アドビは12月16日、Adobe Blogにて、「政府の脱ハンコプロジェクトから学ぶ、 紙文書・ハンコのデジタル化のコツ」を公開した。
河野太郎行政改革担当大臣の会見を受けて、国を挙げて「脱ハンコ」の動きが加速している。同社によると、不要なハンコを廃止することで業務のオンライン化を加速し、生産性をより向上させることが大事だという。アドビが11月27日に開催したオンラインセミナー「ペーパーレス・脱ハンコ。デジタル変革とその未来。 ~事業継続を可能にするデジタルドキュメント活用~」では、生産性向上を実現する脱ハンコ化/ペーパーレス化のポイントを紹介した。
基調講演に登壇したのは、京都大学公共政策大学院教授であり、現在規制改革推進会議委員を務める岩下直之氏。岩下氏は、河野太郎行革担当大臣の下、まさに行政手続きの脱ハンコを推し進めるワーキンググループとして活動中。大学卒業後は日本銀行に勤務し、それこそ山のようなハンコに囲まれて仕事をしていたという。その後、日銀の金融研究所でデジタル署名や暗号技術の研究に従事していた。
岩下氏は、こうした経験・視点を基に「ハンコは認証技術として不完全です」と言い切り、理由として偽造しやすい点を挙げた。かつて銀行では、「副印鑑」というものがあり、通帳に印影を載せていたが、印影を基にハンコを偽造し、預金が引き出されるという盗難事件があとを絶たなかったという。ゆうちょ銀行でこの副印鑑が廃止されたのは2013年と、ごく最近だ。岩下氏は「ハンコはセキュリティー技術としては終わっている」と感じていたという。
それでもハンコが廃止できなかった理由は、組織や企業に「そう簡単には変えられない」という空気感があったことが問題だったという。今回は、河野大臣の鶴の一声で、脱ハンコが一気に進んだが、これは裏を返せば、行政機関も「大量の書類やハンコに忙殺されるのでなく、生産性を上げるために改革を行ないたい」と考えていたことにつながる。
岩下氏の講演を受けて登壇したアドビ インストラクターの大倉壽子氏は、文書業務効率化、ペーパーレスによる脱ハンコを支援・促進するツールとして、アドビのドキュメントソリューション「Adobe Document Cloud」を紹介した。
Adobe Document Cloud(DC)は、Acrobat DCによる各種PDF機能やAdobe Signによる電子サインソリューションを含み、文書業務のワークフローの確立、クラウドと連携した業務効率化を実現するというプラットフォーム。
大倉氏は、スキャナー不要でPDF化するiPhone/Android向け無償アプリ「Adobe Scan」紙のデジタル(PDF)化について説明。同アプリでは、書かれているテキストもOCR機能で認識することで、デジタル文書として業務に活用できる。
また、PDFを閲覧するソフト無料のAdobe Acrobatには、スタンプ機能が付属しており、文書のレビューや承認を回す時に、ハンコと同じように承認印がもらえるため、ハンコの役割を果たすという。
DCにはAdobe Signが搭載され、文書を送る側にAdobe Signの仕組みがあれば、署名欄を作ることができるので、署名する方にAdobe Signが導入されていなくても大丈夫とのこと。スマホやタブレットであれば自筆で電子署名を行なうことが可能で、本人性の担保と改ざん防止には、携帯電話やメールアドレスを用いた二段階認証、タイムスタンプ機能で対応する。
最初に講演した岩下氏は、大倉のこうしたデモや説明を受け、「民間企業同士であれば、お互いの合意で従来のやり取りが効率化されることも多いですし、Adobe Document Cloudはそれを誰もが実現できる素晴らしいツールだと思います」と述べ、続けて「いまはまさに変化する時代が到来しています。行政、民間含めてその変化を意識し、改革を進めていきましょう」と評してイベントを終えた。