仮想通貨(暗号資産)の交換業者コインチェックから2018年1月、日本円にして約580億円相当の仮想通貨NEMが盗み出された事件に絡み、大きな動きがあった。
2021年1月22日早朝からNHKが、この事件に関与したとして数十人が警視庁に検挙されたと報じている。
この数十人は、コインチェックから盗み出されたNEMの交換に応じたとされる、組織犯罪処罰法違反の疑いがあるという。
警視庁がこの事件の捜査を継続していることは、これまでも各メディアで報じられていたが、目立った動きは出ていなかった。
今回の警視庁の動きは、3年がかりの捜査の大きな進展だ。しかし、現時点では、あくまでも盗まれた仮想通貨を別の仮想通貨と交換し、出どころをわかりづらくするマネーロンダリング(資金洗浄)に関わった人たちが犯罪に問われたのにとどまる。
いまのところ、大量のNEMを盗み出した実行犯は特定されていない。
●犯罪収益の収受
22日付のNHKの報道によれば、31人が仮想通貨の交換に関与したとして逮捕や書類送検されたという。容疑は「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(組織犯罪処罰法)」違反で、具体的には「犯罪収益等収受」と報じられている。
この長い名前の法律の第11条は、「情を知って、犯罪収益等を収受した者」と規定している。
つまり、コインチェックから盗み出されたNEMだと知って、盗み出されたNEMを受け取った人が、犯罪に問われたことになる。
事件後まもなく、ダークウェブ上に開設されたサイトで、盗み出されたと見られるNEMが、格安で売り出された。
ダークウェブは、Googleなどの検索エンジンでは検索結果として表示されず、特殊な方法でアクセスする。どこからアクセスしたのか特定が難しく、匿名性の高さゆえに、これまで多くの事件の舞台になってきた。
NEMをビットコインなどの主要な仮想通貨と交換すれば、市場より割安の価格でNEMが手に入る。
出どころのやばい仮想通貨と思いながら、条件のよい取引に応じた人が多数いたのだろう。この取引は成功した。
2018年3月ごろには、このサイトには、北朝鮮の金正恩総書記に似た人物が満面の笑みを浮かべて、札束を抱えている画像が掲載された。
いまのところ詳細は不明だが、今回、警視庁が立件の対象としたのは、こうした取引でNEMを買い取った人たちの一部だと考えられる。
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