1月からWindows 11 Ver.24H2の配布対象が拡大
さて、2025年のWindowsはどうなるのだろうか?
まずは、現状を確認したい。以下の表は、現在のWindows 10~11とプレビューの状態を示すものだ。
Windows 10は、計画どおりに今年10月でサポートが終了する。Windows 11には、21H2~24H2の4バージョンがあるが、21H2は完全に終了。22H2は、一般消費者向けのPro、Homeエディションは終了、Enterprise、Educationエディションが2026年10月で終了する。
現行バージョンは23H2と24H2の2つで、23H2は今年11月で一般消費者向けエディションのサポートが終了する。24H2は、昨年10月に正式版(RTM)となった。
24H2はトラブルがまだ落ち着かず、セーフガード・ホールドが残る。しかし、今年1月20日の週から配布対象が拡大。Windows 11 Ver.23H2/22H2が稼働しているHome、Proエディションは自動的に更新プログラムを受け取るようになる。また、Windows 10 Ver.22H2が稼働しているマシンも配布対象である。
2021年に登場したWindows 11は、前バージョンから大きく刷新されたWindows 10とは、ほぼ“地続き”の製品であり、リリース番号などに「10」が残る。Windows 11の「11」は、バージョンを表すのではなくて、製品名の一部なのである。
ただし、Windows 11は、プロセッサの世代で明確な境界が指定された。従来のWindowsでは、コア数やクロック、メモリといったスペックで対象ハードウェアを指定していたが、Windows 11から、具体的なプロセッサ名が指定されることになった。
Windows 11では、バージョンアップを年1回としたが、新機能の追加は、毎月のWindows Updateの範囲内ですることにした。一方のWindows 10では、バージョンアップは年2回あったが、新機能の追加はそのタイミングに限られていた。それでは、ユーザー側に“積極的”にバージョンアップをしてもらう理由がない。
その結果としてWindows Updateは、仕事が中断されるだけの“つまらない”ものにしか見えなかった。それゆえ、Windows Updateは、Windowsの欠点とさえ言われるようになった。同時期に登場したGoogleのChromebookでは、バックグラウンドでファイルを更新し、短時間の再起動処理だけでバージョンアップができ、これをメリットとして宣伝した。
おそらくマイクロソフトも、新機能を一種の「インセンティブ」として短い間隔で投入すべきと考え始めたのだと思われる。Windows 10の開発末期には、本来は大規模になるバージョンアップのファイル更新を、複数のWindows Updateで分散し、最後に「イネーブラー」を使って有効化する仕組みを導入して現在に至る。
今後のWindowsのプレビューにも変化あり
今年の1月31日には、Windows 11 Ver.24H2のDevチャンネル・プレビュービルドがBetaチャンネルで提供開始された。これまで、Betaチャンネルは、Windows 11 Ver.23H2のアップデートのプレビューのみを提供していた。
Windows Insider Programには、プレビューを配布する「チャンネル」が4つある。
24H2のプレビューに関しては、役割の変更があった。ただし、リリースプレビュー・チャンネルの役割には変更がなかった。現状、23H2と24H2で独立して配布されている。このチャンネルは開始時のバージョンのプレビュー版を更新し続ける。
Windows 11 Ver.24H2のプレビュー版では、Windows Insider Programのチャンネル構成に変わった。24H2のプレビューは、Devチャンネルでなされ、Betaチャンネルは23H2のアップデートのプレビューに留まった。さらに24H2以降のWindowsのプレビューチャンネルとしてCanaryチャンネルで、24H2のベースになる26000番台のビルドがプレビューされた。
こうした従来とは違うチャンネルの使い方になった理由については、公式な説明はない。しかし、プレビュービルドの番号などを見るに、本来24H2になる予定だったビルドを捨て、その次のWindowsとして予定されていたDevチャンネルでプレビューしているビルドを24H2としてリリースすることにしたのだと考えられる。
Devチャンネル以上は1回開始すると、Windowsをクリーンインストールしないと正式版に戻れない。各チャンネルでプレビューするバージョンを大きく組み替えると、混乱が生じると考えたのだろう。
ただし、その後の24H2のプレビューからは、一時的にDevチャンネルとBetaチャンネルのビルドを同じものにして、その間にユーザーが選択するチャンネルを切り替えることが可能になった。前回は、この方法を使って、Betaチャンネルを選択しているユーザーにDevチャンネルへの切り替えを可能にしている。今回の措置もこれを利用したものだ。
前述のようにWindows 11では、累積的なアップデートに新機能追加が加わる。このため、事前のベータテストは必須だ。これまで、24H2のベータテストは、Devチャンネルでなされていた。
31日以後、Devチャンネルのユーザーは、Betaチャンネルに切り替えることが可能になり、現状のBetaチャンネル(23H2)を利用していたユーサーは、24H2への切り替えが可能になる。
これが意味するところは、Devチャンネルで別バージョンのプレビューが開始されるからだ。要するに、今年後半に出荷予定のWindows(ここでは仮に25H2としておく)のプレビューが、春くらいから始まるはずだ。こうしてWindows Insider ProgramのBetaチャンネルは、本来の役割に戻ると考えられる。
なお、2月末までは、DevチャンネルからBetaチャンネルへの移行が可能だという。それまでは、Devチャンネル(24H2)とBetaチャンネルは同じプレビュービルドを受信する。ただし、現状、23H2のBetaチャンネルを受信している場合には、23H2/24H2両方のプレビュービルドが報告され、ユーザーが選択可能になる。

原稿執筆時点では、23H2のBetaチャンネル・プレビュービルド(22635.4830、Winver.exeの表示)では、Windows 11 Ver.23H2のベータ版プレビュー(10.0.22635.4870、中央の項目)と24H2のDEV/ベータチャンネル・プレビュー(26120.3073、その下の項目)の2つが選択できる状態になっている。この時点では、24H2のDevチャンネルからBetaチャンネルへの移行が可能
Canaryチャンネルでプレビューされている27000シリーズのビルドは、今年後半に配布される25H2のプレビューを兼ねている。3月には、27000シリーズにつながるプレビュービルドがDevチャンネルでプレビューされることになり、Canaryチャンネルには、28000番台など、より大きなビルド番号を持つプレビュー版が配布されるはずだ。
Windows 11 Ver.24H2でのCopilot+ PC向け機能では
アーキテクチャが異なる3社のNPUへの対応に手間取った!?
Windows 11 Ver.24H2には、Copilot+ PC用の機能と、そうでない一般ハードウェア向けの機能が混在している。また、IntelやAMDからもCopilot+ PCに対応したハードウェアが登場しているが、それぞれNPUのアーキテクチャが異なる。このため、3社(Qualcomm/Intel/AMD)のNPUで動作するソフトウェアの開発は、従来よりも手間がかかることが想定される。
こうした背景もあり、24H2のプレビューを早期に開始したのだと思われるが、それでも、導入に手間取っている感じがある。毎年10月頃のWindows 11のバージョンアップ時期とCopilot+ PCの導入時期(Snapdragon版のみ2024年6月に先行して発売)を同期させれば、もう少し開発時間を確保できたのではないかと思われる。さらにいえば、Intel/AMDのCopilot+ PCの導入も足並みを揃えた方が良かったのではないだろうか。

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