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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第110回

トランプ氏のTwitter永久停止、議論呼ぶ

2021年01月18日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 米国のトランプ大統領の任期が間もなく終わる。

 この記事が掲載される1月18日の時点で、トランプ大統領の任期はあと2日だ。現地時間20日には民主党のジョー・バイデン氏が新しい米大統領に就任する。

 任期の終わりになっても米国の政治は混乱が続く。米下院は13日に、支持者らによる連邦議会の議事堂乱入を扇動したとして、トランプ大統領を弾劾訴追する決議をした。

 大統領でなくなった後も、米議会では弾劾をめぐる綱引きが続く見通しだ。

 連邦議会議事堂の占拠事件をきっかけに、トランプ氏のSNSアカウントが次々に停止された。

 占拠事件の前後にトランプ氏がTwitterに投稿した発言は、容認できる内容ではないが、そうだとしても、このニュースには複雑な思いにさせられる。

 一連の騒動を通じて、SNSを運営する大手IT企業が、人々の言論をコントロールする状況が強まったと考えられるからだ。

●直接的な表現の投稿はない

 Twitterではトランプ氏のアカウントは停止されているが、「Trump Twitter Archive」というサイトが、ツイートを保存・公開している。

 このサイトをあらためて見ると、支持者たちが議事堂に乱入した6日のトランプ氏の投稿は、いつも以上にテンションが高かった。

 基本的には大統領選の開票作業に不正があったとの主張を繰り返しているのだが、そのころ議事堂では、上下両院の議員たちが大統領選挙の結果を確定させる手続きを進めていた。

 たとえば6日午前9時15分には、トランプ氏は次のような内容の発言を投稿している。

 「州は、投票をやり直したいんだ。投票が不正だったことを発見したからだ。立法者たちは、決して認めない。立法者たちに投票をやり直させよう!強く!」

 6日のトランプ氏の投稿の多くは選挙の不正を訴える内容で、さすがに直接的に議事堂への乱入を呼びかける内容と受け取れる投稿はない。

 だが、さすがに議事堂への乱入がエスカレートする事態はまずいと考えたのか、6日午後2時38分以降、沈静化を図るツイートを複数投稿している。たとえば、午後3時13分の投稿は次のような内容だった。

 「議事堂のすべての人たちに、争いを避けるようお願いする。私たちが法と秩序の党であることを忘れずに。法と、青い偉大な男たちと女性たちに敬意を。ありがとう!」

 トランプ氏が触れた「青」は、対立する民主党のことだ。トランプ氏が所属する共和党は「赤」とされる。

●ツイッター社は最後の2本の投稿を問題視

 ツイッター社は8日、トランプ氏のアカウントの永久停止を発表した。同社の発表文によれば、この日に投稿された2本のツイートを問題視している。

 1本目は、8日午前9時46分。

 「私に投票してくれた7500万人の偉大な米国の愛国者たちは、長く将来にわたって大きな声を上げ続けるだろう。アメリカ・ファースト、アメリカを再び偉大に」とツイートしている。

 最後にトランプ氏が投稿したのは、8日午前10時44分。「1月20日の就任式には行かない」と投稿した。この投稿の後、トランプ氏のアカウントは永久に停止された。

 ツイッター社はトランプ氏の最近のツイートを分析し、次のように指摘する。

 「ツイートは、トランプ氏が出席しないことで、大統領就任式は”安全”なターゲットであると、暴力的な行動を考える可能性のある人たちを、あおる可能性がある」

●各社がツイッターに追随

 議事堂への乱入では、警官やトランプ大統領の支持者ら5人の生命が失われた。

 そのうえで、トランプ氏自身が就任式に出席しないと表明することは、選挙が不正に行なわれたと信じ、次の抗議行動を考えている人たちを、あおることになる可能性は否定できない。

 さらなる暴力が起きかねない状況の中で、ツイッター社がギリギリの判断を迫られ、アカウントの停止に至った事情は十分に理解できる。

 ツイッター社の対応に、各社が追随した。

 フェイスブックは、トランプ氏のFacebookページを無期限で停止。YouTubeも12日に新規の投稿を停止した。

 アマゾンは、トランプ氏の支持者らの間で利用が広がっていたSNS「Parler」へのAWSのサービス提供を停止した。

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