあるのか、わかりにくかった。そこでバリアフリー情報をARで3D表示し、利用者視点から必要な情報にアクセスできる仕組みを目指す。

 実際に豊洲市場を訪れてトイレの場所情報や、入口からトイレまでの案内動画を用意。VR空間でのナビゲーションデモが行われた。

 遠藤氏がニーズはわかるが情報収集が大変そうだとコメントすると、「位置情報ゲームなどとのコラボレーションを通じて情報を更新できる仕組みを作るなど、みんなでマップを作る世界を作りたい」と応じた。


12.TOKYO SURVIVAL「TOKYO SURVIVAL 〜 防災を「自分事」とするために」

 半数以上の人は日頃から災害対策への備えができていないと言われる。その状況を解決するために、災害をジブンゴト化するアプリを作ってみせたのが、TOKYO SURVIVALだ。

 3Dマップ上で地震や水害からの避難経路を作成、確認し、図上防災訓練を行うことができる。実際のデモでは学校の避難訓練を模して、審査員もアプリ上での避難経路作成を体験した。飲料メーカー、スポーツ用品メーカー、ゲームなどとのコラボレーションで災害訓練のモチベーションを高めたいと、マネタイズも視野に入れたプレゼンを行った。

 AR三兄弟長男の川田 十夢氏は、「リモート環境下では学校の防災訓練も実施が難しい状況。実際の避難訓練では見えない俯瞰からの情報もあり、根拠にもとづいた行動喚起ができている」と評価。また千村氏は「クルマでの避難計画ができている都市は少ないし、実際に避難訓練を行うもの困難。そういうところにも活用できそうだ」と期待を寄せた。

長期間の戦いを勝ち抜いた受賞チームはこちら!

 多くの参加者、チームの中から見事上位入賞を果たしたのは、以下のチームだ。

グランプリ 影の功労者
準グランプリ TOKYO SURVIVAL
審査員奨励賞 GOLGOs
オーディエンス賞 チームRTG

 各賞受賞者のコメントは、以下のとおりとなっている。

 影の功労者(グランプリ受賞):とても苦労したけれど、やった甲斐がありました。ハッカソンへの参加は初めてでしたが、プラトーに触れたら面白くて、ついついのめり込んでいました。

 TOKYO SURVIVAL(準グランプリ受賞):ハッカソンへの参加も、これほど長期間にわたるイベントへの参加も初めてです。チームの皆さんとの協力でいいものができてよかったです。

 GOLGOs(審査員奨励賞受賞):他のチームがみんなすごかったので、受賞できるとは思っていませんでした。大変楽しかったので、機会があればまた参加したいと思います。

 チームRTG(オーディエンス賞受賞):アイデアソンのあとにメンバーが1名増えて、なんとかブラウザ上で動くものを作ることができました。東京を舞台にみんなに遊んでもらいたいと思います。

グランプリを受賞した、チーム"影の功労者"による作品「都市SYM」のデモ映像

 開催前から注目を集め、100名を超える参加希望者が出た今回のアイデアソン/ハッカソン。3D都市モデル・CityGMLというまだまだ使い慣れてない素材をもとに、参加者は素晴らしい成果物を披露してくれた。だがPLATEAUには、ビジネスでの利用や、アートでの活用、さらにはハッカソンらしさのある遊び心のあるエンターテインメントなど、まだまだ可能性が残されている。今後もこのオープンデータを使った試みは継続される予定であり、次回開催を期待したい。

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