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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第604回

累計1000万個の出荷を記録したvideantis AIプロセッサーの昨今

2021年03月01日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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自動車向けAIチップの市場で成功
1000万個のチップの出荷を記録

 自動運転向けAIプロセッサーの成果が、2018年のCESで発表されたv-MP6000UDXである。コンセプトは簡単で、自動運転に必要となるさまざまな処理のうち、純粋に画像処理が必要な部分は従来の機能で、認識や判断が必要な部分をAIで処理する仕組みである。

v-MP6000UDXのコンセプト。問題はvideantisのソリューションは画像をメインにしていることで、昨今のLADERやLiDARを組み合わせたSensor Fusionをどう取り扱うのかが見えないところ。このあたりは次世代製品送りになるのかもしれない

ド真ん中がディープラーニングの処理になるのは明白である

 v-MP6000UDXのコアそのものは既存のv-MP4000HDXシリーズの延長にあり、最大256コアまでできるという、いわば力業である。

目を引くための発表とは言え、「畳み込みニューラルネットワークの実装」はさすがに言い過ぎではないかと思う

 コアそのものはv-SP(v-2000SPの延長と思われる)と、v-MP(v-2000MPの拡張版)から構成されるという構図は同じであり、主な変更点はそのv-MPに畳み込みニューラルネットワーク向けのアクセラレーターを追加したことである。

コアはv-SPとv-MP構成でされる。v-SPが、2つ前の画像で言うところのImage processingとVideo codingを担うものと思われる

問題はこの図に畳み込みニューラルネットワーク向けのアクセラレーターが記載されていないこと。Dual-issue VLIW/SIMDとあるあたり、おそらくVector exec unitの中にアクセラレーターが統合されている(Vector exec Unitを改造して8bit×64あるいは16bit×32の演算を可能にした)ものと思われる

 8bitで64MAC/サイクルなので、仮に256コアでは16384MAC/サイクルとなる。CentaurのAVX-32768も真っ青な性能である(256コアだと131072bitを同時に処理できるからだ)。さすがにこれは理論上可能というだけで、実際はもっと少ない。後述の例では16コアあたりがリーズナブルな構成とみなされているようだ。

 ソフトウェアについては、主要なネットワークのフレームワークをv-MP用に変更する、畳み込みニューラルネットワークのマッピング用ソフトがv-CNNDesignerとして提供され、これを利用して実行させることになる。

推論専用なので当然これで十分ということになる。自動運転ではまた独自のネットワークが利用されている可能性は高いが、当然そうしたものへの対応はされているだろう

 実際いくつかの例が示されているが、16コア程度のv-MP6000UDXで無理なく処理ができているとする。

スマートリアビューカメラの例。15コアで必要な処理ができるとしている

ドライバモニタリング(自動運転の際によそ見したり、眠ってたりしないかを検出する)の例。こちらは14コアで実現可能

 もちろんこれでいきなりLevel 4の自動運転をしろというのは無理であるが、こちらはまだそもそもアルゴリズムが確立できていないし、必要ならさらにコア数を増やすことで演算性能は上げられるので、機能的に足りないわけではないだろう。

 拠点をドイツに置いていることもあり、早くから自動車業界に食い込んでいたというアドバンテージもあって、2019年にはKI-FLEXという自動運転チップに採用され、今年2月15日には1000万個のチップの出荷を記録したというあたり、videantisはうまく顧客をつかんで自動車向けAIチップの市場で存在感を出している。

 アーキテクチャー的にはそれほど凝ったものではないのだが、むしろそれが(ある意味保守的な自動車業界向けとして)功を奏しているのかもしれない。

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