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まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第67回

〈前編〉アニメの門DUO 数土直志氏×まつもとあつし対談

アニメ市場は拡大も「アニメ格差社会」が発生か!?

2021年02月11日 18時00分更新

文● まつもとあつし 編集●ASCII

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コロナ禍はアニメに何をもたらしたのか?

まつもと 私はアニメ産業イノベーション会議(ANIC)というNPOを運営しておりまして、2020年4月にNPO主催で生配信した際には「経済自体が大変な打撃を受けるのでアニメ業界にも逆風が吹くから警戒すべき」というお話をしました。ところが実際は、全体的には非常に好調でした。いわゆる「巣ごもり需要」が影響したと思われますが、数土さんは新型コロナがアニメ産業にどういった影響を与えたと考えていますか?

数土 おそらくやっぱり「キツかった」というのが実情だったと思うんですよ。制作の遅れもあったでしょうし、TV番組の編成組み換えについても、たぶん現場の人はすごく大変だったと思います。

まつもと アフレコ収録もしばらく試行錯誤の状態が続きましたよね。

数土 収録時間の増加で予算も上がったはずです。そこをどうやって対処したかという現実の話は、我々ではわかりかねます。しかしそれを乗り切ったのは確かですよね。アニメ業界って、結構ツラいハードルがあっても必ず乗り越えていくところが、僕はスゴいと思っているんです。

 音楽がライブを開催できなくなったり、実写映画がほぼ撮影できなくなったことを考えると、エンタメでは比較的まだ踏み留まれたジャンルかなと。とはいえ、納品の遅れなどもありましたから、キャッシュフローの面からも2020年の制作売り上げ自体は下がると思います。

まつもと 制作については、在宅作業を指示した会社もあったようです。もともと非常に集約的な労働環境だったアニメ制作の現場において、各工程でリカバリーを図ろうという努力があったことが垣間見られました。しかし、やはり制作の遅れ、つまり納品の遅れは当然入金の遅れにつながるので、そこに打撃があるということですよね。

数土 たとえば制作会社だと、たとえ制作は止まらなくても納品が3ヵ月先にいくと、お金も3ヵ月間入りません。経営者ならわかると思うのですが、お金が3ヵ月止まるって大変なことです。小さい企業は倒れかねません。皆さん、厳しい状況で制作していると思います。

まつもと 前述の生配信では、税務会計に詳しい方に出演いただき、持続化給付金など補助金の解説をしてもらいました。ただ、そこでわかったことは、コロナ禍の状況で3ヵ月間の納品の遅れを補うには、国あるいは地方自治体が用意した補助金では全然足りない、ということでした。そうなると、あとはいわゆる自助努力になってしまうのでしょうか?

数土 社内留保金をやりくりするとか、グループ会社であれば親会社やほかのグループ会社がファイナンスをして一時的にお金を貸すといったことになってくるとは思うのですが……。

まつもと そうすると、これはコロナ禍以前からの傾向ですが、アニメ制作会社がグループ化していく、大きい会社の傘下に入っていくという動きがますます活発になるかもしれませんね。

数土 ええ。……というか、すでに増えています。このコロナ禍で何が起こるかわからないからこそ、大きなお金を持った人が後ろにいるとありがたいというのはあるのでないかなと予想しています。

まつもと 「備え」ですよね。新型コロナの影響がどれくらい続くのか、まだ見通せない状況ですから、経営者としてはキャッシュやスポンサーを今後も確保できるか模索が続いているのだと思います。

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