なぜ春のアップデートもアップデートの方法を変更したのか?
Microsoftは、昨年公開したWindows 10Xのデモビデオで、Windowsのアップデートが短時間で可能なことをデモした。Windows 10Xの1つの売りなのだと考えられる。それでも現在のサービステクノロジーでは、数秒というわけにはいかない。しかし今後は、アップデートでWindowsが1時間以上も利用できないといったことは減っていくのではないかと考えられる。
19H2、20H2と2回の秋のアップデートだけが先行してサービステクノロジーによる方法が採用されていたのは、おそらくはテストの意味合いもあったのであろう。そのために機能を抑えるなどの制限をかけながら、広く一般ユーサーも含めて、サービステクノロジーによる機能アップデートを評価したのだと思われる。
実際、19H2の変更点は比較的小規模だったが、20H2には多数のアップデート項目があった。これには、すでにDev Channelで新機能がプレビューされており、新機能自体のユーザーの反応などについては、あらためて調査する必要がないということもあるだろう。実際に新機能として登場したものの、最終版になる前に引っ込めたものもいくつかあった。
また、機能アップデート時に起きやすいトラブルに関しては、AIなどを使った予防策が講じられており、問題を発生しそうなハードウェアや環境に対しては、トラブルが解決するまでは、アップデートされないという「安全装置」がある。もっとも、安全装置が効き過ぎて、筆者の手元にあったマシンには、20H1がインストールされないまま20H2のアップデートが始まったものもある。AIによるインストールの自動的な可否判断は、過剰な部分はあるのだろうが、ある程度は事故も防いでいるのだと考えられる。
サービステクノロジーを用いたWindows 10のアップデートの導入を進めてきたのは、いくつかの理由が考えられる。1つは、大規模なWindowsの改修が減ってきたことにある。
19H1と19H2、そして20H1から20H2にかけて、カーネルの変更が緩やかになった。実際、今回の21H1ベータ版のカーネルサイズは、20H2の最新アップデートとカーネルのファイルサイズが同一である。カーネルのファイルサイズは、カーネルのソースコードの変更に応じて変化する。増えることもあれば、減ることもある。しかし、ソースコードに何らかの変更があれば、バイナリのファイルサイズには多少は変化は出るはずだ。
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20H1、20H2、21H1のカーネルファイルサイズのグラフ。これらのカーネルサイズは連動しており、ほぼ同じ(サイズ)のカーネルが使われている。21H1のプレビュー版のカーネルも20H2の最新版のカーネルとほぼ同じ
そこでWindows 10のプレビュー版と正式版およびそのアップデートのカーネルサイズを調べて見ると、リリース系列ごとに大まかなグループを形成している。
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Windows 10のRS5から21H1、そしてDev Channelのプレビューのカーネルファイルサイズ。グラフは各世代の最初を左端としてプロットしたもので、時間軸に並べたものではない。それぞれで同程度のカーネルファイルサイズであり、グループを作っている。これを見ると、Dev Channelのプレビューは、Beta Channelの特定リリースを想定したプレビューとはまったく違っていることがわかる
2019年のリリース(19H1、19H2)、2020年のリリース(20H1、20H2)および、Dev Channelで公開されている半年ごとのリリース(MN、FE、COの各リリース)は、カーネルサイズの変化をグラフ化すると複数のグループにわかれる。同じ年度のリリースは、春のバージョンと秋のバージョンでアップデートも含めて一定の範囲になる。これは基本的なソースコードが同一で、変更点がさほど大きくないからだが、20H1は、正式版のリリース直後に大きく変動し、そこからの変化は小さくなっている。
また、DevChannelの場合、半期ごとに大きくリリースが異なり、ビルド番号が不連続になる。このグループのカーネルサイズは、2019年、2020年のリリースとも大きく違う。異なったバージョンのカーネルがベースになっていると考えられる。Dev Channelは、特定のリリースには対応しないと言われているが、カーネルサイズの変動は大きく、カーネルに対してさまざまな変更が加えられているようだ。逆に言えば、特定のリリース向けではないため、安定性を求める必要がなく、カーネルの変更が容易なのだと考えられる。
2021年のWindows アップデートはどうなる?
春のアップデートは、サービステクノロジーによるアップデートになるが、秋のアップデートに関しては、特に発表された話はない。可能性としては、春と秋のアップデートが入れ替わって、秋のアップデートが大規模なアップデートになる可能性もある。
また、OS自体とは独立したタイミングで標準機能を更新する「Windows Feature Experience Pack」によるアップデートがWindows Updateで一般向け配布が始まる可能性もあるだろう。標準搭載アプリなどは、Microsoftストア経由に切り替わりつつあるが、そのアップデートに関しては、ほとんど制御ができない。曜日や日時を決めてアップデートできるようにして、週末の間にアップデートするぐらいにはなってほしいところだ。結局、Windowsは、「いつもアップデートしてる」ということか。
最後の2段落について、内容を修正しています。(3/6 21:00)
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