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“AWSの使い勝手”そのままに、5Gモバイルエッジコンピューティングを実現

5Gの超低遅延を生かしたDXを、KDDIで「AWS Wavelength」提供開始

2020年12月23日 07時00分更新

文● 五味明子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 KDDIとAWSジャパンは2020年12月16日、KDDIの5Gネットワーク上でAWSのクラウドサービスを低遅延で利用できるモバイルエッジサービス「AWS Wavelength」の提供開始を発表した。接続可能エリアは現時点では東京の5Gエリアのみだが、今後、大阪など大都市圏を中心に拡大していく予定。

 同日、報道陣向けにオンラインで会見を行ったKDDI 執行役員の丸田徹氏は、「Wavelengthは高速/大容量、他接続、低遅延という5Gがもつ3つの魅力のうち、低遅延をあますところなくお客様に体感してもらえるサービス。遅延変動をなくし、できるだけダイレクトにお客様のもとへ5Gを届けたいというKDDIとAWSの思いが合致して提供開始に至った。さまざまなお客様にWavelengthを活用してもらい、新たなDX(デジタルトランスフォーメーション)の創出に貢献したい」と語り、国内産業界における5G利用の活性化をめざす姿勢を示した。

従来の4Gベースのエッジコンピューティングと「AWS Wavelength」の違い。KDDIの5Gデータセンター内にWavelength Zoneを展開し、エッジポイントとすることで、低遅延でアプリケーションを実行できる

KDDI ソリューション事業本部 サービス企画開発本部 副本部長 執行役員の丸田徹氏、AWSジャパン 技術統括本部長 執行役員の岡嵜禎氏

超低遅延を実現する5Gモバイルエッジコンピューティング(MEC)サービス

 AWS Wavelengthは、2019年12月に米ラスベガスで行われたAWSの年次カンファレンス「AWS re:Invent 2019」において、同社CEOのアンディ・ジャシー(Andy Jassy)氏が発表したモバイルエッジコンピューティングサービスだ。VerizonやKDDIなど5Gネットワークを提供する大手通信事業者と提携し、AWSクラウドの利便性と5Gネットワークの低遅延性を組み合わせることで、リアルタイム性が重要なモダンアプリケーションのデプロイを拡大し、顧客のDXを加速することを謳っている。

 2020年12月時点でAWS Wavelengthを提供できる通信事業者はVerizon、KDDI、SKテレコム、Vodafoneの4社。AWSは今後、さらに協業する通信事業者やロケーションをグローバルで増やしていく意向を示しており、通信事業者間をまたいだサービス展開も視野に入れているという。

2019年12月にVerizonとの協業による米国での最初のローンチが発表されたAWS Wavelength。1年後の2020年12月にはKDDI(東京)とSKテレコム(韓国・大邸)での提供が開始に

 従来の4Gネットワークをベースにしたエッジコンピューティングの場合、モバイルネットワークを介してからコアネットワークに接続し、その後にインターネットを経由してAWSクラウドの各種サービスを利用する形態が一般的で、数十ミリ秒程度(またはそれ以上)のレイテンシが発生することが多い。

 これに対し、Wavelengthでは5Gネットワークを利用するうえ、通信事業者のデータセンター(5Gエッジポイント)内に「Amazon EC2」や「Amazon EBS」などを組み込んだAWSインフラ環境「Wavelength Zone」を展開する。4Gのエッジコンピューティングではあたりまえだった、インターネットや複数のホップを経由することで生じていたレイテンシを大幅に短縮できるため、エッジでの推論を必要とするヘルスケアやコネクテッドカー、スマートファクトリ、双方向なライブストリームやゲーム、AR/VRといったユースケースでの活用が期待される。

5Gキャリア(KDDIなど)のデータセンター内に「Wavelegth Zone」と呼ばれるクラウドインフラを用意し、アプリケーションをよりユーザやデバイスの近くで実行できるようにする。5G通信のメリットを生かした低遅延でのアプリケーション応答が可能になる

Wavelegth Zoneには、Amazon EC2、Amazon EKS、Amazon ECS、Amazon EBSなどのアプリケーション実行に欠かせないインフラサービスが展開される

 会見に同席したゲーム制作会社のTVT 最高技術責任者(CTO)の髙橋俊成氏は、ネットワークゲームを使ったAWS Wavelegthの実証実験結果を公表した。この実験では、4Gネットワーク比でレイテンシが40~50%に抑えられたと語り、「光固定回線に匹敵する低遅延性を得られている。これによりゲームデザインの自由度が拡大し、ゲームプレイ体験が大幅に向上する期待がもてる」と高く評価している。このほか、日置電機(電源品質測定の時刻同期における変動幅が30ミリ秒から2ミリ秒に短縮)やブレインズテクノロジー(製造現場の異常検知システムで43%の遅延時間改善)も、Wavelengthの国内アーリーアダプタとしてエンドースメントを寄せている。

Wavelengthの活用が期待されるユースケース。コネクテッドカーやライブストリーミングなど、リアルタイムな処理と応答、エクスペリエンスが重視される分野が中心

他のAWSサービスと同じ使い勝手で/連携して利用できるWavelength

 AWS Wavelengthはその名前の通り、AWSが提供するクラウドオファリングメニューである。したがってKDDIの5Gネットワーク上で提供されるサービスであっても、AWSクラウドのメリット――初期投資なしで利用できるインフラ、従量課金、使い慣れたAPIやインタフェースなどを、他のAWSサービスと同様に利用できる点が大きな特徴だ。また、Wavelength Zoneに含まれるインフラサービスに加え、アプリケーション管理やセキュリティ、スケーリングを提供するサービス(AWS ClourFormation、AWS IAM、AWS Auto Scalingなど)も利用でき、さらにエッジポイントに近いAWSリージョンと接続し、AWSの他のサービスを利用することも可能だ。

 AWSジャパン 執行役員 技術統括本部長の岡嵜禎氏は、「(AWS Wavelengthは)AWSクラウドのエクスペリエンスを、そのままグローバルキャリアのネットワークに持ち込むことができるサービス」だと説明しているが、一度開発したアプリケーションに変更を加えることなく、低遅延なキャリアネットワーク上で展開できるメリットは開発者にとって大きい。今後、Wavelengthの接続ロケーションが増え、通信事業者間の接続が実現すれば、リアルタイムアプリケーションのより大規模なデプロイが可能になると見られる。

AWS Wavelengthがもたらす価値。5Gモバイルネットワークによる超低遅延性を、従量課金やスケーリングなどを含め、既存のAWSクラウドサービスとおなじエクスペリエンスと利用できる

 AWSがWavelengthの開発に至った背景には、顧客からの“低遅延”に対する強いリクエストがあったことは言うまでもない。AI/IoTが企業の成長を支えるトリガとして機能するようになって以来、製造業やヘルスケアの現場では「ミリ秒以下」のレイテンシが求められるケースが増えており、顧客のより近くでサービスを提供するエッジコンピューティングの普及も低遅延への強い要求に紐づいている。

 そうした顧客の声に対するAWSからの解のひとつが5Gの低遅延性をクラウドに取り込んだWavelengthであり、その初期パートナーの1社に5Gキャリアの中でもAWSと共通の顧客が多く、都市部から地方まで幅広くモバイルネットワークを提供するKDDIが選ばれたことは自然な流れといえるだろう。

 なおKDDIでは、2021年1月から同社が展開する5G/IoTのビジネス拠点「KDDI Digital Gate」において、AWS Wavelengthを体験できるプログラムを提供する予定だ。

2021年1月から「KDDI Digital Gate」にて実際にAWS Wavelengthを体感することが可能に

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