【後編】声優・緒方恵美さんロングインタビュー
緒方恵美さんの覚悟「完売しても200万赤字。でも続けなきゃ滅ぶ」
2021年04月25日 17時00分更新
配信プラットフォーム
「MixBox」を立ち上げた理由
吉江 また、会社の方針としてクリエイターやスタッフにお金を還元していく取り組みをスタートさせています。まず5月にスタートした「Mix Up!」というYouTube上での企画ではクリエイターがリモート収録した楽曲を発表しました。
それから、自社のオリジナル配信サイト「MixBox」を2000年4月から始動させました。
以前から自社で配信サイトを持とうということで企画が動いていたのですが、偶然コロナが重なったことで運用を前倒ししました。まだマネタイズができていない状態ではあるのですが、過去音源の配信をから始めて、徐々に新規も含めたライブコンテンツを充実させてしていく、という目標があります。先日、公式アプリも配信を開始しました。
―― 自社で費用を投じて配信プラットフォームまで作られたとは大がかりなプロジェクトですね。
吉江 まず、プラットフォームの選択肢を広げたい、という理由が1つ。自社でプラットフォームを持てれば、世界中の誰にでも自由に楽曲を届けられる、ということです。
そしてもう1つの理由は、販促イベントのためです。該当商品を購入したお客さんに特別な動画を見てもらえるシリアルコードが書かれた紙を配布しているのですが、そのシリアルにロックをかけるシステムを組み込みたかったのです。
―― なるほど!
吉江 MixBoxの運用はまだ模索中ですが、いま力を入れているのは、ライブやイベントなどの配信です。10月末に仲村宗悟さんの生配信ライブ、11月末には今期デビューした新人アーティスト8組のお披露目ライブ「ニュージェネレーションライブ」を有料配信しました。
元「レイジー」井上社長から学び
自ら運転して全国ツアーを回った
―― ちなみに、ランティスのアーティストで、緒方さんのようにご自身で配信も含めたライブを主催の形で開催されている方はいらっしゃいますか?
吉江 スタジオ収録での配信を超えて、ご自身でライブ開催までされる方となると、かなり限定されますね。ご自身で何でもやるスタイルでは、緒方さんがオンリーワンなところがあります。
緒方 私が運営周りのことまでわかるようになったのは、私が2000年に創業したてのランティスに移籍して、社長の井上俊次さんから学んだことがきっかけなんです。
井上さんご自身がバンド出身なので、私にやりたい音楽の形があるのを知っていてくださって、「じゃあ、クルマ1台とスタッフ1人つけてあげるから、自分でバンドメンバーに声をかけて、クルマで全国ツアーしてきたら?」と背中を押してくれて。それからバンド小僧みたいにメンバーとクルマを交代しながら運転して全国を回り始めました。
―― 運転までご自身で! それで運営にも詳しくなったのですね。
緒方 結果的に、詳しくならざるを得なかったのです。井上さんから学んだことは「やりたいことは、自分でコンセンサスを取ってやっていく」ということ。気になる個人ミュージシャンがいたら声をかけるとか、アーティストとして、自分でできるようになったのはありがたいと思っています。
吉江 ランティスは、2000年代にドラマCDやゲーム音源のCD化から始まった会社ですから、企画の大小はあまり問われないのです。だからお声がかかればなんでもリリースしてきましたし、たくさんのアーティストを受け入れてきました。そこはいまも変わりませんね。
ゼロからプロデュースしてお膳立てしてあげるのではなく、アーティストさんご自身がやりたいことや方向性を汲み上げて、より良い形にしてたくさんの人に届けることをゴールにしています。それはランティス全体で持っている空気感だと思います。
緒方 端的に言えば、アーティストも基本的に自分で何かをやろうとする人じゃないと、長く続けるのは難しいかもしれません。
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