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最新ユーザー事例探求 第55回

予算や決算のデータと事業内容の情報を一元化、市民や民間事業者にもわかりやすく共有する取り組み

国も注目する柏崎市「デジタル予算書」、行政を中から変えるDXの先行事例

2021年03月02日 08時00分更新

文● 指田昌夫 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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画面を横スクロールさせない、インターフェースに最大限の工夫

 デジタル予算書の開発にあたって柏崎市が求めたのは、市民/市職員/市会議員など誰もがすぐに使える「徹底したわかりやすさ」だった。そのためウイングアーク1stでは、通常製品が持つ機能だけでなく一部カスタマイズ機能も用いて、極力わかりやすいインターフェースになるようにした。たとえば、画面の横スクロールが生じないように表示幅を制御したうえで、文字も最大限大きくしながら、1画面の中で必要な情報をどう表示するか、といった工夫をこらしたという。

 たとえば河川の改修事業の説明画面を見てみると、工事を実施する場所の情報などとともに「改修前」「改修後」の2枚の写真が表示されていて、どういう事業なのか一目瞭然だ。ウイングアーク1stでは、表示する画像の大きさや、1画面内に収めるための配置などを、これまでのMotionBoardのノウハウを生かして最適化した。MotionBoardの開発チームにはインターフェースのデザインを専門に設計するメンバーもおり、画面の色合いやフォント設定など、行政のシステムとして何がふさわしいかを検討して開発を進めたという。

 「検索窓に『道路修繕』と入れるだけで、どこでどんな工事をするのか、誰にでもわかります。こういうものは、これまでありませんでした。行政の予算がキーワードで検索できるシステムは、画期的だと思います」(ウイングアーク1st 宮尾氏)

デジタル予算書の画面例。市総合計画の基本方針/施策との関連や、実際の事業内容説明がわかりやすくまとめられている。「財源情報」タブをクリックすれば、予算や決算のデータ(グラフ表示)に切り替わる

 今回の予算書はPCやタブレット端末で最適に表示されるように設計されているが、スマートフォン向けのインターフェースを求める声もある。予算書という性格上、スマートフォンの小さな画面でどう見せるのが最適化なのか、実用性を含めて対応を考えているところだと語った。

行政DXの先駆事例として 他の自治体や国も注目

 デジタル予算書の一般公開からまだ1カ月も経っていないが、すでに市民からも反応が出ている。特に、事業の説明が現場の写真やグラフ付きで表示され、わかりやすいという声が届いており、市役所としては当初の目的を達成した手応えを感じている。同時に、音声読み上げなど機能面での要望もあり、今後も市民からのフィードバックを参考にして改善を続ける方針だ。

 デジタル予算書はこれから本格運用のフェーズに入る。現状では、URL情報など各部署ごとに掲載内容の認識にばらつきがあるので、共通のルールを定めていきたいと板谷氏は語る。事業紹介の画像、イラストについても、説明としてふさわしいものかを精査し、さらにブラッシュアップしていく。

 4月以降の新年度になると事業評価の入力も始まる。若月氏は、これまで各部署が別々に行ってきた業務が、デジタル予算書プラットフォームへの入力に統一されることで、業務の標準化と効率化が進むことに期待している。

 「例年6月ごろに前年度の評価が始まりますが、今回からデジタル予算書に入力してもらうことになります。そのとき、現場の職員にも予算と事業が一体管理されていることの意義がわかり、業務効率の改善を実感してもらえるのではないかと期待しています」(若月氏)

 これまで、多くの市役所業務は各部署の“縦割り”で進められてきた。しかし、たとえば新型コロナウイルスへの対応など、複数の部署に関係があり、なおかつ迅速な対応が求められるような業務が増えている。デジタル予算書を通じて庁内の情報共有が進めば、部署間の連携強化も期待できる。

 柏崎市が全国に先駆けて開発したデジタル予算書は、他の自治体からも注目を集めている。すでに東京都財務局や千葉県市川市、神奈川県山北町から問い合わせがあったほか、中央省庁の総務省や経済産業省も興味を示しており、システムの説明をしたという。柏崎市では、他の自治体や国との積極的な情報交換によってシステムを改善し、デジタル行政の横展開を進めていきたいと考えている。

将来的には、政府も推進するEBPM(証拠に基づく政策立案)実現の基盤として活用していく方針だ

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